2011年に代官山ヒルサイドテラスにて開催されたセミナー「まちづくりの哲学/デタラメな世界の希望の在処」で奇跡の共演を果たした、ノイズミュージックの世界的権威Merzbowと社会学者宮台真司のコラボレーションCDの制作費を、音楽レーベルmurmur records(マーマーレコード)が募集するプロジェクトです。

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(セミナー開催の際に作成されたポスター)

▼murmur records(マーマーレコード)とは?

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(パフォーマンスの様子。写真左が相田)

はじめまして。インディーズレーベルmurmur recordsを運営しております相田悠希と申します。
2006年に『電子音楽は音楽のエスペラントたり得るか』をコンセプトに音楽レーベルを立ち上げ、レーベルとしましては現在まで15組のアーティストによる18のCDタイトルをリリースし、またクラブやライブハウスでのイベントや、赤ちゃんの為のお昼寝演奏会などを企画運営して参りました。

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(タワーレコード渋谷店様での展開の様子)

<プロフィール>
Yuki Aida(相田悠希)
アンビエントとダンスミュージックを自在に行き来するその特異なスタイルで、国内外のアーティストや音楽評論家からも高い評価を得ている。
2010年には元guniw toolsのギタリストJakeと共作シングルを発表。
2011年には現在でもロングセールスを続ける自身のユニットflag.frogのEPにTaylor Deupree、moskitoo、Celer、i8uらが参加。大きな話題を集めた。
最新作は自身の参加する実験音楽トリオ「AOR / ONE」(Purre Goohn 2014)
「このまま行ってよし!(坂本龍一)」

詳しくはこちらです。(レーベルサイト)
http://murmurrec.com


▼プロジェクトスタートまでの経緯

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(murmur records DAIKANYAMA店内。 現在は閉店)

私が昨年一年間限定で代官山に音楽ショップを運営していました時に(現在は閉店)、始めはお客様として、次第に素晴らしい人生の先輩として「代官山ステキな街づくり協議会」の野口浩平さんと知り合う事ができました。
彼は実験音楽に対する直感力にとても優れ、また街づくりという観点から以前にヒルサイドテラスにてMerzbowと宮台真司のセミナーを実行した事があってその時の録音を保有しているので、murmur recordsからそれを発表し、通常は決して出会う事のないノイズミュージックと社会学の濃厚な混ざり合いの意義を問いたいとおっしゃって頂きました。
その後数回の打ち合わせにて秋田昌美氏(Merzbow)、宮台真司氏両名のご快諾を頂き、今回のプロジェクトがスタートしました。

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(ヒルサイドテラス)

<プロフィール>

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■MERZBOW
秋田昌美によるヴィーガン・ストレイト・エッジ・ノイズ・プロジェクト。80年代初頭のノイズ・インダストリアル・シーンに参加し海外のレーベルを中心にリリースを始める。90年代にはグラインドコアの影響を受けデスメタルのレーベルRelapseからアルバムをリリース。2000年代にはmegoの「punkなcomputer music」に共鳴、ラップトップによるライブ手法を採用した。2003年頃から「動物の権利」(アニマルライツ)の観点からヴィーガン(完全菜食主義)を実践している。「捕鯨反対」「イルカ漁反対」「毛皮反対」等をテーマに作品を制作している。 近年はアナログ機材を主体にした音作りを行っている。

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■宮台真司
社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。1959年3月3日仙台市生まれ。京都市で育つ。東京大学大学院博士課程修了。社会学博士。権力論、国家論、宗教論、性愛論、犯罪論、教育論、外交論、文化論などの分野で単著20冊、共著を含めると100冊の著書がある。最近の著作には『14歳からの社会学』『〈世界〉はそもそもデタラメである』 などがある。キーワードは、全体性、ソーシャルデザイン、アーキテクチャ、 根源的未規定性、など。

▼この作品の意義について

私の見解を述べます。
そもそも音楽という制度は、政治的なものであれ宗教的なものであれ、或いは祝祭などに見られる民間で伝承されたものであれ、共同体の絆を強める為に機能してきました。
フランス革命以降の個人主義、産業革命以後の録音技術という大きく二つの前提の成立からロマン主義を通過して現在まで、音楽は共同体の為ではなく個人の為の表現、即ち多少荒く言えば個人の快不快という情緒の為の創作と消費という側面が色濃くなっていきました。
作曲家はいつの時代も当然個人ですが、それぞれの時代において先代の功績を自分なりに咀嚼し次の手をアウトプットするが故に個別のアウトプットながらも全体性へと回帰し、耐用年数の永い作品を作る事が出来ました。これが娯楽的な音楽とアート的な音楽を区別することに繋がります。
故に、その意志が現在の耳には響かずに、作曲家の死後何十年も経ってから作品が評価されるという事態が起こり得るのです。

私は先程全体性という言葉を使いました。音楽における全体性とは何でしょうか?
古代ギリシャにおいて全ての学問は一つでした。私はいつもこの事を考えます。
それは、「我々はこの世界をいかに理解するか?」という全ての創作や構築の存立条件となる一般意志です。
故に問いは細分化し、様々な学問領域と専門家を生み、更にはそれぞれがそれぞれの領域において、他の領域とは関係がなく、独立した研究世界であるようにそれ自体が振る舞うようになっていきます。
福岡伸一さんの「世界は分けてもわからない」ではありませんが、例えば科学における分子生物学でのヒトゲノム計画がそのアナロジーとして有効です。
生物を形成する最小の地図であるDNAを全て発見し記述しようと研究者は個別に研究を行いました。
しかし全てのDNAの記述が完遂したところで、生物が一体何なのか?という問いには答えられないという事が分かりました。
答えられない事が分かった事は決して無駄な試みではありません。
それは生物という全体へ近づく為の通過点であったと見做すことが出来ます。

ピュタゴラスが天体の音楽と言ったように音楽は、音がある/ないといった現象学的な射程、音と言葉の対応関係やその構造といった言語学的な射程、美学的な射程と、様々な問いを含む現象領域です。
人間は生物の中でひときわ音を出すうるさい生き物です。
当然その射程範囲には、音楽が社会に対してどう振る舞うか、社会の側が音楽をどう咀嚼するかといった社会学的な視点も重要です。
その意味で音楽は学問的というよりも、学際的であって、それは学問として閉じることがありません。
なぜなら音楽はそれ自体が「人はこの世界をいかに理解するのか?」という問い自体の大きな写し鏡であり、宮台さんが言及されるノルベルト・ボルツの言葉をお借りすればそれはサードオーダー、即ち「なぜ人は「なぜ人は「なぜ人はこの世界を理解する事を意志するのか?」と問うのか?」と問うのか?」という無限に続く問いに対する総体的な独白へ帰結する、或いは、その運動そのものを引き受け照らし出すものだからです。
それが理解されないと音楽を理解した事にはなりません。この観点はこれからの音楽において取り分け重要です。
そこで私はレーベル運営者として、これまでのように作曲家の個別の作品を単にリリースするのではなく、領域の横断と対話によりお互いの領域へ新たな視点を導き入れる事を提示する事、またそれを記録物として残す事が、レーベルとしての次の仕事だと考えるようになりました。
そもそもレーベルという言葉はラベルやレッテルから来ています。つまり作品のセレクトとその質を保証する事がレーベルの仕事です。
ノイズと社会学というこの今まであり得なかった組み合わせは、これからの全ての領域に大きな穴を穿つでしょう。特にこれからの社会を形成する若い世代の方に是非興味を持って頂きたい作品だと願わずにはいられません。

▼資金がどう使われるのか?

現在、特に実験音楽ではCDの売り上げがとても少なく、リリースにおいて黒字を出しているレーベルは極稀です。
都合の良い話に聞こえるかもしれませんが、私はこれからのレーベルは単に作品をリリースしたいから発表するのではなく、その作品の質を保証した上で更に、それが社会に必要とされているから発表するという、製品としては至極当然な考え方にシフトしていくべきだと考えています。
そこで私はこのプロジェクトにご賛同頂ける方を募集させて頂こうと思うに至りました。
目標金額を300,000円に設定、手数料を差し引いた240,000円の内、120,000円をCDプレス費、90,000円をオリジナルTシャツ製作費、30,000円をフライヤーや店舗での広告運営費に使用させて頂く予定です。この金額は全て制作費に使用いたします。誰のギャランティに充当される事もございません。

▼リターンについて

ご支援頂いた方には金額に応じて以下のお礼を準備させて頂きます。

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(ジャケット完成イメージ。予定)

500円 CD内面special thanksの項にパトロン様のお名前を掲載します。
2,000円 【CAMPFIRE限定セット】 CD内面special thanksの項にパトロン様のお名前を掲載します。+今回のプロジェクトで制作するCDを1枚送付。
5,000円 【CAMPFIRE限定セット】 CD内面special thanksの項にパトロン様のお名前を掲載します。+秋田昌美と宮台真司直筆のサインを入れて今回のプロジェクトで制作するCDを1枚送付+パトロン様限定のオリジナルMerzbowTシャツ送付(サイズはS,M,Lよりお選びいただけます)

今回、作品パッケージ自体にパトロン様全員のお名前を掲載いたします。(お名前の表記、又掲載不可等のご意志は、プロジェクト成功後murmur recordsよりご連絡させて頂きますので忌憚なくご意見頂戴頂ければと思います)
販売予定価格は2,400円(税抜き)を予定しておりますので、ご支援頂いた方がお得に入手頂けます。
また、パトロン様だけのオリジナルTシャツ(非売品)はもちろん、お二人のサインが一つの盤に入っている事はあり得ないくらい貴重な事です。
是非ともご支援の程宜しくお願いいたします!


▼終わりに

最後までお読み頂きありがとうございます。
最後にこのプロジェクトに賭ける想いを共同企画者である代官山ステキな街づくり協議会の野口浩平の言葉で締めさせて頂きたいと思います。

『この音源は、代官山ステキな街づくり協議会主催のまちづくりセミナー「まちづくりの哲学」〜場所・幸福・関係性〜の第三回、「デタラメな世界の希望の在処」秋田昌美×宮台真司において演奏された記録です。

まちづくりとは、単に景観を整えて美しいまちをつくるということではなく、「場所」と私たちの関係を築き続ける営みのことです。しかしその関係は、客観的に計ることが出来ず、決して合理的でもありません。

それは身体的な感覚によって得られるものであり、私たちの世界観そのものによって計られています。そしてその価値観は、私たちが何を幸福と考えるかということと直結しているのです。

しかし宮台氏は、「幸福」は私たちに約束されておらず、世界は徹頭徹尾無意味と説きます。それでも私たちがこの世界から生きる意味を調達できるのは、無意味さゆえに希望が与えられるからというのです。

宮台氏の言葉を借りるならば、「非日常から垣間みる日常の奇跡を得ることだけが、私たちに明日もう一日生きてみようという「希望」を与えてくれます。そうであるなら“まちづくり”とは、この「希望」を「場所」に刻印しようとする営みといえるでしょう。

ただしその刻印は、体感によってのみ伝えることが可能な、説明にそぐわない概念です。私は宮台氏が説くその世界観を、いまここに立ち現らせる手段としてメルツバウ以上のものはないと考えました。

秋田氏の演奏は、音楽が持つ規則性を徹底的に排除した中から立ち現れる、この上ない美しさを体現出来る音世界です。その音世界を前にすると、私たちが何気なく送っている日常こそが奇跡であるということに、否応なく気づかされます。

その凶暴な音は、一聴すると不快かもしれません。しかし、その不快な音の塊の中からある像が立ち現れるとき、私たちはその不快と感じていた音塊こそが世界であり、たちどころに消えていくその像こそが、かけがえのない日常であると体感することが出来るのです。

その奇跡を体感したとき、それまで不快と感じられたノイズは、愛おしい世界を象徴するものとしてこの上なく美しく感じられるでしょう。

2011年10月23日、秋田氏の演奏と宮台氏の言葉が出会ったことによって生じた奇跡を、その音源と宮台氏によるライナーノーツとによってここに再現します。

代官山ステキな街づくり協議会 野口浩平』

皆様のご支援を心よりお待ちしております。

  • 2015/08/12 12:39

    こちらの活動報告は支援者限定の公開です。

  • 2015/04/13 17:50

    こちらの活動報告は支援者限定の公開です。

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    2014/10/25 21:32

    先日、都内マスタリングスタジオ"Sad Lab."において、今回の音源のマスタリングが完了したので1分間程の抜粋をアップします。 Merzbowのノイズは生き物のように時間経過によって美味しい周波数帯が変化していくので、かなり緻密にオートメーションを書きました。 その結果、ライブ録音という...

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