2014/09/22 17:02
こんにちは! 広報担当の三上満里奈です。
今日の活動報告は、

伊藤亘希:アニメが大好きなクラシックギタリスト。
田口和行:アニメと声優を愛する現代音楽作曲家。
萩原佳明:JR山手線の時刻表を元にプログラムで作曲。アニメも嗜むディレクター。

の3人にプロジェクトにかける想いや、アニソンについてなど、
思う存分語っていただいた模様をお届けします!

■俺クラ制作委員会のできるまで

萩原:さて、そんなわけでSkypeに集まって何か話そうって僕らですが、伊藤さん、プロジェクト開始からここまでの感想とかどう?
伊藤:そうですね。特にギター関係からは予想以上に好意的な反応をいただけていて、嬉しく思ってます。と同時に、音楽関係者からも納得のいくものを作らなきゃなっていう意思を新たにしました。それが支援につながるためにもっと知恵を絞らなければですが……。
萩原:もともとは、僕が声をかけたんですよね、ふたりに。伊藤さんがニコ動にアニソンカバー上げてるの見て、「これは面白い、CDにして残さなきゃ」って思って。
伊藤:そうですね! 中華料理屋での初対面でしたね。その時にニコ動の話になったっていう(笑)。
萩原:そう。もっと話を戻すと、田口さんが山田岳さんというギタリストさんに曲を書いたコンサートがあって、それを僕が観に行って、珍しく打ち上げまで参加したんですよね。そこからこの話までの経緯は田口さんのブログにある感じで。伊藤さんどう思った? 最初に僕が声かけたとき。
伊藤:正直その時は、CD化するほどのアレンジを作っている意識は無かったです。
萩原:あの時点で何曲くらいアレンジしてたんだっけ?
伊藤:4曲くらいですかね~。『AIR』の『夏影』など、動画にしてないやつもあります。
萩原:そうか、そうすると、今回ってすでに決まってる曲が7曲、リクエスト枠が3曲全部支援いただいてる状態なので、全10曲あるから大変だよね(笑)。少し、田口さんにも手伝ってもらうわけだけど。
伊藤:大変です! ただ、昔よりは引き出しも増えたというか、頭の中での処理速度も上がっている感じはします。頑張ります。田口さんの編曲、とても楽しみにしております!
萩原:で、その田口さんと僕の出会いの話もすると(笑)、田口さんが賞を取った日本現代音楽協会作曲新人賞のコンサート(2009年)を僕がたまたま観に行ってて、すげえ面白かったのでTwitterで探してフォローして、コンサート何度か行くうちに仲良くなったという、ちょう現代的な出会い方。
田口:そうですね。その中のひとつが、2011年9月、山田岳さんのGGサロンコンサート(現代ギター社主催)だった。そこに伊藤さんもお客さんとしていらしていた。それがここまで大きな話に発展しましたね。
萩原:僕が本格的なクラシックギターのコンサートを観たのって、たぶんあれが2度目かな。最初に観たものはわりと、いわゆるクラシカルなコンサートで、「『禁じられた遊び』をあんなにうまく弾けたらそれは楽しかろう」みたいな感想だったんだけど、GGサロンコンサートのはもっと現代音楽って感じでしたね。
田口:山田岳さんにしては珍しくというか、古典の作品も演奏されていましたが、日本初演となる現代作品も取り上げられていて、その中で拙作の初演もあった、と。
萩原:で、伊藤さんは何で来てたんだっけ? 山田さんの弟子的な何かなんだっけ?(いまだによくわかってない)
伊藤:いえ、直接のかかわりはありません、ただ、山田さんは特に現代音楽分野で顕著な活躍をされている方で、すばらしいパフォーマンスをされるので、追っかけてるんです(笑)。
萩原:そうだったんだ。たしかに山田さんていろいろ現代音楽やってて面白いプレイヤーだよね。
田口:あのとき山田さんが演奏された私の作品『楓』は、彼のために作った初めての作品でした。私自身がギターの弾き語りでシンガーソングライターを目指していたこともあって、ギター曲を作りたい思いは以前からありましたが、独学ということもあり、なかなか演奏家との出逢いが無かったんです。それがTwitterで彼と出逢って、3年間で8曲も彼のために書いた。エレキも2曲あります。ちょっと不思議なご縁でした。
萩原:ギターの弾き語りでシンガーソングライター目指してたんだ! だから田口さんの曲って、いつもロックな感じがするのかなあ。現代音楽なのに、すごいロックって思うんだよね、コンサート行くたび。
田口:ありがとうございます! それはとっても嬉しい感想ですね。多重録音や打ち込みで曲を作りまくって、毎週土曜にお店でアコースティックライブをやっていました。プログレも好きですし。寧ろ、クラシックは縁遠くて、自分がこちらの世界で活動するとは思っていませんでした。今では、素敵なギタリストの友人も増えましたし、自分で弾くことは無くなりましたけど。でも、とっても面白いです。

■そもそも何でアニソンが好きなんですか?

萩原:と、ここで根本的な質問しちゃうんですけど、ふたりとも、そもそも何でアニソンが好きなんですか?
伊藤:なんでと言われると難しい……。私はヒャダインさんに衝撃を受けたっていうのはありますね。
田口:私は、アニメやマンガ、ゲームには殆ど触れない10代でした。それこそ、音楽だけというか。ただ、高校1年の時にラジオで『サクラ大戦』の主題歌が流れて来て、今まで聴いたことの無かったコードのイントロに驚いたんですね。歌謡曲っぽいところも好きで。そして、調べて行くと、世の中には、スコアを書いて他人に弾いてもらう「作曲家」という存在がいると。音楽の授業で習ったはずなのに、そこで初めて意識しました。
萩原:じゃあ、田口さんの場合は、職業作曲家って存在が、アニソンの面白さって感じなんですかね。
田口:作品との相性はあれ、ジャンルの制限が無い、何でも実現可能な音楽だと思いました。今でも、そこに魅了されています。
萩原:伊藤さんのヒャダインにビックリってのは、どういう風にビックリしたの?
伊藤:なんて自由なんだろう、こんなことしてもいいんだ! っていう、感覚的なものですね。彼のアイドルソングとかもいろいろ聴きました。
萩原:ああ、やっぱり伊藤さんも、アニソンの「ジャンルの制限がない」感じが面白いんだね。こないだ、僕が司会をやらせてもらってるMUSIC SHAREって番組に、中塚武さんていうアイマスにも楽曲提供されてるアーティストさんに出てもらったんだけど、中塚さんもアイマス関連のインタビューで「最近のそのジャンルの曲ってすごいクオリティじゃないですか。アニメを見る人たちの耳が肥えてるんじゃないかと思ったんです」って発言されてましたね。
田口:私もアイマスが好きで、ライブにも行きますが、新曲をチェックする、ライブに足を運ぶ、コールのために曲を聴き込むという意味でも、アニソンを好きな人達の聴き込みは凄いと思います。映像とのリンクも大事だし、そういう「聴き方」が出来る人が多いですよね。
伊藤:いい意味でカオスですよね! ひと口にアニソンとはいっても、本当にテイストはいろいろですものね。昭和~平成のJ-POPの流れも全部取り込んでますし!
田口:昔の歌謡曲やジャズソングもそうですけど、ここまでごちゃ混ぜにして、ポップスとして成立出来る音楽は、意外と少ないですよね。
萩原:たしかに、最終的にポップスとして成立してるの面白いですよね。
田口:よく言われる話ですが、交響曲やオペラのような規模の作品も含めたクラシックの流れは、現代音楽よりもポップスに受け継がれたと解釈して良いと思います。現代音楽をやる身としては、反論したい気持ちもありますが(笑)。でも、アニソンの世界観の大きさは、確実にそういう歴史の発展形だと解釈しています。
伊藤:アニソンからは西洋音楽のベースを感じずにいられないです。編曲しててそう思います。それで『ゆるゆり』OPをジュリアーニ風(19世紀初頭にウィーンで活躍したギタリスト)にしたりして遊んだりしていたわけです(笑)。

■アニソンをクラシックギターで演奏するということ

萩原:そんなアニソンを、僕らはクラシックギターでやっちゃおうと思ってるわけですけど、「クラシックギターでやる」って端的に言うとどういうことですかね。たとえば、クラシックギターの語法ってやっぱりあるんですか? ツーファイブだとジャズっぽいとか、テンションコード入ると都会っぽい(?)とか。
伊藤:私は基本的になるべく原曲に忠実に編曲したいので、その曲の持っている要素をひたすら抽出していく作業になります。それを「クラシックギターの曲」として再構築する感じです。その際にギターでの演奏効果を考えますね。特にギターの一番の魅力は、音色の繊細さだと思っているので、それを生かした編曲は心がけてます。
田口:伊藤さんの演奏を聴いていて思うのは、右手というか弾く側の手のこと。アコギのフィンガーピッキング系のインストには無いような音型が多いと感じます。その時代を感じさせるようなフレーズや伴奏の形を混ぜるのも上手いですよね。音色の繊細さについては、アコギとは弦の材質や倍音も違いますし、テンションコードがよく馴染むと感じます。ダイナミクスの差も付け易いですし。
伊藤:右手の音型の話、私自身の手癖も出てますね……。でも、アコギでなくクラシックギターらしい響きを意識して、自然とそうなってるのかもしれない。
萩原:ギターは右手が大事だってロバート・フリップ(キング・クリムゾンのギタリスト)も言ってた気がする。
田口:フレーズや音色が決まりますからね。
萩原:なるほど。
田口:今、このCDのためのアレンジに取り掛かっていますけど、伊藤さんがやって来た作業がどれだけ大変で、知識や技術、経験をフル活用されていたのか、痛感しております。
伊藤:自分では、もっと知識や技術を整理して自由自在に使えたらなぁって、いつも悩んでます。むしろ作曲家の方はもっとすごい作業をしてるんだろうなぁって思いますよ。
田口:その楽器らしさを活かす意味では、やはり奏者が作編曲出来るようになるのが良いと思います。やっぱりかなわないですよ。私は、クラシックギターの魅力を違った観点から引き出したい、と思いながら編曲しています。
萩原:あと、同時に6音までしか出ないってのもギターの語法というか、制約というか、ありますよね。
田口:私はピアノではなくギター出身ですから、6音あれば十分です(笑)。音大出身者は、ギター曲に本当に苦戦するそうですが。
萩原:(笑)。さて、そんな、ある意味制約も面白いギターですが、そんなギター、特にクラシックギターであえてアニソンをやる意味って、何でしょうね?
田口:音楽の語法や世界を広げる上で、既存の音楽を用いて新たに作曲、編曲する作業というのは、ずっと昔から行われていました。端折った説明になりますが、ここ100年くらいだと、バルトークやストラヴィンスキーが民謡を用いて、オーケストレーションを含めた語法の革命を起こしました。ただ、著作権の問題なども関係しているでしょうが、最近の作品を使った試みというのは、近年減ってしまいました。それぞれのジャンルも、接点を殆ど持てていません。こういうことも意識して、武満徹が海外の民謡やビートルズをギター独奏用にアレンジした歴史を踏まえつつ、取り組みたいと思ったのが、この『俺クラ』です。現代の日本から発信するなら、アニソンは避けて通れないでしょう! 現代音楽の作曲家だからこそ、取り組むべきテーマだと自負しております。
伊藤:たとえば、200年前にも、当時流行っていたシューベルトの歌曲をギターにアレンジして新たなレパートリーとした人がいたわけです。その当時はとても新鮮に映ったと思うんですよね。それを現代でやるなら、アニソンではないかと。それこそ恒久的なレパートリーとなるくらいを目指して作りたいですよね。

■最後にお願いが

萩原:まあでも、レパートリーになるためにも、まずはCD作らなきゃだよね(笑)。
伊藤:そうですね、今までバラバラに出していたものをひとつの作品集としてまとめるという意味で、やはりCD化の意義は大きいと思います。
萩原:CD作るためには、正直ちょっとまだ苦戦してるけど、頑張って支援金集めないとだね。これを読んでるみなさん、よろしくお願いします! 友達に声をかけたりもしてみてください! 読んでないみなさんはいまから読んでくださいね!(なんだそれ)
伊藤:そんなわけで、よろしくお願いします!
田口:よろしくお願いいたします!