2019/04/20 08:45

本の届け方には、いろいろあっていいと思う。いろいろあった方が、愉しいと思う。僕は街に店を構えて本を売っているけれど、車に本を詰め込んで本と出会う機会そのものを届けるというやり方は、いつ聞いてもわくわくする。もちろん、公共移動図書館の例を挙げるまでもなく、この発想そのものは決してあたらしいものではない。けれど、それを個人が実践するとなると、必ずしも平易なアクションとも言えない。「これを実現できたら、きっとあの風景が待っている。その景色をどうしても見たい!」という強い意志が不可欠だろう。そして、真奈実さんにはその意志がある。見たい景色の青写真が、くっきりと心に描けている。

柔和な笑顔が印象的な、おっとり系の女の子かと思いきや、実はものすごくロジカルで、ハッキリすぱっと自分の考えを言葉にできる。揺らがない信念をその胸の内に燃やしているから、大胆不敵な行動にときどき僕も肝を抜かれる。そんな真奈実さんが「BOOK CAR」を始める、と言う。車で本を届けた先に、広がる景色が見えたに違いない。

絵本に特化したインディーの古本屋は、無限の可能性を秘めている。そもそも絵本が、そういうものだ。子どもたちと、かつて子どもだった大人たち。絵本は、すべての人に開かれている。誰にだって、人生や価値観に影響を与えた大切な絵本が、きっとある。そして個人の古本屋は、自分の努力次第で、あらゆる本と出会い、届けることができる存在。本屋を始めて気づいたけれど、インディーの古絵本屋は、きっと最強だと思う。

真奈実さんが「BOOK CAR」を手に入れたとき、切り拓いていく地平の先を、僕も一緒に眺めてみたい。まずはその車に本を詰めて、この夏の「ALPS BOOK CAMP」に乗り込んでくれることを楽しみにしています。ラストスパートだね。ファイト!!

菊地徹

書店兼喫茶 栞日店主
ブックフェス「ALPS BOOK CAMP」主催