2017/07/02 21:52

2017年1月〜4月クラウドファンディングで支援募集をお願いした本プロジェクト。
みなさんから支援をいただき、目標金額を130%達成、2017年6月にNYにてレコーディングが執り行われました。

 

支援者数81人※と作るJazzアルバムのレコーディングについてレポートすると共に、実際にレコーディングに立ち会って見えてきた「NYでレコーディングをする”もうひとつ"の理由」。

 

筆者の所感を含みますが、現地で感じた貴重な体験をお伝えします。

※クラウドファンディングCAMPFIRE内で可視化された人数です。
 連名や別途ご支援いただいた方もいらっしゃることは把握しておりますので、
 気を悪くしないでくださいね。

 

レコーディングスケジュール概要

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・日程:2017/6/6(火)〜7(水)
・時間:10:00〜20:00
・場所:The Bunker Studio Brooklyn
・スケジュール:
 -6/6(火)ゲストミュージシャンとの音源収録(7曲)
 -6/7(水)トリオのみ音源収録(6曲)
・メンバー
 -ピアノトリオ:河野祐亮(pf)、座小田諒一(b)、木下晋之介(dr)
 -ゲストミュージシャン:Warren Wolf(vib),Walter Smith Ⅲ(sax)
 -エンジニア:Katsuhiko Naito
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レコーディングは2日間に渡り、時間いっぱいかけて収録されました。(お昼もデリバリーだったので文字通り缶詰状態)

The Bunker Studioは知らないと通り過ぎてしまうような、Brooklynの街並みにポツンとあるドアから入ります。


ーなんでもない街並みになんでもないドア。この奥にBunker Studioがあります。

 

The Bunker Studioはニューヨーク・マンハッタン西53丁目にある、数々の世界的名録音を送り出してきたAVATAR STUDIOS(アバタースタジオ)を思わせる、機能性&デザイン性の高いスタジオです。

最近ではトップジャズミュージシャンがここBunkerで収録しており、Gerald Clayton(pf)の新作アルバム「Tributary Tales(2017年)」、Mark Guliana(dr)の教則本「Exploring Your Creativity on the Drumset(2016年)」もThe Bunker Studioでレコーディングされています。

 


ー(左)Gerald Clayton「Tributary Tales(2017年)」、(右)Mark Guliana(dr)「Exploring Your Creativity on the Drumset(2016年)」

 

一番大きい1室にピアノ、サックス、ビブラフォン。ベースとドラムはそれぞれ別室にて演奏でした。
アイコンタクトは取れるようにガラス張りで、ヘッドフォンで演奏中のお互いの音を聴きます。

 

初日はゲストミュージシャンの2名との収録。
まずWarren Wolfさんとの楽曲を2曲、
その後Walter Smith Ⅲさんも合流して5名で3曲、
そしてWalterさんと2曲録りました。
(どの曲が収録されたかはアルバムをお楽しみに!)

 

ゲストミュージシャンの2人はもともとBerklee学生時代からの旧知の仲。
久しぶりの共演だったようで収録も雑談もすごく楽しそうでした。


ーとっても仲良さげ

 

エンジニアのKatsuhiko Naitoさん(以下カツさん)はなんと1年先までお仕事のアポイントが取れないのNYでもとても著名な方。20年以上アメリカ在住で数々の有名な作品をレコーディングしたキャリアがあります。

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【内藤克彦さんが手がけた作品 ※一部抜粋】
・John Scofield
EnRoute (Verve, 2004) Recording and Mastering — Grammy nominated as 2005 Best Instrumental Soloist

・Ahmad Jamal
Nature: The Essence, Pt.3 (Dreyfus Records, 1998) Mixing

・Bobby Hutcherson
Skyline (Verve, 1999) Mastering
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以上のような、メンバー/設備共に充実した環境でレコーディングが実施されました。

 

集中続く緊張感のある収録


ー手元の機材で各パートのボリュームを整える河野

 


ーベースとドラム間もアイコンタクトが取れるようにガラスが貼られています


ードラム用の空間も十分な広さと様々な機材が備えられていました。


ー繊細かつ力強い音色のWarrenさん


ーとても丁寧に音を確認するWalterさん


ーNYのエンジニア、カツさん。アイデアの提案も数々いただきました。


ー視聴後のリラックス風景


ーつかの間の休憩。


ー休み時間にゲームボーイをするWalterさん

 

 

NYでレコーディングする”もうひとつ"の理由

 クラウドファンディングを行うにあたり、
「なぜNYでレコーディングをするのか」という問いは、支援をお願いする運営側でも多く議論された内容でもあります。

 

その上でクラウドファンディングの本文にもあるように、

・2015年札幌シティジャズコンテストで優勝
・2016年オーストリアウィーンジャズフェスティバル出演
・2016年ヨーロッパを代表する老舗ジャズクラブ ロニースコッツ出演 を経て、
この勢いままに、Warren Wolf(のちにWalter Smith Ⅲも参加)というNYの一流ミュージシャンと肩を並べられるようになった”今”、チャレンジすることの重要さをお伝えしてきました。
それに加えて今回、"もうひとつ”の理由が見えたように感じます。


それは河野祐亮がレコーディング前の練習中にこぼした一言から見えてきました。


ーレコーディング前に母校「New School」で練習に励む河野

 

「NYが乾燥しているせいか、ピアノの音が違うんだよね。日本じゃこんな音出ない。
 なんというか・・・マイクや機器で増幅していない楽器そのモノの音がするんだ。」


「環境の重要性」ーーこれを実感することが度々ありました。
NYにいる間、まわれる範囲で主要なJazzクラブへライブを聴きに行きました。
音響だけ取ったら日本の方がよっぽどいいものを使っているはずなのに、何故、こんなに心に響くのか。

ミュージシャンのスキルが高いことはもちろんのこと、
日本ではなかなかありえない組み合わせのプロミュージシャンが毎晩のようにライブをしていて、常に感性が刺激されます。
そして、同じく毎晩多くのリスナーを集めるJazzクラブ、バー。
飲みに行くのと同じように、Jazzを聴きにいくリスナーの耳の良さと理解が深い。
Village Vanguardで見たマークターナーのライブは、正直筆者が「わからない!」と音を上げる難解な演奏だったにも関わらず、アドリブで見せる高い技術に観客は歓声を上げ、盛り上がる。
Smallsで見た、とあるバンドは、「なんだか眠い・・・」と感じてしまったようにあまりいいライブではなかったようで、観客は問答無用で席を立ち、音楽を聴かずにお酒でガヤガヤ騒ぎ出していました。

さらに歴史的なことや人種、教育、様々な要素が絡んで、
複合的な「環境」がよりよい音楽を生むということを実感してきました。

 

今回担当してくれたエンジニアのカツさんからは、
「この全て含んだ音を収めるのが俺の仕事」とこちらを見ずにサラッと言い放った姿がすごくかっこよくて心に残っています。

 

そんなNYレコーディングを真空パックした今回のアルバム。
ライブでももしかしたらなかなか聴けない音源になる予感です。
リリースまでもう少し。お楽しみにお待ち下さい。

 

Report by tomoko sekiguchi