2019/11/06 16:31
『リビングの女王』制作日記 S♯1「桐生で映画を撮りたい」


はじめまして。映画『リビングの女王』監督の耳井啓明です。

初めてのクラウドファンディングで、色々と試行錯誤していますが、

ご支援・ご協力いただきまして、大変ありがとうございます。

本当に感謝しかありません。

これからツラツラと、制作過程や裏話を交えつつ、制作日記を書いていこうと思います。


しかし現在、台風15号が去り台風一過で夏が舞い戻り、

小島珈琲でウィンナーコーヒーを優雅に飲んでいる2019年9月時点で、

撮影は無事に終了していて、全くのリアルタイムではないのが恐縮ですが、

スタッフキャストで合宿しながら撮影をした2か月前の夏を思い出しながら、

いざ書き進めていこうと気合を入れて思い出したのが、

もはや死語のmixiで昔、狂ったように毎日毎日他愛もない日記を書いていたこと。

今思えば誰に向けて、どんな情熱をもって書いていたのかサッパリ思い出せないけど、

書くこと自体は苦しいし面倒くさいけど楽しくて、

映画制作だってそれはそれは大変だけれど、終わってみればやっぱり楽しくて、

あの頃mixiと真剣に向き合ってぶつけて来た情熱を思い出しつつ2年前へ。


2017年5月、初めて群馬県の桐生市に行った。

映画を撮っていた。

とはいえ自分は助監督で、日々倒れそうなほど忙しく、

明日のスケジュールをコピーしに深夜のコンビニへ行ったものの、

コピーすることなくパスタだけを買って帰って来てしまうほどの忙しさだった。

慣れない土地で動き回っていた。現場で初めてお風呂に入れなかった。

そんな時、助けてくれたのが桐生の人々だった。

初めて出会った第一町人であるタクシーの運ちゃん、

迷った時に道を教えてくれてリンゴまでくれたおばちゃん、

たくさんのエキストラの方、

一緒になって映画を作ってくれた「きりゅう映画祭」の方々、

皆、親戚かと思うほど、優しかった。

大変な映画制作の中で思った。

「桐生は第2の故郷だ」と。

忙しない日々の中で優しくされたら、心も動く。

そして当然ながら、いつか自分も桐生で映画を撮りたいと思った。


そして2年後の2019年1月、再び桐生の町に降り立った。

映画『リビングの女王』の企画が、「きりゅう映画祭」のコンペで選ばれたのだ。

コンペで提出したのは企画書のみ。

この時のタイトルは「ミスとミス(仮)』、略してミスミスだった。

その段階で、脚本はまだ1ページも出来ていなかった。

映画は脚本が全てだと思う。脚本は映画の設計図。脚本がなければ何も始まらない。

つまりまだ何も始まってない。

何も始まってないけど、企画が選ばれたことで、映画制作は始まった。


2月。桐生といえばこれ、という代物は思いつかないけど、

群馬県といえば草津温泉。という安易な発想で草津温泉に向かった。

温泉に入りまくって疲れた体を癒し、

これから始まる長くて苦しいノンストップの映画制作に備える為ではなく、

脚本合宿をする為に。1人で。

平日の閑散とした温泉街、

そりゃ脚本がはかどって仕方ないといった期待は裏切られた。

まさかの春節と大被りしてしまい、草津温泉は中国人観光客でごった返していた。

周りを見渡せば、誰もが楽しそうだ。1人だけ場違い感が半端ない。

自分も、楽しみたい。歌いながら湯もみがしたい。

草津温泉はベストオブ観光地、湯畑最高、さすが「にっぽんの温泉100選」の1位、

しかも後ろの追随を許すことなく16年連続の1位。

ここは、1人で来ても誰と来ても楽しめる夢の場所だと思う。

来てしまったからには、スルー出来ないお湯がある。本当にそこら中にある。

無料で入れるお湯もある。見て回りたいとこがある。食べておきたい、舞茸がある。

食べて⇒温泉⇒温泉⇒食べて⇒温泉の無限ループで2泊3日を大満喫して、

分かったことはただ1つ、草津温泉が最高だということ。


そして結局、

東京へ帰る「特急草津」の車内で、必死に脚本を書くはめになってしまった。



※制作日記S♯2からは、パトロン様限定となります。