2020/02/03 18:00

冬の土曜日、今日は公開授業の日です。図工の教室に小学4年生が入ってきて、グループごとに座りました。わっかのメンバーが最初に挨拶します。「今日はおしゃべりをたくさんする授業です。この時間は正しい答え、まちがっている答えはありません。各グループにいるわっかさんと一緒に、思ったことをどんどん話しましょう」


【共通点探し】
これから何が始まるんだろう?わくわくどきどきの子どもたちは、わっかさんが、ハガキ大のアートカードをたくさん取り出し、裏返しにして机の上でトランプカードのように混ぜ合わせるのを見つめています。待ちきれなくて、カードをひっくり返して裏の絵を見る子もいます。さあ、共通点探しゲームの始まりです。

子どもたちが順番に、裏返ししたカードから3枚をとって、そのうち2枚に共通する点を話し合い、共通点1つについてグループの同意をとるというゲームです。「共通することって、何があるかな?」というわっかさんの問いかけに、みな絵に見入っています。「この二つは絵だけど、こっちはモノだからなー」

よく動き回る子が口火を切ります。「こことここ、色が同じ!」すると、別の子が「あ、それなら、この色とこの色も同じだよ」「この鉄のモノのふちの形と、この絵の上のほうの藁みたいのが積んであるの、形が似てる」どんどんいろんな共通点が出てきます。最後の番になった、おとなしい子が、小さな声でいいました「この女の人の帯の小さい鳥の模様と、このガラスの入れ物についているここは、どっちも鳥だから同じ」細かいところによく気づいたね!と、驚きです。

このゲームから、「見る」ことの奥深さ、つまり私たちは日ごろ、見ているつもりでも、思い込みで判断しているのではないかと気づかされます。ぱっとみて、違うと片付けてしまわずに、よく観察して通じる点を見つけられることは、多様性が高まる今の社会で大切な力ですね。


【物語作り】
正誤がなく、自分の意見が大事に受け入れられることがわかってくると、子どもたちの声にも張りがでてきたように思えます。さあ、次は物語づくりです。

裏返ししたカードから2枚を選び、それをひっくり返して見た上で、今度は表が見えるカード1枚を選び、物語を作るというゲームです。3枚目を選ぶときの集中度はすごいものです。

ある子は、とった2枚のカードが、大名行列の日本画と、松の木の屏風絵でした。「なにこれ?」とちょっと考えて、迷って選んだ3枚目のカードは、金屏風に川が描かれた絵でした。できた物語は「ある人が、たくさん並んでいる列から逸れて、道をあるいて川を渡っていったら、大きな樹がありました」

ある子は、男性を描いた油彩、桜の花の日本画があたり、3枚目に縄文式土器の写真を選びました。物語は、「おじさんが桜の花を見に行ったら、妖怪に会ってしまいました。」わっかさんが「どこからそう思ったの?」と聞くと、「きのう妖怪のゲームをして、これが妖怪の顔に見えたから」とのこと。確かに縄文式土器の写真を横に見ると妖怪の頭に見えてきます。その子は屈託のない笑顔で、「ふだんできないことが、物語のなかではできるね」と、昨日のファンタジーの世界につなげたようです。

アートカードの内容を関連づけてひとつの物語にするというゲームでは、子どもたちの自由な発想に驚かされます。物語を伝えたいという気持ちが自然に湧いてくるようです。

あっという間に授業も終わりに近づき、隣のグループに遠征したり、わっかさんにアートカードをもって帰りたいとせがむ子もいます。授業のはじめと比べて、子どもたちの声がよく響きます。


【未来を生きる力を育む授業】
アートわっかの美術鑑賞教室は、美術鑑賞を通して、子どもたちが21世紀を生きるために大切な力を育みます。よく観察し、自分なりに考え、自分の言葉にして、他の人に説明し、多様な意見をよく聞き、それによりさらに自分の考えを深める。

アートカードを用いたこのような活動に子どもたちは熱中します。こんな授業を一人でも多くの子どもたちに届けるには、教材や準備、ファシリテーショントレーニングなどを行う資金が必要です。クラウドファンディングを通してこの活動を輪を一緒にひろげていきませんか。

(このレポートは、ARDAクリエイティブパートナーに見学、執筆していただきました。アメリカでVTSの研修も受講されたことがあり、現在企業研修に関する仕事をされてる方です。丁寧に子どもの体験をみて、さらに新たな視点でレポートを書いていただき、ありがとうございました!)