2020/05/30 14:46

5月1日からスタートしたこのクラウドファンディングも、とうとう最終日となりました。

最初の目標は500万円でしたが、1日であっとういう間に達成。下田の観光を支える事業者に再度声をかけ、加盟店を50から87に増やし、次の挑戦として2000万円という大きな目標を掲げさせて頂きました。

昨夜、5月29日の22時すぎに、この大きな目標も達成させていただき、「伊豆下田応援プロジェクト」の運営メンバーとともに喜びを分かち合いました。本当に、本当に、本当に!ありがとうございます!!!!


こうして、日記のように、応援してくださっているみなさまに向けて、下田の素敵なお店やお宿をご紹介してまいりましたのは、下田のまちなかで3年前から営業させていただいている「Table TOMATO」の山田でした。最後のご挨拶として、恐縮ですが、自分のお店のこと、下田への想い、これからのことなどについてお伝えさせてください。

――両親から引き継いだトマトの物語

Table TOMATOは、もともと私の両親がこの地で38年営んでいた「TOMATO CLOSET」という洋服屋さんでした。コムデギャルソンやズッカなどのハイブランドが並ぶセレクトショップで、私の10代はトマトとともにありました。インターネットなどない時代。洋服を買うだけでなく、トマトに並ぶ商品を手にすることで、東京のカルチャー、センスを吸収していたように思います。雑誌『Olive』に憧れ、編集者になる夢を胸に、18歳で下田を出ました。その頃は、海があることや、おいしい海産物が日常的に食べられるのは当たり前で、ふるさと下田の素晴らしさなど、全然分かっていませんでした。むしろ、夢をつかむために下田に戻るものか!ぐらいに考えていました。若さゆえの気負いですね、苦笑


そして夢を実現させ、東京の出版社で働きはじめた私は、下田に戻るのは盆暮れ正月のみ。仕事に熱中した20代、30代を過ごしました。でも、あるときから下田のまちが変わりゆく姿に気づきます。子どもの頃から好きだった店が閉店し、通りにシャッターが降りたままの建物がどんどん増え、そのうち駐車場になったり更地になったり。まちの活気が失われていく姿に、胸を痛めはするも、何もできないまま、年月が過ぎていきました。


2016年の大晦日。父から「トマトを辞める」と聞かされました。父も70歳になり、いつか終わりがくることをわかってはいましたが、ショックでした。私の感性を育ててくれたあの店がなくなってしまうなんて……。2月いっぱいで閉店すると、突然切り出され、わたしは迷う時間もなく、自分が引き継ぐことを決めたのでした。編集やライターの仕事は、すでに独立してフリーランスで活動していたため、なんとか調整ができそうだ。物販は私には無理だけど、飲食店だったらできるかもしれない。昔から料理がすきで、よく友人を自宅に招いてごはん会を開いていた私です。レシピ本をつくったり、お酒とその場が好きだったのが高じて、『おじさん酒場』という本まで書きました。料理人へのインタビューも数多く手がけてきた経験も活かして、いまの下田にはないスタイルの、伊豆食材にこだわった食事と、熱を入れ始めていたナチュラルなワインを中心にしたお店。名前は、大好きだった「TOMATO CLOSET」のトマトをもらって、集うひとたちがひとつのテーブルを囲んで楽しい時間を過ごせるようにとの願いを込めて、「Table TOMATO」と名付けました。

元気をなくしているようにみえる下田に、ささやかだけれど、まちのあかりになれたら。そんな想いも抱きながら、私は新しい一歩を踏み出しました。


――かなわなかった三周年の感謝祭

そして2017年4月27日にオープン。3年めの今年4月27日には、これまで支えてくださった方々への感謝を込めて、マグナムボトルのナチュラルスパークリングをふるまうつもりでした。しかし、新型コロナウイルスの感染が日本中に広がってしまい、お店を開けることができない状態に。もともと編集・ライターの仕事とのダブルワークを前提としてスタートしたお店のため、毎月10日ほどしか営業していない期間限定の店です。3月の営業を終え、4月、5月と完全休業にさせていただきました。

ふだんは大磯を拠点に、執筆活動を行っている私は、この2カ月間、ふるさと下田に想いを馳せることしかできず、何も出来ない自分に苛立ち、いつまでこの状態が続くのか先行きがまったく見えないなかで、初めて「続けられないかもしれない」という不安がよぎりました。父から受け継いだ、なまこ壁が美しい歴史ある蔵づくりの建物ですが、父の所有物ではありません。大家さんがいて、毎月家賃を払っています。休業中のいまも、家賃のほか水道光熱費など固定費はかかっています。出ていくばかりのお金。1、2カ月、たとえ収入が完全にゼロだったとしても(実際、4月と5月の収入はあわせて4万円でした)、潰れてしまうような資産状況ではありませんが、このままが半年続くと、トマトを手放さなければならなくなるでしょう。

その現実が、ひたひたといま、見えてきています。


――たくさんのお客さまに支えられていたことを改めて実感

毎月、10日しか営業していないのにもかかわらず、なんとか運営を続けてこられたのは、お店を開けている間、必ず一度は利用してくださる地元のたいせつなお客さまたち、そして、東京や神奈川からわざわざ遊びにきてくれる友人や下田を愛する方々がたくさんいらして、トマトを支えてくださっていたからです。カウンター5席、6人掛けのテーブルひとつ、2、3人用のテーブル1つで、満席になると、14〜16人は対応できるのですが、ありがたいことに8月のハイシーズンには満席になることもそう多くはありませんが、経験させていただいております。そうやってたくさんのお客さまが来てくださって、10日の営業で続けてこられました。「10日しか営業していない」というと、多くの人が驚きます。「よくそれでやっていけるね」と。

そうなのです。これまでやってこられたのは、たくさんのお客さまがトマトを使ってくださっていたからなのです。私の手元にはほとんど残っていませんが、お客さまの存在と、ライター仕事との合わせ技で、トマトは成り立ってきました。改めていま感じているのは、トマトを一度でも利用してくださったお客さま、そして、いつか行ってみたいと思ってくださっているまだみぬお客さまへの感謝です。

これまで、短い期間しか営業できないのにもかかわらず、気に掛けてくださり、楽しい時間をともに過ごさせて頂き本当にありがとうございました。


――辞めたくない。続けていくために新しい営業形態を模索しています。

でも、これまでのような営業形態はもうできないように思います。6月17日から28日まで試験的に営業再開しますが、カウンター1組、テーブル1組で、3人以下でいらしてください、といったインフォメーションをしています。少ない人数でしか営業できないとなると、店を維持するのは正直困難です。まだやってみていない状況で、答えは出したくありませんが、難しい経営であることは明らかです。

店内での飲食を制限しなければならないかわりに、テイクアウト販売もスタートします。期限付きの酒販売免許も取得しましたので、クラフトビールとナチュラルワインのボトル販売も始めます。でもそれだけでは経営を維持するための収入には足りません。

トマトを辞めたくありません。今年のはじめに、自分のFacebookにて「10年は続けます」と宣言したとおり、少なくともあと7年はまちのあかりとして存在していきたいと思っています。


じゃあどうするか。新たな営業形態をいま模索しているところです。

店の二階は「Books半島」という暮らしと自然をテーマにしたセレクトブックショップとなっています。いま検討しているのは、Table TOMATOセレクトのオンラインショップを立ち上げることです。

伊豆半島は、その特異な成り立ち(長くなるので割愛します)から独特な風土を形成しています。その風土が育む産物は、じつに多彩でゆたかです。そうした産物を、「伊豆定期便」として毎月一度、その季節の伊豆を詰め込んで、みなさんにお届けできないかと構想しています。ほかにも、「ワインと本」の選酒・選書を行ったり、Table TOMATO自家製の調味料(もちろん材料は伊豆で!)を製作したりと、まだ頭の中にある状態でしかありませんが、構想を練っているところです。

お店での飲食と、テイクアウトと、オンラインショップと。

この3つのスタイルで、これから訪れるであろう新常態を、明るく楽しく乗り越えていきたいと思っています。どうぞ新しいTable TOMATOを応援してください。心からお願い申し上げます!


――支援してくださったみなさまへメッセージ

最初は達成できるのだろうかと不安だった2000万円の目標金額。支援してくださったすべてのみなさま、何度でもお伝えしたいです。本当にありがとうございました。みなさんの下田愛が、このクラウドファンディングを立ち上げた運営メンバーの下田愛と掛け合わさり、こんなにも大きな力となりました。昨日、投稿したなみなみの徳島さんがコメントしていましたが、いまだに静かに猛威を振るっている新型コロナウイルスは、私たちから大切な命を奪い、ひととひとのつながりを遮断し、まちの経済を破壊しようとしました。でも、我々は負けませんでした。まだまだ油断してはいけない日々が続きますが、もしかしたらこの先ずっと、人と人の距離を置きながら、マスクや消毒液を常時使いながら、私たちは生きていかなければならないのかもしれません。でも、どんな世の中になったとしても、変わらないものがある。それは「愛」なのです。ひとがひとを応援する「愛」。困っているひとを助けたいと思い、行動する「愛」。その事実を、私はこのクラウドファンディングを通じて、支援者のみなさまから教えていただきました。

受け取った愛の大きさを、絶対に忘れません。これからの下田を見守っていてください。

コロナがなければ、生まれなかったかもしれないかけがえのない下田の仲間たちと一緒に、もっと素敵なまちに育てていきます。

美しい海、青い空、輝く太陽。陽気でやさしく、少しおせっかいな私たち下田のひと。
すばらしい、宝がここ下田にはたくさんあります。

下田の宝を、みなさんといっしょに分け合いたい。
いまは、そんな気持ちでいます。

クラウドファンディングは終わりますが。この場を通じてうまれたみなさんとの絆はこの先もずっと続いていくと思っています。これからも下田を、わたしたちをよろしくお願い致します!下田にいらしたときは、ぜひ声をかけてください。直接お顔をみて、お礼をお伝えしたいです。

本当に、本当に、たくさんのご支援を、下田愛を、ありがとうございました。


加盟店
Table TOMATO