2020/05/23 12:00

こんにちは、六代目土谷瑞光です。

先日のTwitterプレゼント企画ですが、現時点で4000人を超えるフォロー&リツイートを頂いております。

皆さまの優しさとプレスバターサンドに助けられました笑

当選結果は、TwitterのDMにてご連絡いたします。楽しみにお待ちくださいませ!

また、今回の企画を通じてたくさんの方々にフォローを頂きました。

瑞光窯としてTwitterも運用し、今までとは少し違った角度から楽しみをお届けしたいと考えていますので、温かく見守っていただければ幸いです。

ご協力ありがとうございました!!!


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この機会に、新商品スタックマグの開発ストーリーを紹介させていただきます(^^)


商品開発にあたり、初めに掲げたコンセプトは、「機能とデザインを突き詰めたマグカップ」でした。


シンプルで洗練されたフォルムに、フィット感の良い飲み口や取手。

さらに、美しい見た目のままに積み重ねてコンパクトに収納できる。

そんな商品があったら素晴らしいだろうな、と。


しかし、それだけでは完璧ではない、と僕は考えていました。


世の中に流通しているスタックマグの多くには、あるひとつの重大な欠点がある。

瑞光窯が他と一線を画すためには、その壁を乗り越えることが必須である、と。


重大な欠点とは何か?


それは「重さ」の問題です。


スタッキングできるマグカップはその性質上、通常のマグカップと比べて重くなりがちです。

なぜでしょうか…?


主な2つの原因について、簡単にご説明させていただきます。


①かたちの問題

②作り方の問題


①について。

うつわを薄く軽く作るために最も重要なのは、「内側(飲み物が入る部分)の形」と「外側の形」が揃っていることです。

当たり前ですが、内外の形が違えば、その分、厚みができて重くなってしまいます。

ここで皆さん、スタッキングできるマグカップの形を思い浮かべてみてください。

カップの下半分が、通常のうつわと比べて複雑な形状をしていますね。この部分に余分な土が溜まり、重たくなってしまうのです。


②について。

市場に出回っているスタックマグの大半は、量産用の【型】に泥を流し込んで作る「鋳込み」という製法で作られています。

(ざっくり言えば、チョコレートを型に流し込むようなイメージです)

鋳込み製法は、『単価が安くなる』『個体差が出にくい』などのメリットがありますが、

その反面、『生地が分厚めになる』というデメリットがあります。

生地を型から取り外す際に歪んでしまったり、高温の窯で焼いた時に変形するリスクが大きいため、ある程度の厚みが必要なのです。


これら2つの課題を解決できるどうすれば良いか?


ここで僕が出した答えはシンプルです。

“ロクロを使って、内外の形を揃えて作ればいい”です。


しかし…


もちろん一筋縄でいくはずがありません。

あらゆる分野において言えることですが、「世の中に流通していない」ということには、“それなりの理由”があります。

専門的な話になるので詳細は割愛しますが、一般論で言えば、スタックマグは、ロクロで作るには技術的な難易度が高く、商用を目的とするには手間がかかり過ぎます。

試しにあなたが、どこかの窯元に飛び込んで、「これを作って欲しい」と話を持ちかけたとしたら、「ロクロで作る形ではない。素人は黙っていろ」と突き返されてしまうかもしれません。


しかし、イノベーションは、業界の常識、慣習、思い込みを覆すことからしか生まれません。

このような難題に挑み、機能とデザインを見事に融合させてくれたのが、この道34年、一流のロクロ職人・須川でした。

(窯から焼き上がった見本を手に持った瞬間、“これは良いものができた”という確信から、僕らは思わず顔を見合わせました)


ちなみに、どれだけ技術力があっても、ロクロ成形を選択する以上、“手間がかかる”ことは事実です。

コスト面の課題について、瑞光窯は「設備」と「商流」の改革により解決をしています。

(この辺りの話は、クラファン後にブログなどを通じてお話したいなと考えています)


テクノロジーの発達により、あらゆるプロダクトが均質化に向かう時代です。

しかし、職人たちと共にものづくりの仕事に携わる僕だからこそ言えることがあります。


“日本の伝統工芸でしか成し得ない感動がある”


スタックマグも、本日リターン品に追加致しました。

ぜひご検討いただければ大変嬉しく思います。


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最後にちょっと、思い出話を。


2011年、神戸。


僕がまだ若く未熟だった時のことです。


周りに合わせて就職活動をしてみたものの、しっくりくる答えが見つからない。

同じような表情で同じような言葉を話す大人たちを見ては、何もかもが嘘くさく感じてしまう。

誰しも、そんな時期ってありますよね笑


“自らの手で何かを創る人になりたい”


今にも消えそうな想いだけを持って、悶々とした日々を過ごしていました。


僕には当時、よく顔を合わせていたひとりの友人がいました。

彼とは大学のサークルの同期で、在籍時にはあまり話さなかったのですが、卒業後になってぐっと距離が縮まりました。

就職を機に他の友人たちが神戸の街を去ってしまい、“僕ら2人だけが取り残された”状態だったので、それはある種、必然だったのかもしれません。

彼は語学や文学に精通していて、妙に達観したところがあり、独自の行動規範を持った人でした。

僕らはすぐに意気投合しました。若さゆえの無謀さや、反抗的なところも似ていて、きっとお互いに好感が持てたのだと思います。

夜になると、彼の部屋から神戸の夜景を見下ろし、好きな音楽や小説についてお酒を飲みながら語り合ったものです。

ずっとこうしていられたら…と夢想してしまうほどの素晴らしい時間でした。


ある日のことです。

彼の部屋の卓上に置かれたノートパソコンがなぜか気になり、僕は直感的に、同じものを手に入れたいと思いました。

スタイリッシュで洗練された雰囲気を纏っていて、自分が持っている物が、急に陳腐に見えてきたのです。

しかし、随分と悩みました。

当時の僕にとって、10万円のパソコンは“超”の付く高級品でした。

それに、必需品ではありませんから。

そんな物を買ったところで、僕には書き溜める文章もなければ、衝動に駆られるほどの創作意欲もないじゃないか。

自分に言い訳をして、納得してさせようとした時でした。

彼に言われた言葉が今でも忘れられません。


「たった一度の人生なのだから、“良いもの”と暮らす方がいい」


その言葉の意味がわかったのは、ずっと後になってからでした。

今だからこそ言えるのですが、良いものは、私たちに新しい“想像の機会”を与えてくれます。

どうすれば、この人生をより深く愉しむことができるのか?

単に使い手の暮らしに寄り添うだけでなく、イマジネーションを増幅させ、ライフスタイルや人格までもを変えてしまうことがあるのです。

ある時期には、あなたが新たな一歩を踏み出すために背中をそっと押してくれることもあるでしょう。

私たち瑞光窯が作るうつわもまた、皆さまにとって、そのようなものであればいいなと、心から願っています。

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長くなってしまったので、次回は軽くいきます。

現在試作中の新しいシリーズのうつわについて、ちょっとしたクイズも交えてお話できればいいなと思います。

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします!!

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追伸

支援金額500万円を達成しました!!!

ご協力頂きました支援者様、お一人お一人に改めて感謝申し上げます。

本当にありがとうございました!!!!!


瑞光窯 土谷


現在の支援総額:5091400

支援者数:638