2020/07/29 17:22

※この記事は「宇宙へのチャレンジを共に歩む!なつのロケット団ファンクラブ会員募集!」に投稿されたものと同じものです

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先週7月18日(土)・19日(日)に打上げを延期し、7月25日(土)・7月26日(日)に再度打上げ実施を試みました『ねじのロケット』について、打上げ結果と延期の報告をさせていただきます。

『ねじのロケット』は打上げウインドウ内の26日16:30にコンピュータによる自動シーケンスを開始いたしましたが、点火器の温度が基準値を満たさず、メインエンジン点火前にコンピュータにより自動停止いたしました。

基準値を満たさなかったための設計に準じた自動停止であり、機体も健全な状態で残っておりますため、早期に原因究明を実施し時期を調整して再度打上げを目指します。

なお、先週の打上げ経過につきましては、前回のファンクラブレターをご覧ください。


記者会見でお伝えした内容を中心に、ご支援いただいたみなさまに経緯を報告させていただきます。

 



▼点火器の点火が遅れた原因について

先週19日に打上げを実施した際に、自動停止の原因となった点火器の着火の遅れについて、想定される原因と今回の打上げまでに行った対策についてご報告いたします。



打上げ予定時刻(T-0秒)の時点で、2つある点火器内に設置された温度センサーの測定値が、両方とも基準値を超えていること(点火器に着火し、メインエンジン着火に必要な量の火炎がでている状態)が打上げの条件となりますが、19日の事象では1つの点火器の点火が遅く、時間内に規定の温度に達しなかったことから、ロケット機体のコンピュータが自動停止いたしました。(自動停止のことをアボートといいます)



右側の図のように、メインエンジンの上部に2つの点火器があり、この2つの点火器から火炎がでてメインエンジンの燃料と酸化剤に着火する仕組みになっています。

今回、問題があったと推定したのは、点火器にガス酸素を送る配管部分(左側の拡大図)です。配管内にはオリフィスと呼ばれるガス酸素の流量をコントロールする部品がついていて、このオリフィス部分のガスが流れる穴は針の穴程度の大きさとなっています。

いくつか可能性は考えられますが、このオリフィスの部分に氷などのコンタミ(異物)が混入した可能性が考えられます。



これに対して上記の通り、対策を行いました。

対策としては、点火器の交換、機体内の地上の点火器ガス配管の清掃や交換などを行った他、液体酸素を流し込む際の冷却による氷のコンタミを防ぐため、配管の温度がマイナスにならないように断熱対策などを実施しました。


▼26日の打上げ延期は点火器の温度上昇の不良

今回の打上げは25日(土)・26日(日)の2日間の打上げウインドウを確保しておりましたが、7月25日は上空風が打上げ条件を満たさなかったために、打上げを26日に延期いたしました。

また、26日の朝ウインドウについては海上の安全確保に時間を要するため、また、昼ウインドウについては氷結層の厚みが基準値を超えていたために、26日の夕方ウインドウでの打上げを目指しました。


26日の夕方ウインドウでは、海上の安全確保のために時間を要しましたが、ウインドウ内の16:30に打上げ時刻を設定し、コンピュータによる自動シーケンスを開始する手順に至りました。しかし、打上げ時刻の0.2秒前に、点火器の温度上昇が確認できなかったため、メインエンジンに着火させる前にロケット機体のコンピュータが自動で停止いたしました。

先週の点火器の不具合で対策をしていた点火のタイミングは正常でした。


点火のタイミングは正常でしたが、温度上昇が遅く、時間内に規定の温度まで上がらなかったため、自動停止となりました。

今後詳しく調査する予定ですが、現時点ではコンタミなどによって物理的にうまく燃焼できていないことや、点火器の温度を測定するセンサーの異常などが考えられます。


▼今後について

今回の打上げに関して、コンピュータが自動停止したことについては設計通りの動作となります。メインエンジンへの点火前に自動停止したことで、機体は健全な状態で残っています。関係各所のみなさまにはご心配をおかけしているかと思いますが、前向きに捉えて、次回の打上げに備えていきたいと思います。

今後の打上げ時期については、多くの方との調整が必要となるため、現時点ではお知らせが難しい状況です。ロケットの打上げは、非常にたくさんの方のご協力が必要となります。数日で調整ができることではありませんので、数ヶ月単位で調整に時間を要するものとなります。

次回の打上げが決まりましたら、ご連絡させていただきます。

最後に、今回の打上げ実施にあたって、関係各所の皆様に多大なご協力をいただきました。特に今回、海上の安全確保での打上げ延期などがありましたが、地元の漁協には、監視船を出していただくなど、多大なるご協力をいただきましたこと、心から感謝いたします。

また、新型コロナウイルス感染拡大防止の対策について、警察や大樹町役場の皆様のご協力で警備パトロールを強化したことで、見学者もなく、無観客で安全に打上げを実施することができました。警察・大樹町役場の皆様におかれましても、心から感謝いたします。

引き続き、応援のほどよろしくお願いいたします。