2020/08/30 15:30

本日もたくさんのご来店、ご支援ありがとうございます。

クラウドファンディングを通して、たくさんのご支援者様からコメントや、お声をいただく機会が増えました。また、ご取材を受けることも増え、昔のことを度々聞かれることが多くなりました。そのため、過去を知るため、祖母の家のタンスの奥から、アルバムを引っ張り出し、様々なストーリーを聞くことができました。そしてなにより、創業を決意した祖父の思いが綴ってあった記事を見つけることができましたので、今回は皆さまにシェアしたいと思い、本文を載せさせて頂きます。ちょうど今から40年前の8月27日の記事となります。

北國新聞社さま
昭和55年(1980年)8月27日 金沢 文化考 記事

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第6部 担い手

手作りが生かせる道

職人の腕の見せ所

金沢はなんといっても和菓子の伝統が強い。私が北海道にいた頃の経験では、法事や入学祝いのお返しなんかにケーキがどんどん使われる。和菓子の出番は比較的少なかったが、金沢では結婚式なら五色まんじゅうといった具合になる。茶道が盛んな関係や家庭でも日頃からの需要が多いことが、大きな和菓子メーカーがいくつもやっていける理由だろう。

和菓子というのは、一見作り方や味に伝統的なものがあるように思われがちだが、わりあい機械化が進んでいるし、機械を入れることも容易だ。その点、ケーキはすべて手作りでやらなければならない。職人によって味や形が違うし、一つとして同じものができない。それだけ職人が腕をふるえる余地があり、手作りという意味ではケーキこそが本質的に金沢人に受け入れられる要素を多く持っていると思う。なんとか、金沢でもケーキがさまざまな進物として街の趣とぴったり合っているんだということをわかってもらいたい。

子供の笑顔が張り合い

私は北海道の農家に生まれ、二十歳のときに友人に誘われて和菓子のメーカーに職人として務めるようになった。さらに大きいところへ移り、洋菓子も手がけるようになって、ケーキ作りに魅せられた。和菓子は結局、あんこを包むというだけのことだが、ケーキにはさまざまな工夫が生かせる。まあ、本気で和菓子をやるのは大変なことだと思うが、ケーキ作りでは食べる子供の笑顔が目に浮かぶ。和菓子にはそれがない。和菓子職人にはどちらかというと職人の自己満足の部分があるのではないだろうか。

専門店でなければ

東京で修行したあと、十三年前に金沢に来た。その時は和菓子のメーカーに入り、洋菓子部というのを作り、私自身が手掛けた。しかし、つくった歌詞の反応をじかに感じ取りたいと思って独立に踏み切った。和菓子メーカーの洋菓子部というのはやはり成り立たず、私が辞めたあと、まもなく廃止になったようだ。金沢の場合は特に、専門店でなければ物は売れない。和菓子の横にケーキが置いてあるというのでは、なんとなく中途半端な印象があって、客が敬遠するのではないか。

金沢に来て、いろんな食べ物を見てみると、金沢人はやっぱり口が肥えていると思う。それでも、金沢ではケーキに対する感覚がほかの土地よりも遅れている気がする。進物というより、どうしても子供のおやつという位置づけのようだ。金沢人に合う味というのも難しい。自分の店を持ったことはちょうどバタークリームから生クリームに変わる時期で、どんなものが受けるのかとずいぶん苦労した。今は店に来る客では、「あまり甘くないケーキを」という人が圧倒的に多い。菓子作りで「砂糖を落としたらだめ」というのは昔の感覚だ。金沢人の嗜好がそうなのかもしれないが、砂糖の量が以前の半分くらいになったものも多い。

私は一日に売れる分しか作らない。次の日に残すということは絶対にしない。売れ行きを見ながら少しずつ作るようにしている。大手のメーカーでクリスマスケーキを一ヶ月も前から作り、機械でクリームをかけている所もあるが、あんなものはやがて受け入れられなくなるだろう。ケーキは生物、やはり新鮮でなくてはいけない。「おいしかった」とお客さんが喜んでくれるのが一番うれしい。ケーキ作りでも大切なのは結局、「作る人の心」だと思う。お客さんにうまいものを食べてもらいたいと真心を込めて作れば、自然といいものができるものだ。

通人の下に真価問う

ケーキが今みたいに各家庭で受け入れられるようになったのは、ほんのここ十年ほどの間だ。和菓子は若い人のなかに、敬遠する人もいるが、ケーキは子供からお年寄りまでほとんどの人が食べる。私の店の場合、ケーキを買うのはほとんど固定客だ。それだけ客とのつながりが強いのはうれしいが、近くに住む人だけでなくもっと遠くからも買いに来て欲しいというのが願いだ。売れるか売れないかは扱うケーキの味プラス作る者、売る者の人間性にある。金沢人は人と人との触れ合いや関係を特に大切にする気風があるようだ。だからこそ、職人の腕が色濃く出る手作りのケーキこそが、贈り物の菓子として選ばれる土壌が金沢にはあると思う。和菓子どころ金沢であえてケーキ作りをするわけだが、肥えた金沢人の舌に真価を問うことは、職人としてやりがいのある仕事だと思っている。

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ご覧いただきありがとうございました。


創業した祖父は無口な性格で、仕事人間だったため、家族全員が祖父の思いを聞いたことがありませんでした。しかし、すごく強い決意や思いを感じることができ、胸が熱くなりました。

このクラウドファンディングを通して、多くの地元の方、45年来のファン、SNSを通して知ってくださった方、学生の方、メディアの方、海外お住まいの方と繋がり、様々なストーリーを聞くことができ、最終的には、祖父の思いまで知ることができて本当に良かったです。
祖父の「近くに住む人だけでなくもっと遠くからも買いに来て欲しい」という思いを胸に秘めて、私たち家族が一丸となって達成できるようにこれからも頑張っていこうと思っております。

ノルマンは皆様のおかげで、目標額を達成し、更に多くのご支援をいただくことができました。
おかげさまで、50周年に向けて、まだまだ元気に営業していけます!
今回ご協力いただきました方々は、私たちにとって、かけがえのない大切な仲間だと思っておりますので、引き続きどうぞよろしくお願い致します。