2021/02/14 23:37
ヤブコウジの実

お久しぶりです。冬の寒さも緩み、春を感じる日が増えてきましたね。昨日は試験地に行く道中でヤブコウジの実を見つけました。ヤブコウジは背丈の低い小さな樹木で、なじみが薄いかもしれません。しかし、恐らく皆様一度は聞いたことがあるはずです。かの有名な落語「寿限無」の名前の中で「やぶらこうじのぶらこうじ」というフレーズがありますね。この部分、漢字で書くと「藪ら柑子の藪柑子」と書きます。この「藪柑子」というのが、ヤブコウジのことです。元々、生命力が強い縁起物の木であることから寿限無の名前に採用されたと言われています。 また、その小さな樹勢が盆栽の世界では気に入られ、よく利用されるようです。そんなヤブコウジは晩秋から冬にかけて、写真のような赤い実をつけます。見れる期間はあとわずかかもしれませんが、本州以南には分布しているので探してみてはいかがでしょうか?

間伐の様子

間伐は一つの山に設置した分が終わり、別の山での作業が始まりました。

新しい試験地

この試験地は非常に斜面が急なので、足場が悪い中での作業になります。日本の特に本州以南では、ここのような急傾斜地にも広く人工林が広がっています。日本は地形の問題から、わずかな平野には田んぼと民家を割り当ててきたので、やむを得ず急傾斜の山間部で林業が営まれる形となっています。一方、欧米では平野部でも森林が広がっており、大型の機械が入れるような道が整備しやすい地形です。そのため日本よりも効率的にコストをかけず林業を営みやすくなっています。その点、日本はディスアドバンテージを負っている状況ですが、逆を言えばまだまだ機械化の余地が残されている分野でもあります。生産ロットが向上するような、今後の技術革新に期待です。

大径木の伐採

さて、様子を見に行った日、一本の大径木がプロット内にあり、伐採することになりました。腕を回しても回りきれないほどの太さで、伐倒する瞬間も地響きのような轟音が響き非常に迫力がありました。55年前に植えられた人工林の中で、明らかに周りの個体よりも大きかったので、前回の伐採で倒されずに残されたのかな?と思って年輪を数えてみました。その様子が下の写真です。伐倒した大径木の年輪

すると驚いたことに、この個体も55歳の個体でした!年輪を見ると、初期の年輪幅が非常に太く、恐るべき成長力を持っていたことを示しています。さらに、芯が幹のほぼ中央に位置しており樹形も非常に綺麗な個体だったことが分かりました。まさにスギ界のエリートです!このような優れた成長力や樹形を持つ個体は、枝から挿し木をしてクローンを作ることがあります。この個体も十分その資格があるでしょう。

開けた部分から林内に光が差し込む

間伐が終了した場所からは、日光が差し込み鬱蒼としていた森林が明るい雰囲気になりました!残りは1/4ほどになります。急傾斜での作業なので!、安全第一で引き続き取り組んでいきたいと思います!

リターン制作の様子

リターンも順調に制作が進んでおります。4月の初旬に発送予定ですので今少しお待ちいただけると幸いです!


南洋材の動向

さて、前回まで拡大造林期とそれに続く木材価格の低下について解説してきました。今回は、国産材の競争相手となった外国産材の一つ、東南アジア・オセアニア産の「南洋材」といわれる木材の動向について紹介したいと思います。また、昨年末の日本経済新聞の記事に「南洋材丸太、消える市場 輸入最大手が来春廃業、国産伸び「循環経済」シフト 」というものがあったので、この内容に即した形で解説していきたいと思います。

さて、木材価格がピークを迎え下落に転じ始めていた1987年当時、日本は世界の木材貿易のうち丸太の5割、製材の1割、合板の2割を占める量の輸入を行っていました。特に東南アジアやオセアニア産の南洋材は、①大径木であることによる歩留まりの良さ, ②年輪を持たない※1, ③節がないことによる強度の増加, ④安い, といった特徴が合板やコンクリート型枠用合板に適しており、大量に輸入されていました。そのため熱帯雨林破壊を進める国として国際社会から非難を受けてしまいます。

しかし、1980年代後半、南洋材産出国であるフィリピンやインドネシアは、自国の森林保護や、自国に存在する資源を自国で管理・開発しようとする「資源ナショナリズム」を進めるため、原木丸太の輸出を禁止しました※2。日本はこれ以降、南洋材の輸入をマレーシアに頼っていましたが、マレーシアのサバ州政府も2018年5月、森林保護を理由に丸太の輸入を禁止しました。そして最後に行きついたのが、パプアニューギニア(PNG)だったのです。ところがその、PNGも2020年2月に木材産業の育成を目的とし、丸太の輸出関税を引き上げることとなりました。さらに、25年には丸太輸出の50%を禁止するという情報もあり、いよいよ南洋材の輸入が難しい状況になっています。また、2000年頃から国産針葉樹材を利用した合板用材の生産量も増加し、南洋材を取り巻く環境は厳しさを増しています。その結果、南洋材の輸入業者は事業の継続を断念せざるを得なくなっているのです。これが日経の記事になっていました。

 さて、一連の変化は南洋材関連の業界にとって痛手であることに違いありません。しかし、2000年ごろに平均直径が80㎝あった南洋材が、現在では60㎝程度のものしか入手できなくなっている状況からしても、この資源利用方法に持続性がないことは察しが付きます。今後さらに、SDGsを考慮した資源調達方法が企業に求められるようになると、外材依存の現状から自国資源を有効に利用する方向へ変化する動きが加速するのではないでしょうか?

次回は、このような外材の動向が国内林業に与える影響について考察していきたいと思います!お楽しみに!




※1:年輪は環境の季節変化による成長量の違いによって生じる。そのため、季節変化の少ない低緯度地域では年輪が発生しない。

※2:フィリピンは造林樹種を除くラワン等の有用樹種の制限1986。インドネシアは全面禁止1985。

参考文献

・東南アジアの木材産出地域における 森林開発と木材輸出規制政策. 立花 敏. 2000.『地域政策研究』(高崎経済大学地域政策学会) 第3巻 第1号 2000年7月 49頁~71頁  

・南洋材丸太、消える市場 輸入最大手が来春廃業、国産伸び「循環経済」シフト 日経 2020/12/19