2020/10/30 10:00

映画「となりの肯定ペンギン」の主人公・肯定ペンギンのペンペンは、一体どんなキャラクターなのか?

舞台「肯定ペンギン」シリーズの作演出で、今回の映画脚本を担当するあべの金欠が、過去の舞台動画を観ながら紹介します。


ペンペンはいつも背中を押してくれる。目の前が崖でも。

なんでも肯定してくれる肯定ペンギンと聞くと、ポジティブで優しいキャラクターを思い浮かべるかも知れませんが、ペンペンはちょっと違います。

「私キレイ?」と尋ねたら「キレイや。めちゃくちゃキレイやで」と肯定してくれるし、「キレイじゃないよね?」と尋ねたら「キレイじゃない。全然キレイじゃない」と肯定してくれる。とにかく、聞かれたことをそのまんま強く肯定してくれるのがペンペンです。


2012年に上演した舞台「肯定ペンギン」シリーズの第一弾。閉園直後の動物園のペンギン舎で、飼育員の近藤さんはペンペンに相談します。

相談内容は「誘われた合コンに行ったほうがいいかどうか」。

* * *

近藤さん「合コン行ったほうがいいと思う?」

ペンペン「行ったほうがいい。絶対に行ったほうがいいよ」

近藤さん「でも、この年で合コンに行くって、ちょっと恥ずかしい感じするかな?」

ペンペン「するよ~! そら恥ずかしいわ!」


(動画部分の台本は記事の最後にまとめています)


「YES!」or 「ん?」 

ペンペンと会話するコツは「YES!」と肯定できる質問をすること。例えば献立で迷っているとき、「今日の晩ご飯、何がいいかな?」と聞いても「ん?」と聞き返されるだけ。「今日はカレーにしようか?」と聞けば「カレーにしよう! 今日は絶対にカレー!」と肯定してくれるし、「カレーはやめとこうか?」と聞いたら「やめとこう! とりあえずカレーだけはやめとこう!」と肯定してくれます。「何がいい?」とか「どう思う?」とか、何通りも答えのあるような質問には答えてくれません。


ただの反射にしては、よくしゃべる。

 質問されたことをただ反射的に肯定するだけではなく、そこに一言二言、三言四言、言葉を足してくるのもペンペンの特徴。

 合コンに行くべきかどうか決めきれない近藤さんは、「行ったほうがいいかな?」と改めて質問。ペンペンは、聞きかじった知識を駆使して一生懸命に強く肯定してくれます。

* * *

近藤さん「行ったほうがいいかな?」

ペンペン「そら行った方がいいよ。「虎穴にいらずんば、虎子を得ず」って言うやろ。チャレンジしたものだけに、チャンスはやってくるんやから」

近藤さん「でも、行かんほうがいいかな?」

ペンペン「行かんほうがいい。行っても疲れるだけやと思うわ。「虎穴にいらずんば、虎子を得ず」とか言うけどさ、よう考えたら、「虎子」って、トラの子供やろ。トラの子供なんか要るか? なんでもチャレンジしたらええってもんちゃうで」 


(動画部分の台本は記事の最後にまとめています)


映画のペンペンも、基本的な性質は舞台のペンペンと同じです。

では、舞台と映画では何が違うのか……それについては、また後日お話しします。

(あべの金欠)


「肯定ペンギン “合コン行ったほうがいいかな?”」① 台本

近藤さん「合コン行った方がいいと思う?」

ペンペン「そら行った方がいいよ。絶対行った方がいいって」

近藤さん「でも、合コンって言うたら、普通は、もっと若い子が行くイメージあるやんか。だから、この年で合コンって、やっぱちょっと……恥ずかしい感じするかな?」

ペンペン「するよ~!」

近藤さん「え?」

ペンペン「そら恥ずかしいわ。だって、合コンって言うたら、普通はもっと、若い子が行くもんやろ。それを、その年で合コンって……そら恥ずかしいわ!もう、聞いてるだけで、こっちが赤面する! ポッとなるわ! ポッ!」

近藤さん「ちょっと、それは、言いすぎちゃうの?」

ペンペン「言い過ぎや! 今のは言い過ぎや! 撤回しよう!」

近藤さん「別に、この年で合コン行ったってかまへんやんか!」

ペンペン「そらかまへんよ! 行ったらアカンなんていう決まりはどこにもないからね」

近藤さん「そやろ」

ペンペン「そらそうや。行きたかったら自由にやったらええねん。誰にどう思われてもかまへんやんか。なあ。行け! 行け!」

近藤さん「……でもなぁ……この年で、合コンに行くのは全然いいと思うんやけど、でも、この年で、合コンに行き始めるっていうのはどうかな?」

ペンペン「……ん?」


「肯定ペンギン “合コン行ったほうがいいかな?”」② 台本

近藤さん「なあ、ペンペン。私、合コン行ったほうがいいかな?」

ペンペン「そら行った方がいいよ。絶対に行ったほうがいい。ものすごい出会いがあるかも知らんで。人生変えるような出会い。そら、そこまでの出会いはなかなかないけど、可能性はゼロじゃないからね。行かんかったらゼロやで。「虎穴にいらずんば、虎子を得ず」って言うやろ。チャレンジしたものだけに、チャンスはやってくるんやから。な~!
毎日、こんな小さい動物園の中に、どんな出会いがある? その作業服を脱いで、外へ出て行けば、いろんな出会いが待ってるんやで。別に、その合コンで、すぐ彼氏が見つからんでもいいやんか。新しい人と出会って、話をして、刺激を受けることが大事やねん。
ペンギンは悪いこと言わへんから。行った方がいい。絶対に行ったほうがいい!」

近藤さん「…でもやっぱ、行かんほうがいいかな?」

ペンペン「行かんほうがいいな。行っても疲れるだけやと思うわ。ノリが合わへんもん。考えたらわかるやん! 君なんか行っても、浮くだけやで! もう、浮きまくり! だいたい、合コンに来る男って、タイプがしぼられるやろ。軽~くてノリのいい、君が苦手なタイプの男ばっかりや。な!君が好きなタイプの男は、合コンには来えへんねん。そう思うから、ずっと断ってたんやろ。それで正解。
「虎穴にいらずんば、虎子を得ず」とか言うけどさ、よう考えたら、「虎子」って、トラの子供やろ。トラの子供なんか要るか?あんなもん、素人が育てんの大変やで。なんでもチャレンジしたらええってもんちゃうねん。ここで毎日見てたら、結構、楽しそうに過ごしてるやんか。十分幸せそうやで。新しい刺激を求めて、外へ外へ出て行かんでも、この小さい動物園の中に、幸せはいっぱい見つかるんやから。
無理して周りに合わせる必要は、まったくないって。ペンギンは悪いこと言わへんから。やめとき。絶対に行かんほうがいいよ」