2021/03/11 14:30


「信念を曲げないということ」

ひたすら頑固なのではない。人の意見を聞きつつ、時の流れを読みつつも、基本の土台は何があっても全くぶれない。「芯」念とも言えるかもしれない。

だが「芯」が通っている人ほど、話はわかりやすく説得力があり、何よりも優しい。

その説得力と優しさで、僕の故郷和歌山を含む紀伊半島が原発銀座になることを、身を賭して阻止してくれた。誘致か反対に揺れる民の中に深く入り語り合い、最後は民の意思として原発建設を跳ね返したのだ。

元・京都大学原子炉実験所助教授、小出裕章さんは原子力の専門家でありながら原子力に反対する通称「熊取六人衆」のお一人。学生時代に都会の電力を供給するために地方に危険な装置を誘致する不条理に目覚め、原子力の畑にいながら平和利用という美しいスローガンに一貫して反対の立場を取られてきた。

同時代の原子力専門の学者が次々と「出世」して原発推進派のご意見番になっていくののとは真逆の人生。俗に言う「冷や飯を食う」ような学者人生だったと思うが、彼らが一貫して主張してきたことが、いざ事故が起きた時にあまりにも無知だった我々の目を開かせ、そしてどれだけ救ってくれたことだろう、、。

なのに
「結局事故を防ぐことができなかった、、」
と小出さんは自らを責めるかのように、退官された今も精力的に各地で公演活動をされている。

そのスタンスは

1_敵地(原子力推進派との議論)
2_現地(原子力立地地域の方々に原子力に真実を伝える)
3_若い世代(福島原発事故を背負っていく方にあの事故の真実と未来の展望を伝える)

伝えたいターゲットが明確である。

イラストレーター・鈴木邦弘さんの読み聞かせを熱心に聞く小出先生。2019年もやい展金沢にて
実は縁があって2年前に開催された「もやい展 金沢」小出先生がお越しになられました。

「私はアートは全く門外漢ですが、みなさんがこうやって様々な手法で伝えてくれようとしていることをありがたく思います」


と、報われるようなお言葉をいただきました。


小出先生の最新作。「もやい展」のことに触れていただいております。



低価格開催と開かれた会場での開催というもやい展の理念は、できるだけ多くの人にあの災いを記憶に止めていただきそれを未来へとリレーしたいというもの。小出先生の「芯」念をオマージュして、作家出演者が一同となって「心の琴線を揺らす」空間を作り上げようと思っています。小出先生も期間中見に来てくださるというお知らせもいただいております。


小出裕章先生、メッセージありがとうございました。



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フクシマ事故から10年。


当日発令された「原子力緊急事態宣言」は今でも解除できず、被曝についての法令は反故にされたままである。被曝に敏感な子どもたちを含め数百万人もの人たちが、法令を守るなら「放射線管理区域」に指定しなければならない汚染地に棄てられ、普通の生活を余儀なくされている。


一方、事故に責任がある原子力ムラは誰一人として責任を取らない。


この国に他者の痛みを感じることができる人が増えてくれることを願う。


                                                                  小出 裕章(元 京都大学原子炉実験所助教)




主催・中筋が偶然にも写真を提供することになった同書。小出先生の東京オリンピックへのメッセージと時代を映した報道写真、福島の現状が具にわかる写真で構成。7ヶ国語表記。


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