2021/04/09 14:00

活動報告(3)

ボニス宅を訪問して帰ってきたコーディネーターのエマニュエルが、困りはてた顔つきで話し始めました。「ナイロビへの見学旅行のことですが、『コロナ感染予防のための政府規制があって車に乗れる人数に制限がある。だからボニスともう一人しか行けない。カロラインかエミリーのどちらかを選んでほしい』と言ったところ、ボニスは『3人一緒でないというのはよくない。』って言うんです。」

これを聞いたプロジェクトチームは、ことの重大さにはたと気づきました。製作現場を訪れ優れた品質の商品を手に取り、さらにマーケティングを考え始めるきっかけとするというナイロビ見学の目的は伝えてあったはず。カロラインとエミリーのうち、ナイロビ見学には製造よりもむしろ販売やマーケティングに、後日予定しているキスムの工場見学には製造に向いている方を、適正だけでなく本人の興味も加味してボニスが決めることを期待していたのです。彼女たちはこれまで地域保健ボランティアとして、HANDSを始めとする大小の開発パートナーたちが提供するプロジェクトに招かれ参加してきました。開発パートナーたちは途上国の人々の自立発展性を唱えながらも、与える側とそれを受ける側といった不均衡な関係は根深いところに存在します。彼女たちには起業する者としてのマインドセットに切り替えてもらわなければおそらくNiko Nikoは成功しないでしょう。エマニュエルによると、「保健ボランティア」と「起業家」が両端にある「マインドセット」という1メートルの物差しがあるとすれば、彼女たちは「保健ボランティア」からまだ20センチも「起業家」に近づいてない、と言います。

3月31日、ビジネス研修第一日目。目標は彼女たちに女性起業家としてのアイデンティーを持つことの重要性に気づいてもらうというものでした。彼女たちが保健ボランティアとして開始した布ナプキン製作、販売、普及の歴史をたどりながら、そこにあった自分たちの意識や社会との関係性を見つめ直し、さらに投資とリターンという新しい考え方を学びました。今回クラウドファンディングへの寄付という形で彼女たちに投資してくれたサポーターさんたちにとっての最終的なリターンとは、安定したビジネスを通して地域の若い女性たちの健康に長く寄与する、というものであることに気づいてくれました。

研修初日。開始時刻に1時間以上も遅れてHANDS事務所に現れた彼女たちは、「今日、ここに来た時は私たちは保健ボランティアだったけど、帰る時は女性起業家よ!」と明るい笑顔を置いて行ってくれました(写真)。

今後の予定:ボニスの縫製技術個人指導講師(フェイスさん)と今後の具体的な予定を立てるための打ち合わせ、長崎市内のユニークな「布なぷきん・布おむつ専門店りぼん」の店内写真と動画、商品を研修教材として活用するための計画。(HANDSケニア)