みなさん、こんにちは。茨城県潮来市にあるお寺、潮音寺の住職・村上定運です。
前回の記事では、「花あかり」を主催する潮音寺がどんなところなのか、その歴史をご紹介しました。
そこでも少し触れた通り、潮音寺は東日本大震災で大きな被害を受けたお寺です。今回は、被災してからの10年をどのように過ごしてきたかについてお伝えしていきます。
◆液状化で壊滅的な被害
もともと湖を埋め立てて開発された日の出地区は、液状化による甚大な被害を受けました。潮音寺も例外ではなく、燈籠など多くのものが傾き、建物が地面に沈み込むなど境内は壊滅的な状況でした。
その結果、16棟あった建物のうち12棟は解体するなど多くのものを失い、長い間、お寺としての機能を果たせない状態が続いたのです。
それでも、お寺のシンボルでもある鐘楼や境内に入ってすぐの「まほろば道場」は、全国の方々からのご浄財(ご寄付) を受けて再建が叶いました。
境内の修復を機に地域のお子さんを集めてのサッカー教室を再開したり、お写経のご希望を毎日受け付けたりと、お寺は徐々に再出発。潮音寺の復興に向けた第一歩となりました。
本堂の前にサッカーゴールが置いてあるのはちょっと異質な気もしますが、「慈母観音」という愛称で親しまれ、親子の縁や絆を大切にするこのお寺では重要な役割を持っているといっていいでしょう。
一方で、液状化により地面に沈み込んだままの講堂や、ひび割れた階段はそのまま残っています。10年という月日が経っても完全な修復には至っていない、それほど大きな被害だったのです。
◆被災地の今を伝えたい
震災当時、東北を中心に被災地の様子が連日、全国に報道されていました。しかし、日の出地区をはじめ潮来で起こった液状化の報道は、あまりにも少なかったように思います。
みなさんのなかにも、お寺が被災している写真を見て驚かれた方がいらっしゃるのではないでしょうか?
今年、3月11日に法要を行うだけでなく、「花あかり」という特別なイベントとして全国のみなさんに届けたいと思った理由の1つは、そこにあります。
震災で受けた被害や影響があまり広くは報道されなかった潮来。そこでいまも復興に向けて活動しているお寺の姿を発信し、「知られざる被災地」であることをお伝えしたいのです。
そして、当時いろいろな場所からこのお寺を支援してくださった方々に、感謝の気持ちを届けたい。
◆花にあふれる境内を配信します!
花あかり当日はYouTubeでの生配信を通して全国にイベントの様子が配信されます。様々な場所から、それぞれが被災地に想いを寄せることができるイベントにしていきたいと思っています。
イベント中は境内に多くの花が飾られるため、オンラインで参加していただいてもきっとその美しさを堪能できるはずです。
それでは、なぜ「お寺」に「お花」なのか? 次回はそのきっかけとなった潮音寺とお花の関わりについて、お伝えしていきます。