2022/07/29 09:00

2021年にスタートしたTIMESIBLEプロジェクト。今年も、個性あふれる5人の学生デザイナーがポップアップにて作品を発表します。Designer interviewの第5回は、ファッション高度専門士科2年の澤田まなみさんにお話を伺っていきます。

文化服装学院に入学するまで

___まずは、文化服装学院へ進学した経緯から教えてください。


澤田:文化に入りたいと思ったのは中学校の頃でした。当時は「人よりおしゃれでいたい、自分で服を作りたい」という気持ちでいっぱいでしたね。その頃から服のことを早く勉強したかったので、高校も普通科ではなく家庭科系の学科に通っていました。


___早くから文化に入ることを意識していたことで、良かったことはありましたか?


澤田:技術的な面で言えば、基礎を学んだ状態で文化に入学したので、優位性はあったと思います。知識の吸収も速かったと思いますね。

技術以外の面で言うと、「ファッション以外の分野におけるファッションへの意識」を文化に入る前から持っていたことは、今になって制作の助けになったりしています。


___「ファッション以外の分野におけるファッションへの意識」というのは、どういったことでしょうか?


澤田: 文化に入学する前から、ファッションに関係なく自分の好きなものや自身の経験を、ファッションの視点で捉えてきました。その視点を持ち合わせてきたことによって、アイデア発想に役立つことがよくあるんです。


例えば、私は小さい頃からディズニーが大好きで、実写版の衣装にすごく興味がありました。ディズニーのキャラクターには、二次元のアニメーションで、色やシルエットなど着ているものにある程度固まったイメージがありますよね。そのイメージを実写版の衣装としてどう解釈するか、どうアプローチするかというプロセスが、とても参考になるんです。「二次元のイメージはこの素材を使ったら現実になるのか」、「こういう技法を使ったらこう表現できるんだ」といったような発見がたくさんあります。


また、幼い頃4年間だけ香港に住んでいたことがあるのですが、その時の経験からも影響を受けていると感じます。中国って、独特の装飾や刺繍がすごく美しいですよね。そういった中国独自の表現を幼いながら現地で見た記憶が、まだ感覚として残っていて。現在、私自身の技術で形にするのは難しいのですが、いずれ刺繍や装飾など中国の文化を自分の作品にも取り入れてみたいです。


他にも私は建築に興味があり、影響を受けることがあります。最近ではダニエル・リベスキンドの建築にインスパイアされて、ワンピースを制作しました。

建築と服は、デザインしてから形にするまでの考え方に共通点があるように思えます。どちらも、ある制約があった上でのものづくりなんですよね。建築なら建物そのもののデザインだけでなく、周りの自然や環境とどう共存するかを考えなくてはなりません。服もまた最終的に人が着るので、ある程度決められた形に沿って形になっていきます。そういった面で、建築においてデザインから形にするまでのプロセスが服作りの参考になることが多々あります。


制作した過去作品について

___作品を作るにあたって、さまざまな分野・方向から影響を受けているのですね。それでは、実際に今まで作ってきた作品について教えてください。


澤田:今まで作ってきた作品は、構築的であったりアシンメトリーであったり、モードなテイストを意識して取り入れてきました。例えば文化に入って初めて制作したスカートは、サーキュラースカートとティアードスカートを組み合わせ、ボリュームのあるシルエットにしています。前後4箇所にドローストリングが付いているので、好みの長さに調節してシルエットの変化を楽しむこともできます。



服を仕事にすることのゴール


___さて、ポップアップではどんな服を用意しようと考えていますか?


澤田:具体的にどんな服、という答えではないのですが、「形として捉えきれないものを服で表現する」というコンセプトで作りたいと思っています。人の気持ちやエネルギーだったり、地層などの自然に現れた無作為な曲線だったり。そういった、形として捉えきれないものを自分だったらどのように「服」という形にするか、自分なりに追求したいと考えています。


このようなコンセプトで作ろうと思っているのですが、一方で自分らしさも忘れないようにしなければと思っています。今までの作品では、アシンメトリーで構築的なデザインを意識して制作してきました。このような得意のモードテイストを活かしつつ、新たなコンセプトを取り入れられたらと思います。


___最後に、将来の目標を教えてください。


澤田:服を通して、お客さんを幸せにすることです。自分のブランドを立ち上げるかどうかはまだ決めていなくて、それがゴールだとも考えていません。どこかのブランドに就職してヘッドデザイナーを支える立場であったとしても、とにかく「ブランドの先にいるお客さんを、服を通して幸せにすること、楽しませること」を目標としています。


服って、着る人を構成する大きな要素で、自己表現の一つだと思っているんですよね。人によって着たい服、好きな服は違うので、そういった意味で自己表現のツールだと考えています。

その上で、私が将来仕事として制作に関わった服であったり、TIMESIBLEのポップアップで買っていただけた服は、お客さんが最大限自分を表現できる服として愛用してくれたら嬉しいですね。