2022/08/29 08:00

プロジェクト終了までついに残り2日となりました!

一人でも多くの命を救うため、1年以上にわたり、精力的に関係各所への働きかけを続け、メディアでの発信にも取り組んでこられた小川先生。
ご本人はすでに日本で難民認定を受けながらも、家族が本国で迫害にさらされているアフガニスタンの少数民族出身者の支援も手がけていらっしゃいます。

公的支援がない中で、家族の呼び寄せのために奔走し、小川先生のサポートによりそれが実現しそうにある元留学生のストーリーをお届けします。

『タリバンの迫害におびえる弟や妹を呼び寄せたい』

小川 玲子氏(千葉大学社会科学研究院)

JICAのPEACE奨学金で公共政策を学んだ元留学生のHさんは少数民族の出身です。
Hさんは日本の国立大学で修士号を取得して、アフガニスタンに帰国し、旧政府の官僚として働いていました。しかし、少数民族の出身であったことや、親戚が少数民族のリーダーだったことからタリバンに目をつけられるようになりました。

楽しかった学生時代に戻りたいと現在のつらい心境を語る

ある日、仕事のための資料収集をしているとタリバンに「日本のスパイが何をしている」と言われ、数時間にわたって暴行を受けたと言います。身の危険を感じたHさんは再び日本に留学生として戻ってきていましたが、2021年8月の政変後、家族がタリバンに連行されてしまいました。
しばらくは生きているのかどうかも分からなかったのですが、数か月後に釈放された時には10キロもやせてしまっていました。現在、家族は居場所を頻繁に変えて身を隠して生活をしていますが、とても危険な状態です。

そのため、Hさんは兄弟姉妹の命を守るために日本に呼び寄せることを切望しています。
特に弟が再びタリバンに連行されれば命はないため、Hさんはとても心配しています。また、アフガニスタンで高校を卒業した2人の妹たちは大学への進学の道を絶たれているため、日本で大学に進学することを希望しています。
しかし、アフガニスタン人の家族の呼び寄せは容易ではありません。国連難民高等弁務官(UNHCR)は退避したアフガニスタン人の家族が共に暮らす権利を守るように呼び掛けていますが[1]、日本政府はアフガニスタン人に対する短期滞在ビザの発給を厳格化しているため、留学か就労が決まっていなければ呼び寄せるのはとても難しいのです。

Hさんが家族を呼び寄せるためには留学生として来日する必要がありますが、留学ビザを申請するためには学費を事前に準備する必要があります。長男として兄弟姉妹の命を守りたいと思っているHさんですが、現在の仕事は月に15万円程度の収入しかなく、全員分の学費と渡航費を準備することはとても難しいです。

幸いにもNGOの支援により学費免除と住居を無償提供していただける大学が見つかり、1週間ほど前に合格通知が送付されてきた時には、絶望の淵に一条の光がさし、再び生きる勇気が湧いてきたと言います。

Hさんは今、日本語教育を受けており、大学の研究室のポストに応募をしています。早く自立して家族を支え、日本社会に貢献して、税金を納めたいと言っていますが、そのためには助走期間がどうしても必要です。現在、家族2名を留学生として呼び寄せるための準備を進めていますが、公的支援が一切ないアフガニスタン人元留学生が家族と共に暮らすことが出来るようにご支援をお願いいたします。

また、ウクライナ避難民と同様に学費と住居を無償提供していただける日本語の専門学校や大学があれば、女性を含めたアフガニスタン人たちにも教育と就労の機会を開くことができます。 

退避してきた方たちが尊厳と希望を持って生きられる日本社会になるように、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

[1]  UNHCR, 2021, UNHCR calls on states to expedite family reunification procedures for Afghan refugees, https://www.unhcr.org/news/briefing/2021/10/616935614/unhcr-calls-states-expedite-family-reunification-procedures-afghan-refugees.html アクセス日、2022.6.15.