2022/07/22 07:00

たくさんのご支援ありがとうございます。現在30%を超えたところ。まだまだ道は険しいですが、頑張って行きたいと思います!

今日は、春日山原始林アートプロジェクト実施のきっかけとなった、首切り地蔵大杉のことについて書きたいと思います。

「首切り地蔵」というのは、春日山原始林の南の端にある滝坂の道(旧柳生街道)と春日山原始林内をぐるりと1周できる「春日山遊歩道」の接点にほど近いところにある石仏で、江戸時代の剣豪である荒木又右衛門が試し斬りしたとされる地蔵石仏です。

首の部分で割れている。荒木又右衛門は江戸三大仇討ちのひとつ「鍵屋の辻の決闘」に登場する剣豪

そのお地蔵さんの傍らにあったのが幹周り6m。樹齢は600年とされる大杉です。「滝坂の道」は剣聖の里・柳生へ続く道です。この杉では、柳生を目指す剣豪が一休みしていたかもしれないと想像すると、ちょっとワクワクしてしまう場所です。

人が映り込むとそのサイズがイメージできる。

このスギ、実はかなり傷んでいました。上の写真でもわかるように地際はスポンジのようなもので補修しており、中は空洞。「いつかは倒れてしまうだろうな。」と私たちも思っていました。

2017年6月。私(杉山)は、春日山原始林を楽しむツアーの下見で滝坂の道を歩きました。その日は雨上がりで、しっとりとした森のがとても美しい日でした。カタツムリの子どもや、石畳の上に広がるムクロジの花、雨に濡れた森の美しさが印象的。近々実施するツアーもきっと喜んでもらえるだろうなと想像しながら歩いていました。

昼ごろに首切り地蔵に到着。当時周辺は立ち入り禁止のテープが貼ってありました。なぜなら、首切り地蔵の大杉は、近日中に伐採される予定だったからです。
長年傷んだ状態が続いていましたが、ついに幹に割れが入り、いつ倒れてもおかしくない危険な状態となっていました。春日山原始林を管理する奈良公園事務所では、この木の伐採に向けて周辺のトイレ、首切り地蔵を養生するためのブルーシートを貼っていました。
その日、私とツアーを一緒に実施していたIさんとふたりはそんなことは知らず、立ち入り禁止の休憩舎に座りって「この大杉を見るのもこれで最後なのかもしれないね。」と呑気に話をしていました。

昼食を終えて、ふたたびツアーのルートの下見のため移動し、滝坂の道から地獄谷方面を歩き、ぐるりと回って、春日山遊歩道からの再び首切り地蔵に差し掛かる手前で、

メキメキメキメキメキメキバキメキドシーン!!!!!!

と轟音が鳴り響きました。「どうした!」と駆け出して首切り地蔵を見下ろす場所まで行くと、あの大杉が、私たちが数時間まえにいた休憩舎をぺしゃんこにして倒れていました。
駆けつけた公園管理の方に聞くと「いい方向に倒れてくれた」そうです。トイレや地蔵が壊れると補修が大変。休憩舎であればそこまで大きな被害ではないということでした。(実際、休憩舎はその1年後に再建されました)

この時、私は勝手にこの杉から何かメッセージをもらった気がしました。倒木後、一緒にいたIさんに「これは何かの伝えていかないと!」と興奮気味に話をしていたのを記憶しています。そして、その直後にであったのが。↓

全長450mm程度あるシーボルトミミズ。瑠璃色に光ってとても美しいミミズです。春日山原始林では雨上がりによく遭遇しますが、このサイズはこれまで最大。まるで蛇のように鎌首をもたげて移動して行きました。

不思議な1日でした。私が春日山原始林と深くつながっていることを(勝手に)意識した1日となりました(笑)

春日山は、「何か」を感じる森です。現在「春日山原始林」という表記はされているものの、明治以降は、公園化による一部エリアの伐採や道路開発、近年では、奈良のシカによって植生が衰退したり、ナラ枯れという病気で大木が枯れたりと厳しい状況が続いています。それでも、この森を一人で歩いていると、「何か」を感じることが度々あります。それは、森に生きる生き物ということではなく、「何か」に見つめられている。という感覚です。それは、優しい感じのものではありません、人によってはちょっと「怖い」と感じることもあるかもしれません。この「何か」はきっと里山のような明るい森ではなく、大きな木々に囲まれて自分の小ささを実感するような薄暗い古い森だからこそ感じるものなのではないかと思います。

原始林内のツブラジイ年間を通じて葉が茂る原始林の林内は薄暗い

この首切り地蔵の大杉を使ったアートプロジェクトは、実は今年までとなりそうです。というのも、作品を制作できるサイズの端材がもうそろそろなくなってしまうからです。ただ、今回のこのクラウドファウンディングをはじめ、アートプロジェクトが多くの方に共感をいただくことで、このような仕組を確立したいと思っています。

原始林を歩くとたくさんの倒木に出会います。そのまま朽ちて森の一部に還っていくのが本来の形ではありますが、ほんの一部を搬出して、春日山原始林のことを多くの方に知っていただくことは、森を未来へつなぐための一つの手段として有効だと思っています。

春日山原始林を未来へつなぐ活動は、まだまだ始まったばかりです。多くの方に賛同いただきこの活動が100年200年続くための様々な仕組みをこれから作っていくための第一歩だと思っています。ぜひ、皆さんにもご協力いただき「アートで森を未来へつなぐ」という新しい取り組みを春日山原始林を未来へ繋いでいくための「伝統」にできればと思います。

皆様のご支援、どうぞよろしくお願いいたします。