2022/11/12 12:50

こんにちは、プロジェクト運営者のユグチヨシユキと申します。 本日は工事の準備が進む現場からお届けいたします。

今回のプロジェクトでは、皆様にプロジェクトに関わる様々なことを見ていただいて、どこまでも深く、木や建築やものづくりや街のことを一緒に考えていければと思っています。今日のお話も、木工機械を紹介したい、というものですが、そこからつながるのは建築が立ち上がる仕組み全体の状況であったり、そこから翻って、既存の仕組みからズレたことをせざるを得ない現時点での街の木活用の取り組みの難しさが垣間見える話になりそうです。

手押しかんな

今日紹介する機械は、買ってきたものであれ自分で製材したものであれ、木材を目的のサイズの角材や板材に加工するために必要となる機械です。詳しくは動画で実演していますので、そちらをご覧ください。

自動かんな、刃の交換中

木を加工する現場の代名詞「木屑」は手工具のかんなであったりノコギリであったり、あるいはこうした機械から出るものです。が、いまの一般的な建築現場で出る「木屑」の量はひと昔前とは比べ物にならないくらい少なくなっています。

昇降盤、丸鋸が台に固定されていて昇降させられる

僕が建築の世界に入った20年前には、こういう機械を車に積んでる大工さんが、町場にもそれなりにいたのですが、今はとても少なくなったように感じています。というのは、木をいちいち削ったりかんなをかけたりしなければならない現場が、本当に少なくなっているからです。

無垢の木材がそもそも使われていないのです。木のように見えるもののほとんどは木目がプリントされたシートが貼られた建材です。シート貼りでない木のフローリングなども、薄くスライスした木材(突板とか単板と言います)を表面に貼った合板であることがほとんどです(突板や単板、そしてシート貼りの建材も悪いものではありません。優れている面があるので建築現場を席巻しているのです)。

そうした建材は、たとえばドア+ドアの枠のキットとなって工場から出荷され、現場に届きます。ドアと同じ木目シートが貼られてコーディネートされた窓台やフローリングや巾木やクローゼットやキッチン、収納などなんでも揃っているので、いちいち部材を作らなくても、荷物の梱包をほどいて取り付けていけば良いのです。大工さんは加工場を持たなくなり、現場で木を削る必要もなくなり、車一つで動けるようになっています。

一棟分の木材を産地で買い付け、現場近くの木材屋さんの倉庫を借りて加工したことがありました(15年前)。いま首都圏でこうした加工場を確保している大工さんはとても少なくなっています。

土地のコストが高い都市圏では、大工さんに広い作業場を維持する理由が乏しくなります。作業場を潰してマンションでも建てた方が楽に儲かるかもしれません。僕が昔、作業場を借りたりお世話になった街の材木屋さんも、台風で屋根が壊れたのをきっかけにマンションに建て変わり、ご主人はトラック一台で配達を主業務とする形になりました。

一昔前にはどこの街にも普通にあった「建具屋さん」が減っているのも、街で使われる建具のほとんどが、大量生産品に変わっているからです。ドアなどの建具やフローリングだけでなく、柱や梁といった構造材の加工も、いまではほとんどプレカットと呼ばれる工場での加工によってなされます。昔のように大工さんがノミや玄能を奮って加工するのは、とても特殊なことになっています。

そうした状況のなかにあって、今回の現場では、ひとつひとつ木を削っては部材をつくる作業を行います。どころか、そもそもは丸太からなのです。昔はそれがあたりまえでした。みんなそういう道具やスキルを持っていました。でも今はもう違います。

時代に合わないやり方をすることには、多大な無理が生じます。無理はコストや負担、リスクとなって現れます。そういうことが、嫌になるくらい身に染みているその上であえてするのです。どうすればその無理を、ねじれを、いい形で解消させられるのか? 今の時代に合ったやり方で成立させられるのか、糸口を見つけようと意識しながらやるのです。

ただ昔のやり方にもどるのではなく、今の時代ならではの建築、を目指して取り組んでいくのです。今回のクラファンは、そういう過程を共に歩んでいただき、一緒に考えられる仲間を増やしたいという思いでチャレンジしています。引き続き、長い文章や面倒なたわごとにお付き合いいただければ幸いです。