2022/11/19 06:30

こんにちは、プロジェクト運営者のユグチヨシユキと申します。 本日も、工事の準備が進む現場からお届けいたします。

今回の工事で改装する空間は、おおよそ1/3がフローリング(靴を脱いで上がるスペース)となりますが、そこで使うフローリングももちろん街の木の木材で製作いたします。

世田谷区で伐られたシラカシでの「製材ワークショップ」
堅くて重くて大変でした!

使う樹種はシラカシ(白樫)。街にある樹種の多くは、木材としての使用例が皆無に近い樹種ですが、ケヤキなどと同様、シラカシは古くから木材として認知され広く活用されて来た樹種です。使用例としては、極めて高い強度が求められるところ。金槌や農機具等の柄、あるいは木刀(細くしても折れにくい、衝撃に強い)、そして大工道具のカンナの台(摩耗にも強い)などといったことに使われてきました。

「ぼたん」になっているシラカシ。「ぼたん」については末尾の動画をご覧ください。

緻密で強靭、そして極めて重たい木材です。磨いた表面はとても滑らかに仕上がりますので、家具やフローリングにも良さそうですが、一般的にそういうものに使われているかというとそうでもなく、全くないとは言いませんが、家具や建築で使われている例はとても珍しいと思います。

屋敷林として南側以外に植えられていることがよくありました。常緑の密な葉っぱが北風や西日を防ぎます。緻密で火持が良いので、薪や炭にも最適、日常使う道具の柄などを作るのにも重宝されました。

そんなシラカシですが、今回はフローリングとしてたくさん使います。原木は直径50cmくらいあるものでした。それを追柾(末尾の動画で詳しく解説しています)に製材していたものをよく乾燥させて、慎重に幾度かに分けて削り、フローリングにしようと加工を進めています。

いまや仕上げ加工、最終的な厚み、寸法にして実(凹凸)を作り、面取りし表面を研磨する、といった段階ですが、ここまで来るまでに、乾かした原板から木取(部材を切り出すこと)していったん寝かせ、しばらくしてから一旦サラサラと両面カンナがけをしてまた寝かせ、狂いが一気に出ないように慎重に準備して、いまの仕上げ加工に入っているのです。

「木が狂う」ということについて、その怖さ難しさを知るのに、今に至るまでいくつかの段階がありました。まだあるかも知れません。最初に知ったのは、ヒノキやスギばかりを扱っていた経験を経て、広葉樹を主に扱う家具作りの世界に触れた時でした。広葉樹、特に堅木はヒノキやスギのような感覚では扱えない。狂いも伸縮も強い強い。


でもそれらは、曲がりなりにも原木市場に出されたそれなりに木材として値打ちがあるとプロの目にかなって出て来た木材で、しっかり人工乾燥まで経て来た一定まともな材でのことでした。それでも当然のこととして狂いを無視できない。合板のようには到底いかない。

街の木をいじりはじめて、工事現場から自分で回収して来た丸太を製材し、得られた木材の狂うこと狂うこと。乾燥が大変であること。乾燥させられたと思って作っても、製品になって窓際でお日様にあたっていたらまた狂う、割れる、歪む。でもそれは街の木だからなのではなくて程度の問題。木とは、木材とは多かれ少なかれそういうものなのです。そしてこのことは、とにかくクレームが問題となる風潮の中で、無垢の木材が建築に使われることがなくなっていった主要な要因と言っても差し支えないと思います。

文化財になっている木の建物だって、建物に興味がない人でも素敵!と言うような木で造られた洋館だって、細部を見ればいくらでもアラは見つけられるものなのです。でも他方で、そんなことは瑣末なことと思えるような魅力があるのです。瑣末なアラを潰してその先にいけないということがないように、良いバランスのユルさでものづくりに向かうことも必要なのかもしれませんよね。