2018/05/09 12:07

「銀座オープンまで」 ④〈銀座デビュー!シナトラは特別なお酒〉




「T社長の紹介で参りました、ぜひ宜しくお願い致します」

T社長から頂いた名刺を渡し、軽い挨拶を済ますと会員制の重い響きとは真逆のとても親切で接しやすいYさんが名店Cの店内へ案内してくれました。

名店Cは銀座地区で元々キャバレーを経営していた老舗だが今はレストラン・バーといった業態になっているようでした。本格的な食事から軽食、お酒は豊富な種類で何よりサーブしてくれる女性スタッフたちが美女揃い、こういう業態東京の他の地域には見られないですよね。


「Tさんお元気でしたか?」
Yさんはニッコリとした笑顔で話しかけてきました。

「ええ、というかつい先日渋谷の寿司屋で隣の席に座って盛り上がって飲んだというだけの縁でして…」

わたしはバツが悪そうに答える、いったいそんな軽い縁だけで銀座で数十年続く名店に来てしまって大丈夫だったのだろうか?少し不安を抱えていました。

「大丈夫ですよ、T社長の人を見る目はすごいですからね、拝見させて頂いた名刺にも自筆で『よろしく』とありましたし、今日は遠慮なく飲んでいって下さい」
Yさんはまるで親戚のおじさんのように優しい雰囲気で歓迎してくれました。


「なるほど、銀座に出店ですか…」

ビールを2杯、とても品の良い赤ワインを1杯飲んで酔いがまわって話はいよいよ本題に。

「そうなんです、八丁目に感じの良い物件がありまして、そこでお店をやりたいものの、いまいち銀座という土地に縁故がなくて自信がないんですよ、だいたい銀座で飲むというのも実は今日が初めてでして、今日が銀座デビューと言う次第でして…」

藁をもつかむ思いである。

「確かに銀座は難しい地域とも言われていますが、入り込んでしまえばこんなに温かい街はありませんよ、奥ゆかしくて良い街ですよ。それに縁がない縁がないとおっしゃいますが、もう既に縁なら今日できたじゃないですか?私は町田さんのお店完成したらぜひとも行きますよ、少なくともこの銀座であなたの味方は私一人はいる、銀座デビューのお店にうちを選んで頂いてありがとうございます…」

Yさんの心強い言葉が響く、こんなにも人として大切にされる接客を他の街で受けたことがなかったわたしの気持ちは強く、そして固くなっていった。
よし、人を大切にする温かいこの街で一勝負してみようじゃないか!古き良き銀座のスタイルを勉強させてもらおう!


いつの間にかYさんからのサービスで出てきたジャックダニエルのシナトラセレクションのウィスキーが深い酔いを誘い、わたしの決意を固める勢いをつけてくれました。

この日からジャックダニエル、シナトラセレクションはわたしの中で特別なお酒になりました、ありがとうございますYさん。