展覧会情報
西川礼華・松井亜希子 二人展
生死生 IKISIIKI - The Scenery of Vacuity
会期:2025年4月30日(水)ー6/22(日)
会場:青岸寺
〒521-0012 滋賀県米原市米原669
https://seiganji.org/
冊子掲載内容
・展覧会風景と作品の写真(撮影,デザイン: 豊永政史氏)
・展覧会評(吉岡恵美子氏)
・展覧会についての文章(青岸寺住職,作家両人)
・英訳文章
・ご支援者様の氏名(クラウドファンディング終了後に掲載の有無を確認いたします。)
【各人の略歴はページの最後に記載しております。】
展示作家自己紹介
西川礼華は2013年に京都市立京都市立芸術大学大学院日本画専攻を修了します。自然と人間の境界に漂う不可視のものを捉える方法を模索しながらテキスタイルと絵画を制作しています。
松井亜希子は2010年に京都市立京都市立芸術大学大学院版画専攻を修了します。自然の風景の中に身体との相似形を探し出し、風景と身体が重ね合わされた新たな風景を銅版画で制作しています。
私たちは大学卒業後、共通の友人を介して知り合い、お互いの作品や制作過程を知り、それぞれの作品同士が共鳴する部分があることを発見し、いつか一緒に展示をしたいと思うようになりました。
西川の作品。 「skavla」1800×1300 4点組 2021 岩絵具,紙本彩色
西川は自然と人間の境界に漂う不可視のものを捉える方法を模索しながらテキスタイルと絵画を制作しています。「一度滅びを見たものが放つ新たな美しさ」を表現することを一貫して追い求めてきた作者は、聖骸布の存在をきっかけに花を埋葬する制作方法に辿り着きました。育てた花を写生した後、布に包み土に埋葬。数ヶ月後出土した布には花の痕跡が残り、それを”自然界の言語”と見立て、雨、霧といった自然現象の写生と組み合わせ岩絵具で描いています。
松井の作品。「MIRRORS-Ocean」180×180cm 2023 銅版画に手彩色
松井は自然の風景の中に身体との相似形を探し出し、風景と身体が重ね合わされた新たな景色を銅版画で制作しています。
鏡のような銅の板の上に樹皮の形、川・木々・葉脈・根が織りなす分岐のパターンや水面に映る波紋の模様、山岳地系のフラクタル性などを自身の腕のストロークや筆跡に置き換え身体感覚を拡張して描いた線を銅の版に刻んでゆきます。この時、塩化第二鉄で銅を腐蝕させ一旦自然の作用に委ねます。そうやって出来た溝にインクを詰めて紙に刷り取ることで作品は完成します。
このプロジェクトで実現したいこと
展覧会とは一定期間経てば消え去ってゆくものです。会期が終了すれば、作品たちはバラバラになり、展覧会場は次の展覧会を迎え入れる場となります。
今回の展覧会は私たちにとって特別なもので、緑芽吹く今の季節に生と死をテーマとした展覧会を青岸寺でできたことに誇りを持っています。是非、この展覧会の風景を収めた冊子を刊行したいと思います。
展覧会冊子とは展覧会に新たな視点を導入し、編集し直す作業でもあります。
冊子には、展覧会評、会場風景、作者のステイトメントを掲載予定で、展覧会に来場した方は再び体験し、展覧会に来れなかった方は新たに体験できる内容となります。
今回、展覧会評を執筆いただくのは吉岡恵美子先生です。松井は吉岡先生が企画された2013年の「内臓感覚ー遠クテ近イ生ノ声」(金沢21世紀美術館)に大変感銘を受け、自身の制作にも影響されています。自身の身体に記憶されている太古の記憶を呼び覚ますようなこの展覧会では、解剖学者・三木成夫の言葉を手がかりに、作家達、作品たちを見事に繋ぎ合わされています。この展覧会を経験した後では、展覧会前の自分とは別人になるという衝撃がありました。吉岡先生に執筆していただけることになり、大変光栄に思っています。吉岡先生がこの「生死生」展をどのような言葉で紡いでくださるのか、今からとても楽しみです。
今回撮影とデザインを担当してくださるのは、豊永政史先生です。豊永先生は数々の展覧会冊子や美術系の本を手掛けておられる大変素晴らしいデザイナーです。普通、会場撮影とデザインは分業制で別の人が担当しますが、豊永先生は撮影もデザインも手がけられるので、会場風景をどのように切り取り、どのようなショットが必要かを撮影の段階から判断します。このように会場撮影とデザインが密接に絡まり合ってゆくので、大変素晴らしい本が出来上がるのです。豊永先生は「内臓感覚ー遠クテ近イ生ノ声」の図録も手がけられています。
今回DMも豊永先生に手がけていただきました。展覧会を見事に表現していただき、改めて紙媒体の良さを実感できるものとなっています。
是非、この展覧会を冊子として刊行し、多くの方に手に取っていただきたいです!バイリンガル表記にするため、翻訳された英文も掲載します。
プロジェクト立ち上げの背景
まずはこの展覧会が開催に至るまでの流れを書きたいと思います。
青岸寺には国指定の名勝庭園があり、美しい景観を臨みながら過ごすことができます。書院は襖が開け放たれ外と空間を共にするような構造であり、庭園の息吹を纏った独特な空間になっております。
このような素晴らしい場所で展示がしたいと企画をし、青岸寺と作家の共通点を探り構想を練る中で、ご住職から文章を賜りました。
その中で、”坐禅も作者たちの制作過程も、「生」→「死」→「生」という流れを辿る”と表現されており、場所と作家の親和性の高さと、展覧会開催の意義を感じ、企画コンセプトがより強固なものとなりました。
そして、平和堂財団をはじめ多くの方々の協力を得て、展覧会開催を実現することが出来ました。
メイン会場となる書院は時間帯や天候によって全く違う表情になり、作品も様々な見え方、感じ方となります。この場所、季節、そして作品たちによって一期一会の体験をしていただける空間になりました。
たくさんのご協力のもとに実現した、この素晴らしい空間を冊子に残したいという思いから、このプロジェクトを立ち上げました。
展覧会風景 撮影:西川礼華
現在の準備状況
展覧会の撮影・冊子デザインをデザイナー豊永政史先生に、
冊子に掲載する文章を青岸寺住職・永島匡宏氏と吉岡恵美子先生に依頼しました。
いずれもご承諾をいただき、展覧会終了後、冊子の制作に取り掛かります。
支援金の用途について
デザイン・印刷費:50万円
執筆費(住職・永島匡宏氏、吉岡恵美子先生):8万円
翻訳費:7万5000円
リターン材料費:3万5500円
発送費:7万円
手数料(17%+税):13万9500円
リターンについて
完成した冊子と、二人の作家による作品などをご提供いたします。
スケジュール
6月 展覧会終了
7月 クラウドファンディング終了
8〜9月 冊子デザイン・印刷、作品制作
10月 発送準備
11月 冊子完成次第リターン発送
最後に
青岸寺の庭園は全国的にも稀有な苔の枯山水です。大雨により苔庭が湖のようになる非常に珍しい「池泉庭園」でもあります。
会場撮影時は、年に数回しかない池泉庭園の姿となっており、非常に貴重な光景と共に展覧会をお楽しみいただける冊子になる予定です。
撮影:花戸麻衣
私たちはこの展覧会を通して、連綿と繋がれてきた歴史や生命の存在を強く感じ、この場所や人々に巡り会い展示ができたことをとても光栄に思っています。同時に今ここでしか作り出せない光景を、もっとたくさんの方に見ていただき、お手元で何度も感じていただきたいと思いました。
ある文章や写真に触れることで発見や救いを感じることがあります。
この風景や文章を残し、誰かにとってそんな経験に繋がる一冊になってくれることも強く願っております。
この展覧会を収めた冊子の刊行にお力添えをいただけましたら幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
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「生死生 IKISIIKI - The Scenery of Vacuity」展覧会冊子
[展覧会評]
吉岡恵美子 (京都精華大学 教授)
2014年まで金沢21世紀美術館でキュレーターとして勤務。企画した主な展覧会は「FATHOM—塩田千春、金沢寿美、ソー・ソウエン」(2023)、「京都精華大学ギャラリーリニューアル記念展:越境—収蔵作家とゲストアーティストがひらく視座」展(2022)、「アスピレーションズ—8つの扉」(2018)、「亡霊—捉えられない何か」(2016) 、「本の空間—ざわめきのたび」(2015~16)、「知らない都市—INSIDE OUT」(2015)、「内臓感覚—遠クテ近イ生ノ声」(2013)、「高嶺格:Good House, Nice Body」(2010~11)、「我が文明:グレイソン・ペリー」(2007)、「Alternative Paradise ~もうひとつの楽園」(2005~06)など。大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 枯木又プロジェクト(2015、18、22)、瀬戸内国際芸術祭高見島プロジェクト(2016)の企画協力をつとめる。美術館連絡協議会カタログ論文賞「優秀論文賞」受賞(2007)。新聞雑誌等への展覧会レビュー執筆等、批評活動も行う。
[撮影・デザイン]
豊永政史 (京都精華大学 教授)
現代美術等の文化領域を主たる活動の場とし、展覧会の広報物、図録、出版物のデザイン制作や、企業とアーティストとのコラボレーションワークのサポート等、デザインや写真を通して社会とアートとの接点をつくる仕事に携わる。
主な仕事:「ヤノベケンジ作品集<新装版> YANOBE KENJI 1969-2005」青幻舎、「國府理作品集 KOKUFUBOOK」青幻舎、「空中空 宮永愛子」青幻舎、「KOHEI NAWA-SYNTHESIS-」赤々舎、「内臓感覚—遠クテ近イ生ノ声」赤々舎、「モニークフリードマン」赤々舎、「野村仁 変化する相―時・場・身体」国立新美術館など。
[掲載文章]
曹洞宗青岸寺住職 永島匡宏
西川礼華 (本展覧会作家)
京都市立京都市立芸術大学大学院日本画専攻を修了。近年の展示・主な受賞歴、平和堂財団芸術奨励賞/滋賀県(2025)、「霧と分身 」genzai/滋賀県(2024)、「音楽と絵画でつづるおうみの民話」伊吹薬草の里文化センター(2024)、「学園前アートフェスタ」大和文華館文華ホール(2024)、「みくまり」galleryサラ/滋賀県(2023)、「Soft territoryかかわりのあわい」滋賀県立美術館(2021)、「第一回千住博日本画大賞展」銀座三越伊勢丹(2020)、滋賀県次世代文化賞(2016)
松井亜希子(本展覧会作家)
京都市立京都市立芸術大学大学院版画専攻を修了。近年の展示・主な受賞歴、平和堂財団 芸術奨励賞受賞者による「第29回新進芸術家美術展」(2023)、読売新聞社賞「京都府新鋭選抜展」(2023)、「水鏡にうつる森」軽井沢現代美術館(2022)、AOMORI PRINTトリエンナーレ 優秀賞(2014)、平和堂財団芸術奨励賞(2013)、第18期 財団法人佐藤国際文化育英財団 奨学生(2008)
[翻訳]
石橋朋子(LA在住、主な翻訳「STAR WARS FAQ『スターウォーズ』のすべて」キネマ旬報社)
撮影:花戸麻衣
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