2016/07/24 11:00

(吉備文化財修復所で修復された阿弥陀如来坐像)

 

株式会社文化財マネージメントの宮本です。

今回のクラウドファンディングで、仏像の修復を担当していただく「吉備文化財修復所」代表の牧野隆夫さんから、以前の投稿に引き続きコメントをいただきましたので掲載します。

 

②建穂寺の今までに修復した仏像について

吉備文化財修復所では、現在までに建穂寺の仏像4体を修復しました。
いずれも木造の不動明王立像(鎌倉時代/静岡県指定文化財)、不動明王立像(平安時代/静岡県指定文化財)、阿弥陀如来坐像(鎌倉時代/静岡市指定文化財)、大日如来坐像(平安時代/静岡市指定文化財)です。

 

これらは県や市の指定文化財になっており、公的な助成を受けられましたが、それでも管理する町内会には半額から4分の1程度の自己負担金が必要でした。
それぞれに修復時のエピソードがありますが、ここでは阿弥陀如来坐像について簡単に述べてみます。

 

このお像の修復前は写真のように、台座は蓮華しか残っておらず、光背もありませんでした。


(修復前の状態)

修復後の写真と見比べた時、ずいぶん変っていることにお気付きでしょう。

 
(修復後の状態)

台座や光背を新しく造った?
いえ、実は安置されている壇の下の戸棚には、仏像に関連する部材がバラバラになったまま沢山保存されていたのです。


(棚下から出て来た数百点の壊れた部材)

その中からこのお像に関連するものを選び出し、復元しました。


(台座の復元 新しい木の部分はすべて復元箇所)

台座は段ごとに小さな材料の寄木で造られ、積み重ねるような構造になっています。
残されていた部材は全体の6〜7割でしたが、さいわい全ての段ごとに何かしら残っていたため、完全な復元が出来ました。
光背もこの台座のホゾ穴に当てはまるものが残されていました。

 

このように、お像だけでなく150年の間護り続けられていた台座や光背も、当時の姿に修復し整えることで、拝観する方々はこのお像が安置されていたお堂の内部の様子を想像し、「幻の寺建穂寺」の在りし日の全貌により強く思いを寄せることができるのではないでしょうか。