2016/08/07 20:03

(牧野さんの長年にわたる仏像修復についての取り組みを記した著作)

 

株式会社文化財マネージメント宮本晶朗です。

 

今回のクラウドファンディングで、仏像の修復を担当していただく「吉備文化財修復所」代表の牧野隆夫さんから、以前の投稿に引き続きコメントをいただきましたので掲載します。

 

 

③地域にある仏像を修復・保護する意義

日本全国には無数といえるほどの仏像があります。
大半は信仰対象として寺院に祀られ、神像として神社にあるもの、歴史的資料・芸術作品として博物館・資料館に展示されるものなど、規模の大小もあって管理状況は千差万別です。

 

なかでも明治の神仏分離以降、建穂寺のように消滅し、その遺物である仏像を小さなお堂に移し、地区で管理しているところは日本全国少なくありません。
管理者からは、像の由来すら不明になっていることや、細々と宗教行事に用いてきたものの地域社会の変化から、その保存に苦慮していることを耳にします。
地域のシンボルとして伝えられて来たとはいえ、より良い維持管理のための基本調査や保存修復は不可欠であり、外部からの支援なくしては困難です。

 

管理者以外の多くの関心を集めることは、日常的に関っている地域の方々の連帯を高め、気持ちの上で励みになり継承のモチベーションも上がります。
さらに調査や修復で得られた情報が分かり易く地元に還元されれば、元の寺院規模などを想像し、歴史の一端を解き明かすきっかけともなり一層興味が湧くでしょう。
このように仏像修復は、単にものを直すことに止まらず、像そのものから地域の歴史を再考し、地域社会を再構築する機会ともなります。

 

身近な過去の遺産を未来へ伝えることには、費用や労力がかかりますが、安置空間の整備・例祭などへの積極的な関わりを通じることで、仏像はその地域の精神的なシンボルとなり、単に一宗教の遺物を超えた力を我々に与えてくれます。
建穂寺地蔵尊の修復に向けたこの動きが、現在の観音堂整備や旧観音堂跡地の公園化につながり、これらがひとつの動線を形成し、将来的に地域の新しい財産になってくれることを願っています。

 

神仏分離に関る仏像の状況については、拙著『仏像再興』(山と渓谷社刊行)をご覧下さい。

以下に紹介しているのは、神仏分離以降150年間里人に護られ続けて来た仏像群24体を新しい保存の場に移した保存継承の一例です。
「かんなみ仏の里美術館」のホームページ