2017/06/14 17:53

(修復中の地蔵菩薩像。新たに制作している台座なども含めた全体)

 

株式会社文化財マネージメントの宮本です。

 

地蔵菩薩像の修復も終盤を迎えています。
今回は地蔵菩薩像の新たな発見についてです。

 

4月のテレビ静岡でのニュースでも明らかにされたのですが、実は像の頭部だけは他の部分よりも古いことが明らかになりました。
吉備文化財修復所の牧野さんの見解では、鎌倉時代(13世紀頃)に制作されたものとのことです。

 
(不要表面を除去し虫穴などを埋めている、修復中の頭部)

 

修復する前にも、頭部だけは状態が悪く損傷が大きいのが気掛かりであったところでした。
以前に活動報告で紹介した「不要表面除去」の修復作業において、過去の修理で塗られた絵具や漆の層を剥がしました。
そして、木部の表面が出てきて本来の形が見えてくると、形の上から13世紀頃の制作であることがわかったのです。

 

地蔵菩薩は、胎内に書かれている墨書きから、慶長19年(1614)に仏師「足立三郎三位」が制作したものと理解されてきましたが、どうやらこれは修理をしたときの墨書きのようです。
つまり、13世紀に制作された像がなにかしらの事情で損傷し、頭部以外は失われるか極めて悪い状態になりました。
その後、慶長19年に足立三郎によって修理され、その際に制作当初の頭部は再利用した上で新たに体や手足を作って現在の形に整えられた、という経緯があったものと考えられます。

 

一般に、仏像の胎内には仏師の名前が書かれていることがありますが、それが制作した仏師なのか後年修理した仏師なのかは、なかなか判断が付かない場合があります。
今回もまさにそうした事例といえます。
修復することで初めてわかってくる貴重な情報の一つですね。