10年後も美味しいワインを飲もう!ぶどう農家を育て応援するファンクラブ第一期募集

キャンプファイヤー ふるさと納税のバッヂ

岩手を代表するワイン産地・花巻市大迫町。しかし、ぶどう農家の高齢化・過疎化が深刻で、10年後にはこの町の核であるぶどう栽培、ワイン醸造の文化が途絶えかねません。後継者を育てるチャンスは、今しかありません。 ワインを楽しみながら、町の未来を一緒に守るファンクラブの仲間になってください!

現在の支援総額
282,000円
支援者数
18人
募集終了まで残り
終了

現在9%/ 目標金額3,000,000円

9%

このプロジェクトは、ふるさと納税型クラウドファンディングのAll-In方式です。
目標金額に関わらず、期間内に集まった金額がファンディングされます。

このプロジェクトは、2018-09-03に募集を開始し、18人の支援により282,000円の資金を集め、2018-10-21に募集を終了しました

第一回ぶどうツアーを開催しました!

9月15-16日に第一回ぶどうツアーを開催しました!ちょうど、ぶどう農家のみなさんは収穫最盛期で大忙し!ツアー参加者もしっかり作業のお手伝いをしつつ、ぶどうをつまみぐいしたり、夜は昼間に収穫した品種から作られたワインを楽しんだり。ワイン用のぶどうが身近に感じられる体験となりました。幸いお天気にも恵まれ、気持ちの良い2日間でした。横浜から参加した学生の島津さんがツアーの様子をまとめてくれたのでご報告します!

 

【岩手・大迫 ブドウ農家を訪ねる】

岩手の内陸に位置する大迫(おおはさま)は、フランスのボルドーにも似た、降水量が少なく昼夜の気温差が大きい気候やブドウ造りに適した土壌ということで、ワイン用や生食用など多種多様なブドウが多く育てられています。私たちはここで新規就農した3件のブドウ農家さんを訪ね、お話を伺いました。

【ぶどう農家Fさん】

まず最初に訪れたのは、Fさんというブドウ農家の方です。Fさんは大迫の出身で、去年から、地域おこし協力隊として花巻に来ていた鈴木寛太さんと共同の畑で、ブドウを育て始めました。私達はFさんの収穫の作業をお手伝いしながら、詳しくお話を伺いました。

現在育てているのは、「ロースラー」というワイン用のブドウ。これは、日本全国でもこの地域でしか作られていない、とても珍しい品種です。ワインにすると、とても濃い色合いになり、果実味と渋味が感じられるしっかりとした味わいが楽しめるのだそう。今回はそのロースラーの収穫のお手伝いということで、軍手とブドウの収穫専用のはさみをお借りし、沢山生っているロースラーを1つ1つとっては、腐っていたり割れてしまっていたりする実を取り除く作業を行いました。

合わせて25列もある広大な畑で、私達がお手伝いさせていただいたのはたった2列。それでも、午前中から作業を始め、終わる頃には日が傾き始めていました。聞けば、だいたい収穫には2人がかりで一週間から10日ほどかかり、その間、朝8時30分から夕方17時まで、ひたすらブドウをとり続けるのだそうです。このブドウを全て、たった2人で収穫し、出荷する…。気が遠くなるような作業です。それでも、Fさん達は機械で収穫する事を選択せず、あえて手作業で、汚い実を1つ1つ取り除く手間のかかるやり方を選ぶそう。そうする事で、ワインの雑味が減り、よりおいしいワインが出来上がるのだそうです。

ワイン用のブドウは、一般的に、ワイヤーを張ってそこに蔓をはわせる垣根という仕立てを行い栽培されます。そのため、蔓が地面と平行に長く伸びていくのが特徴的です。Fさんの畑では、これに雨除けのビニールをかけています。ブドウにとっては雨が大敵であり、雨が降り続く事で木が水分を取り込みすぎてしまい、実が割れたり、腐ったりする原因になるためです。このビニールは毎年付け替えられるそうですが、その作業はとても手間がかかり大変なのだそう。Fさんも「本当は(かける作業に)3人以上は必要」とおっしゃっていました。場所によっては、手間やコストの面から、このビニールをかけずにブドウを栽培する所もあるそうですが、雨による害を少しでも減らすためこのビニールをかけているのだそうです。

また、ブドウは一度病気にかかるとその感染力がとても高く、すぐに広がってしまうため、農薬の散布が欠かせません。海外ではドローンなどを使って農薬を散布する事もあるそうですが、ドローンの積載量に限界がある事、雨除けのビニールがあるため上からの散布ができない事等から、Fさん達は農薬を手作業で散布されているそうです。これだけの手間をかけられて育ったロースラー、絶対においしいワインになること間違いなしですね!

そんなFさんの今後の夢は、「リースリング・リオン」と呼ばれる品種の白ブドウを育てる事。これもロースラーと同じくワイン用のブドウで、リースリングという品種と、甲州三尺という品種を掛け合わせて作られた交配品種です。ワインにすると、グレープフルーツやリンゴのような柑橘系果実を思わせる清涼感と、フレッシュな果実味が楽しめるのだそう。大迫で先駆けて作られた品種であり、比較的栽培が簡単である事からも、ぜひ育てたいと意気込んでいました。またもう一つの夢は、ブドウ栽培に興味を持つ人がもっと増える事。大迫のブドウ農家は、初代の方がほとんどで、それを継ぐ後継者がいないのが現状です。自分達が育ててきたブドウを残すためにも、また、大迫のワインをもっと多くの人に知ってもらうためにも、気軽に畑を訪れ、そこでの作業を手伝ってもらえるような取り組みを作っていきたい。それがFさんの、今最も強い願いです。

 

【ぶどう農家Bさん】

次に訪れたのは、去年からブドウを育て始めた、Tさんの畑です。花巻出身であるTさんは、CA(キャビンアテンダント)として働いて世界各国を飛び回り、様々なワインを飲んだ事がきっかけでワインスクールに通い、ソムリエの資格を取得します。しかし、出来上がったワインを飲んでうんちくを言うだけではなく、実際に作ってみたいとの思いが湧き、故郷花巻でブドウ農家として就農したのだそうです。

Tさんの畑のブドウ畑には、ロースラーをはじめとして、3~4種類ほどの品種のブドウがあります。そのどれもが、Fさんの畑とは違いまだ苗木の状態です。

私達はそこで、畑の草刈りと蜘蛛の巣をはらう作業をお手伝いさせていただきました。蔓を絡ませるワイヤーの部分にすぐ蜘蛛が巣を作ってしまい、顔や手にかかって作業がやりづらくなってしまうのが高橋さんの悩みなのだそう。確かに畑のあちこちにとても大きな蜘蛛が巣を作っており、それを1つ1つ木の棒ではらっていくのは、蜘蛛が苦手な私にとってはなかなか勇気のいる作業となりました…。

蜘蛛自体がブドウに直接害を及ぼす事はありませんが、また巣を作られては困るので、蜘蛛達には息絶えていただきました。

Tさんのブドウの苗達は、あと2年ほどで実がなるそうです。今から2年後が待ち遠しい!

 

【ぶどう農家Sさん】

最後に訪れたのは、1年半ほど前からブドウ農家として就農したSさんの畑です。エンジニアとして働いていた会社を早期退職し、まだ元気なうちに新しい事を始めたいとの思いでブドウを栽培し始めました。大迫には3年前から住みはじめ、1年半ほど地元の農家の方に作り方を教わったそうです。Sさんの畑では、ワイン用の他、生食用のぶどうも数多く栽培されており、その品種は実に様々。取材をしながら、親切なSさんに促されるまま、様々な品種のブドウを食べさせていただきました…!

「ふじみのり」

生食用高級品種として有名。一粒一粒実が大きくて形がとてもきれい!味もとっても甘くておいしかったです。この大きな粒をつけるため、実がなった段階で上の方の実を取ってしまうことで、下の方の実に栄養が行き渡りより大きい粒になるのだそう。なので実際に出荷される際のふじみのりは、全体の1/3ほどの実なのだそうです。ちょっと意外!

「ツヴァイゲルトレーベ」

ワイン用のブドウ。もとはオーストリアで開発された品種で、生食用のものよりも糖度が高いのが特徴です。食べてみると本当に甘くて味が濃い!この品種は、日本では岩手や北海道などの涼しい場所でしか栽培されていない、珍しい品種なのだそうです。

「ナイアガラ」「レッドナイアガラ」

白ブドウがナイアガラで、その変異種で果皮が赤いのがレッドナイアガラ。それぞれ、白ワイン、ロゼワインによく使われるそうです。この品種はとても香りが強く、Sさんの畑一面、このナイアガラ達の良い香りに包まれていました。食べてみても、口の中で香りが広がり、とても幸せな気持ちになりました…!

「アーリースチューベン」

生食用のブドウ。色が濃く、赤というよりは黒に近い見た目です。その見た目通り、味も濃くてとてもおいしい!なんでも、ブドウを食べにくるハクビシンはこのアーリースチューベンばかりを好んで食べるのだそう。食べさせていただくと少しハクビシンの気持ちが理解できました(笑)。

 

また、Sさんの畑では、ある程度成長した樹の枝に別の品種の枝をつなげる「接(つ)ぎ木」が行われています。そのため、1つの樹に複数の品種がなっている、不思議な光景が見られました。この接ぎ木を行うことで、苗から育てるよりも効率よく、性質の良い様々な品種のブドウを育てる事ができるそうです。

また、ブドウの樹は実はとても生命力が高く、放っておくと枝が伸びすぎたり、葉っぱが茂りすぎてしまったりして、日光が均等に当たらず実の育ちがまばらになってしまうそう。これを防ぐため、実がならない冬の間に枝や葉を剪定し、日光が下まで行き渡るようにする作業がとても重要だそうです。ブドウ栽培には様々な工夫が欠かせないんですね!

Sさんが大迫でのブドウ栽培に興味を持ったきっかけは、花巻市で行われていた「グリーン・ツーリズム」という、自然・文化・人との交流を楽しむ滞在型の活動に参加した事。自分と同年代の人が多い事、土地を貸してもらえる事に魅力を感じ、ここでブドウを栽培しようと決意しました。この決断に、東京に住む奥様は最初驚かれたそうですが、今では収穫の作業を手伝う等、ブドウ栽培に協力的になってくれているそうです。そんなSさんが今気になっているのは、自分の後を継いでくれる人の存在。Sさんのように、岩手県外から大迫のブドウ栽培に興味を持つ人が増えるように、道具や土地を安心して貸す事ができる仕組みができればいいとおっしゃっていました。

今回取材した3件のブドウ農家さんに共通していたのは、自分たちの育てたブドウを通して、大迫、そして岩手を盛り上げたいという強い思いです。大迫で作られたワインは、現在首都圏ではほとんど流通していません。農家の方がこれだけ愛情をかけて育てて作ったワインが、岩手以外の場所であまり知られていないのはとてももったいない事だと感じます。大迫のワインや、使われているブドウを育てている人達の事をもっとPRしていく取り組みやイベントを進める事が必要であると感じるとともに、自分自身、そういったイベントに積極的に参加する事でその魅力を広めていきたいと感じました。取材させていただいた農家の皆様、ありがとうございました!

文・島津日向子

写真・R45design 佐藤健