2019/05/16 22:56

山崎です。

こども六法の編集作業は順調にイラストの確定と抄訳原稿の作成を終え、いよいよ監修の段階に入っております。
法律というセンシティブな題材を扱う、しかも学校に置かれる教材の一つとなることを目指す本書にとって、その内容の正確性を担保するという作業は非常に重要です。一方で、ここが一番の難関であります。


こども六法は各法令についてしかるべき専門家の方に監修をお願いし、正確性と読みやすさの間でギリギリのバランスを取るべく、日々意見交換を繰り返しています。しかし、このような意見交換を可能とする段階の原稿に仕上げるためには、やはり法律学の専門家が一人もいない編集チームでは困難を極めました。

そこでこども六法プロジェクトは、これまで小中高生に対する法教育の実践を行ってきた法科大学院生を中心とする連合会である日本学生法教育連合会(USLE)に協力を仰ぎ、専門家の監修に先立つ監修、「プレ監修」を行っていただきました。

今回はUSLEの方から、こども六法のプレ監修を通じての感想をお送り頂きましたので、ご紹介させて頂きます。


■こども六法の校閲を通して

 今回、こども六法の校閲にあたって留意したことは、条文を平易な表現に言い換えることで、原文とは異なる法解釈にならないか、という点です。なぜなら、法律に用いられている文言は、私たちが日常生活で使用しているものであっても、異なるニュアンスで用いられている場合が少なくないからです。そのため、条文を平易な表現に言い換える際には、その条文の文言に込められた意義や概念を変えることなく、かつ、それを正しく表現する必要があります。この作業は非常に骨の折れるものではありましたが、細かな法解釈について法科大学院生同士で議論し合うことを通して、私たちの知識を深める良い機会にもなりました。

 最後に、こども六法が、子どもたちが自分の身に起こった問題や周囲の状況を自分自身の力で変えたいと考えた際に、法律がその問題を解決する手段の一つであることを示すきっかけとなり、子どもたちにとって(心の)よりどころとなる本の一冊になることを切に願っています。加えて、今後、私たちが法教育授業や模擬裁判を行う際に、大いに役立つ教材になると確信しています。

■日本学生法教育連合会(USLE)について

本連合会は、法教育の担い手として期待されている法科大学院生・大学院生・大学生・法教育団体等の相互の交流と協働により法教育活動を実践し、その活動を通じて得た法教育情報・ノウハウを学校や団体等の垣根を超えて共有・集約し、これを次世代へと継承することによって、法教育の普及・発展に寄与するとともに、社会に貢献することを目的として2016年に創立されました。2018年度の主たる活動としては、慶應義塾大学での勉強会、岡山大学・金沢大学との意見交換会、都立高校、中学校や小学校での出張授業、法教育祭などを行いました。法科大学院生などの学生が小中高生に法教育を行うことについて否定的な意見もありますが、私は双方向にとってメリットがあると考えています。学生らは小中高生と年齢が近いため、生徒が法教育授業に親しみやすくなる点、将来、私たちにとって必要となる、人にわかりやすく法律関係や事実関係を伝えるという能力を高めることができるという点で、有益であるからです。

現在、法教育授業の依頼は増加傾向にあります。これからの法教育の普及・発展のために私たちも精進していきたいと思います。


こども六法の完成に向けて、多くの専門性と熱い想いが結集しています。
出版までのもうしばらくの間、引き続きのご声援とご注目を宜しくお願い致します。