▼御挨拶

仁徳期に百済から国内へと伝播した鷹狩用の猟犬=鷹犬(タカイヌ)を育てるドッグトレーニング法は、江戸時代後期に到るまで犬牽(イヌヒキ)と呼ばれる職人集団によって継承されつつ、独自の変化を遂げていきました。それは西洋に多々見られる高圧的に犬を訓練するといったドッグトレーニングとは一線を画す、犬の自尊心を守る=自然で野生的な精神を伸ばし維持するという世界的に見ても大変貴重な飼育法へと成長していった歴史を表しています。

更に彼等は鷹犬を猟犬として活躍させるだけでなく、鷹犬の自由な行動を狩場や庭にてクライアントである上流階級に【観せる】舞台人としての顔を持っていました。それは犬牽文化が演劇史から見ても始原の風景を残す、大変貴重な文化だったことを証明しているのです。

残念ながら犬牽の継承は江戸時代の終わりと共に途絶えましたが、高校時代より鷹匠修行に励みながら狩猟文化の研究者としても活躍する荻島大河(オギシマタイガ)により宮内庁保管の古文書を元にした復元作業が2014年より開始されました。実際に当時の飼育法を美濃柴犬、古文書にも記されている朱い被毛を持つ岐阜県の柴犬に施すなどの準備を経て、ついに2018年、未来永劫犬牽文化が残っていけるよう広報活動を行う山政(ヤママサ)流として再び現代に蘇ることが叶ったのです。


◯現在飼育中の鷹犬、美濃柴犬の牝で名前は種炎(シュホ)。


▼プロジェクト内容

本プロジェクトでは山政流犬牽の荻島が平安時代や江戸時代に鷹犬を使用して行われていた舞台表現を古文書や日本画を元に復元、皆様にお観せすることを目指しています。一見すると何も芸をすることなく、ただ自由に行動する犬を眺めるだけの内容にも関わらず、集中して観賞することで普段は見逃している日本古来の自然観や観察眼が蘇ってくる特別な体験をお届けします。

しかし、残念ながら現代日本では当時と異なり鷹犬と観客、互いの安全性が確約出来る会場の確保が大変困難な為、今回は第一弾として復元舞台を撮影しギャラリー等にて上映&展示する体制をとりたいと考えています。現代社会に適応出来るよう現代アート/演劇の手法を使った表現法や、犬牽文化の深化に迫るトークショウを開催するなど、多面格的に理解を深められる工夫を予定しております。


◯犬としての自尊心を破られることなく成長する鷹犬は野生的な感性が強い一方、問題行動が少ない。


▼開催理由

これまで山政流以外でも鷹犬の復元が行われてきましたが、鷹狩に使用することばかりに重きが置かれ、一時的な復活しか叶いませんでした。山政流でも2018年には飼育法をドッグトレーニングの分野で広報するなど一般向けに開かれた体制を整えてきましたが、現代に根を張ることに成功した鵜飼や猿回し同様、未来永劫犬牽文化を継承する為には多くの顧客獲得、つまり観客の確保が必須であるという結論に至りました。

その為、2019年からは本格的に犬牽の舞台人としての側面に重きを置き、多くの人々に文化の本質をお届けし現代に根付くことの一歩にしたいと考え、本プロジェクトの開催を決定した次第でございます。



▼活動履歴

荻島大河

1991年 川崎生まれ。

2009年 諏訪流放鷹術保存会に入門、鷹匠修行開始。

2010年 和光大学にて神話学者松村一男の元で鷹狩文化研究を開始。同時に宮崎県椎葉村では猟犬飼育の聞き込みを行い『フィールドワーク報告集2010渦流』に報告。

2011年 学生研究助成金論文制度を利用し「宮内省の隼」執筆。

2012年 同上「中世から近世におけるヨーロッパ文学の放鷹文化表現について」執筆。

2014年 卒業論文『律しない鷹匠』が優秀論文に選出。卒業後は岐阜県美濃柴犬保存会の協力を得て犬牽文化の復元研究を本格的に開始、概要を篠田知和基編『神話・象徴・儀礼』にて「猛禽類の記号を持つ犬から読み解く鷹犬の地位」として執筆。

2015年 文化庁+芸術公社主催『みちのくアート巡礼キャンプ』メンバーに選出され、犬牽の技術を使い縄文時代の犬と人の関係を復元する企画『犬の國』発表。

2016年 柴犬専用雑誌『Shi-B a7月号』にて復元活動が6ページに渡り特集される。

2017年 比較神話学研究組織『文化英雄その他』にて「犬飼/犬牽の信仰:鷹犬が内包する死と畏怖のイメージ」執筆。  

2018年 山政流立ち上げ。『日本犬祭り』にてブース出展を行い、下北沢のRBL cafeでは初の単独トークイベント「日本でただ1人の犬牽が教える日本犬の育て方~愛犬の問題行動に悩んでいる方へ~」を実施するなどドッグトレーニングの分野で広報を行う。また篠田知和基編『分身の神話・その他』にて「忘れられた犬牽の神ー鷹書に伝わる獺丸説話との比較から読み解くー」執筆。


◯胴輪と首輪を同時に付けるのは犬牽の伝統。行動を律するような訓練が禁止されている為、道具で犬の安全を確保する。


▼資金の使い道

・ギャラリー等展示場所の確保(約17万)

・人件費(約2万)

・撮影機材確保(約1万)

・手数料(約3万)


▼リターン内容

◯5000円

・会期中何回でも入場出来るチケット(東京都内にて今年度中に開催予定、交通費や滞在費などは自己負担となります)

・鷹犬生写真5枚

◯10000円

・同上

・特別パンフレット

◯50000円

・同上

・鷹犬カレンダー

・上映映像(DVDまたはBlu-ray)


▼実施スケジュール

3月1日 クラウドファンディング終了

3月上旬 会場予約開始

4月上旬 イベント開催概要告知&チケット発送

6月〜12月 東京都内にてイベント開催(開催後リターン発送)


◯昨年下北沢にて行なったトークライブ。


▼最後に

本プロジェクトは残念ながら資金不足の為にAll-or-Nothing方式で実施します。目標金額に満たない場合、計画の実行及びリターンのお届けはございませんので御了承下さい。

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