インド東北部に位置し、交通の要衝として栄えるシリグリのNJP駅周辺には、路上生活をする子どもたち:ストリートチルドレンが沢山暮らしています。彼らの主な収入源は『物乞い』。特に子どもの物乞いは大人に比べ多くのお金を集めることができるので、そのお母さんは進んで子どもを路上に向かわせます。しかし、路上に出た子どもたちはドラッグ、窃盗、誘拐など様々な犯罪にさらされ、将来が脅かされてしまいます。
そこで私たちは、この問題を解決すべくストリートチルドレンのお母さんたちに注目しました。子どもたちのお母さんがビューティーパーラー(ネイルアートなど理容をケアする)のトレーニングを受けられるしくみを整えることで、彼女たちが子供の収入に頼らず自立して生計を立てられるよう支援し、子どもたちに物乞いをしなくても良い安全な生活を提供したいと考えました!
〇シリグリについて
シリグリはインド東北部の西ベンガル州に位置する都市で、近隣諸国やインド各地から道路、鉄道などの乗り換えのため多くの人が訪れます。特に中心部のNJP(ニュー・ジャルパイグリ)駅は多方面からの鉄道の合流地点であり、多くの人で賑わうので、駅構内や周辺にはたくさんのストリートチルドレンが暮らしています。
〇女の子のためのシェルターに通う子どもたちとその現状
女の子のためのシェルター(DIC for Girls)は、NJP駅から徒歩1~2分ほどの場所にある児童保護施設で、現地NGOであるCONC’RNと日本のNGOであるIMAGINASが運営しています。IMAGINUSは日本の特定非営利活動法人で、インドのダージリンとシリグリに拠点を置き、活動しています。(http://imaginus.jp/)
このシェルターでは3人の先生が女の子たちのお世話や1日3回の授業、NJP駅周辺の路上で暮らす家族への働きかけなどを毎日行っています。
来る女の子たちのほとんどが路上で家族と生活をしています。駅周辺でのNGOスタッフによる保護や先生たちのお母さんへの働きかけがきっかけで足を運ぶようになります。中には赤ちゃんを抱きかかえて通う女の子も。
彼女たちはお絵かきをしたり、おままごとをしたり、どこにでもいる女の子と同じように元気よく遊び、時にケンカし、授業で新しいアルファベットを覚えると嬉しそうに私たちに教えてくれます。
2016年9月、私たちはIC netのスタディツアーでシェルターを訪れました、私たちは毎日施設に通わせていただき、女の子たちからたくさんの元気を分けてもらっていましたが、通っているうちに一つの問題点が見えてきました。
それは、ほとんどの女の子が“毎日”通っていないということ。
多くの子たちは1~2週間に一度の頻度で来ていて、中には以前毎日通っていたのにぱったり来なくなってしまったという子もいました。来なくなった子の友達や久しぶりに来た子たちに何をしていたのかを聞くと、彼女たちの多くは物乞いなどでお金を集め、窃盗やドラッグなどの犯罪に手を染めている子もいました。
そんな女の子たちの一人が、私たちが出会ったサラ(仮名)でした。
私たちが彼女に初めて会ったとき、彼女は久々にこのシェルターに立ち寄ったらしく、女の子たちや先生も喜び、また、かなり驚いていました。というのは、彼女の服は薄汚れ、髪は一本もなくすべて剃られてしまっていたからです。サラは1年前まで、毎日シェルターに通い算数や英語、お絵かきを上手にできる、シェルターの中の優等生でした。しかし、最近になってドラッグ遊びや盗みを覚えてしまい、ドラッグの後遺症で髪が抜け落ちてしまったということなのです。
私たちスタディツアーの学生が毎日シェルターを訪れるようになると、嬉しいことに、サラは朝早くから夜遅くまでシェルターに毎日滞在し、私たちに顔を見せてくれるようになりました。外国人の学生は彼女たちにとって物珍しく、与えてくれるおもちゃも魅力的に映ったようです。しかし、私たちもいつまでもインドにいるわけにもいきません。私たちが帰ってしまったら、サラはまた来なくなり、ドラッグに手を染めてしまうのか…。そしてこんな風にこれからシェルターを離れていく子たちが増えてきたら…。何とか子どもたちをシェルターに留められないか、と私たちは考えるようになりました。
私たちはシェルターの子どもたちへの聞き込みに加え、路上に足を運び、そのお母さんたちにも聞き込み調査を実施することで、この問題の全体像が見えてきました。
教育を受けずに育ち、働くすべを知らないまま子どもを授かったお母さんは、できるだけ簡単な方法でお金を稼ごうとします。その一つが物乞いです。物乞いでたくさんお金を集めるには、できる限り同情を誘わなければいけません。そこで子どもの存在が重要になってくるのです。子どもは毎日路上でお母さんとお金を集めているので、シェルターに来る暇はありません。お母さんだって明日の生活費もあるかわからない状況で、収入を半減してまで子供をシェルターに送ることは望まないでしょう。こうして犯罪などの危険にさらされながら、教育の大切さを知ることもできずに成長した子どもは、同じように働くすべを知らないお母さんになり、物乞いに頼った生活を繰り返すのです。
〇お母さんのためのビューティーサロンプロジェクト:SWAPNA!!
この悪循環を打開すべく、みなさんのご協力によって実現したいプロジェクトがお母さんのためのビューティーサロンプロジェクト:SWAPNAです!
SWAPNAとはヒンディー語で“夢を見る”という意味で子どもたちと、そのお母さんたちが夢を持ち、実現に向かって歩めるような生活をしてほしいという意味を込めました。
このプロジェクトは路上で生活するお母さんたちを対象としたもので以下の3項目から成ります。なお、このプロジェクトの実施主体は前述した日本のNPOであるIMAGINUSになります。
・子供の成長を見守りながら安定した収入
・トレーナーによるビューティーパーラー訓練
・働く場の提供
1. 子供の成長を見守りながら安定した収入
お母さんたちにシェルターに来てもらい、毎日多忙な二人の先生のお手伝いをアルバイトとして行ってもらいます。具体的には、掃除や洗濯、子どものお世話など基本的な家事が仕事内容となります。これによって、お母さんは収入を得られるだけでなく、子供と一緒にシェルターに訪れるので、子どもがシェルターに通う頻度も多くなります。また、子どもたちの学習に対する好奇心の旺盛さや熱心な姿勢を見て、お母さんの教育に対する認識が変化してくれることも期待できます。
(例)子どもたちのお母さんのうち、3人が働いてくれることになったとします。週に3回、一回につき4時間のシフトでシェルターに出勤してもらいます。一日で50ルピー(約85円)の賃金で働いてもらいます。お母さんたちは毎日約100ルピー収入があるので、魅力的な条件だと思います。
2. トレーナーによるビューティーパーラー訓練
さらに施設でのお仕事の傍ら、お母さんたちには定期的にトレーナーによるヘナタトゥーやネイルアートの技術指導を受けてもらいます。
ヘナタトゥーとは樹脂を用いて腕や手に様々な模様を描くインドの伝統的なタトゥーで、本来新婦に施すものでしたが、現在は一般的に利用する女性も増え、特に観光客からの人気が高まっています。
(例)一日4時間の勤務時間のうち、1時間をプロのトレーナーによる職業訓練の時間にあてます。トレーナーには毎日出勤してもらい、給与も出します。そしてお母さんたちに根気強くトレーニングを続けてもらうため、シェルターの屋内にドレッサーや美容品を置き、居心地よい空間を作ったり、トレーニングの進捗状況に応じて景品をプレゼントしてあげたり、といったことを考えています。
3. 働く場の提供
本プロジェクトでは職業訓練にとどまらず、 IMAGINASとCONC’RNの協力のもと駅近くにブースを設け、十分な訓練を受けたお母さんたちの職場として活用してもらいます。最終的にはお母さんが一人で家族の生活費を養えるようになるまでサポートすることで、子どもたちの物乞いを止めさせ、子どもの安全の確保と十分な基礎教育の提供も実現できると考えています。
〇私たちの挑戦を形にするために
もともと私たちはこれまでインドに来たこともなく、さらに全員が海外経験の浅い「普通の大学生」でした。中には今回が初海外、なんてメンバーもいました。そんな私たちがこのNPO法人 IMAGINUSという団体のスタディツアーで出会い、初めてだらけのインドで二週間、必死に現地の現状と向き合い考えたこの企画が、多くの人の支えを受けて本当に形になろうとしています。
「生まれた場所が、環境がちがうだけで、こんなにも限られた選択肢の中で生きることを、迫られている子どもたちがいる」。そのことを何とかしたい。見過ごすわけにはいかないという思いで、ここまで来ました。そのためにまずは子どもたちの家庭の中から意識を、環境を変えていくこと。その好循環を回すためのスタートに、ようやく今立ったところです。そして、この企画の実現のためには皆様のご支援が必要です。ささやかながらですが、ご協力いただいた皆様にはインドのかわいい手工業アクセサリーや伝統デザインのデスクトップのプレゼント、プロジェクト報告会の招待などをさせていただくつもりです。
どうか私たちの挑戦に、ご支援をいただけないでしょうか?
応援よろしくお願い致します!
コメント
もっと見る