崖の上の老木を 心を込めて伐採し 文化財の未来にいかしたい
はじめまして。NPO法人“矢中の杜”の守り人事務局の中村泰子です。
つくば市北条にある国登録有形文化財「矢中の杜」をご存知ですか?
私たちは矢中の杜の維持保存・活用を行っています。
まずは、私たちが大切にしている地域の宝物「矢中の杜」の魅力をご紹介します。
▼矢中の杜 別館迎賓棟
地域の文化財「矢中の杜」
「矢中の杜」は、つくば市北条にある昭和の邸宅で国登録有形文化財です。
北条出身の実業家、矢中龍次郎が日本の風土を考え抜いて建築した邸宅は、かつて矢中御殿と呼ばれた場所。
矢中龍次郎の没後、邸宅は約40年使われず、すっかり荒れていましたが、所有者が変わったことを契機に、清掃・調査を経て、「矢中の杜」として再生。邸宅公開やイベント開催のなど邸宅を使いながら、保存活用を行っています。
770坪の敷地には、敷地の高低差を利用した回遊式の庭園が備わり、その中に建つ邸宅は、本館居住棟と別館迎賓棟の2棟。銘木や銘石に加え、華やかな杉戸絵など美術工芸的な見所も。また、時代をあらわす暮らしの道具が残され、昭和を身近に体感出来ることも大きな特徴です。
昨年夏にはBS朝日「百年名家」でも紹介され、邸宅公開には多くの方が見学に訪れます。
▲本館居住棟
邸宅の公開やイベント開催などによる収入が維持管理の資金です。
▼2018年春のイベント「御殿まるごとマーケット」。今年は3月30、31日に開催予定
地元の学校との連携も
地域の文化財として学校とも連携しています。隣地にあった北条小学校(2018年3月閉校)からは「矢中の杜クリーン作戦」と題して、7年間、児童たちが庭園の掃除や手入れに来てくれました。
▼北条小学校の児童たちによる「矢中の杜クリーン作戦」
▲「つくばね学」 筑波高校生が、障子の張り替えに挑戦
また、2016年から筑波高校の生徒たちが「つくばね学」という授業の中で、邸宅の維持修繕活動に取り組んでくれています。
未来を担う子供達にも、地域の大切な文化財としての「矢中の杜」を、肌で感じてもらっており、私たちにとっても大変良い刺激になっています。
そんな矢中の杜に、庭木の倒木による破損の危険があるのです。
ずっと見守ってくれた老木(榎の木)が倒れそう!
榎の木は庭園で最も大きく、建設当時から立っているランドマーク。
入り口から高い場所にひときわ大きくそびえる榎の木が見え、夏は緑の木陰を、冬は綺麗な枝ぶりを誇り、多くの虫や鳥の食事処でもあります。邸宅建築当時の写真にも今より若い榎の木が確認できます。
▲邸宅建築当時の写真。右上の人物が施主である矢中龍次郎氏
しかし残念なことに木自体が徐々に弱り、腐れが入って再生は望めない状態に。
これまでも、枝が落ちて建具を破損したり、大枝が丸ごと庭に落ちたこともあったのです。
▲2018年夏、大きな枝が落ち、撤去工事を行いました。
このままでは、本館居住棟に倒れ掛かり、邸宅の大規模な損壊という取り返しのつかないことになりかねない。矢中の杜保存のため、榎の木の伐採を決断しました。
伐採は待ったなしだけれど、これが難工事。庭園の最も高い位置に生えていること、木自体の高さ(10m超)、太さ(直径1m超)、敷地足元の悪さ、周辺敷地の状況など危険で難しい条件が揃っています。
榎の老木を心を込めて伐採し、これからにつなげたい
いろいろな方と相談し、林業に携わる方の協力が必要とわかり、つくばね森林組合さんに相談したところ、特殊伐採を行う工事を教えていただきました。
「吊り切り」という方法で、技能者が木に登り、上部から少しづつ順番に伐っていきます。伐った部分を重機で吊り上げ、安全な場所に移します。敷地からは入らない重機は隣地(旧北条小学校)から乗り入れて、作業ができることになりました。
▲倒れる心配のない範囲で根元を残すので、もしかしたら新しい芽がでるかも?
邸宅の保存のためとはいえ、ランドマークともいえる榎の木を伐採することはとても残念なことです。
だから私たちは、この木の伐採を、単に伐って処分するのではなく、感謝の気持ちを込めて送り出すことで、邸宅の未来につなげたい。
建設当時から今まで、邸宅をずっと見守ってくれた榎の木。枝の一部分を手元に残し、思い出となるグッズ作りや、ワークショップの材料にします。榎の木の思い出とともに、これからの矢中の杜にいかしたいのです。
資金は伐採工事の工事費用と経費に使います。
・伐採工事費用
・リターン品準備費用
・FAAVO手数料
リターン品に榎の枝を利用した品やワークショップを準備します。
リターンのうちワークショップの開催
2月後半に工事を実施します。
2月後半に伐採工事を行います。
現在、具体的な日程を調整中です。
残した枝は乾燥を待ち、加工します。
「矢中の杜」の保存にご協力をお願いします!
矢中の杜の保存活動が始まって以来、経年による傷みをはじめとして、東日本大震災や北条の竜巻による被害など、邸宅や庭園の整備・修繕を何度も重ねてきました。
今回ご協力をお願いしている、榎の木の伐採プロジェクトはその整備・修繕の中のひとつですが、これからの「矢中の杜」をどう活用していくのか、を考えてのプロジェクトです。
矢中の杜を保存するのは、やはり大変な労力と資金が必要です。
昭和に建てられた邸宅は、平成に入り若者たちを魅了して保存活用が始まり、今も訪れる方を楽しませています。
平成に続く新しい時代にも「矢中の杜」として堂々と魅力を発揮して、たくさんの人を楽しませて欲しい。そんな未来への第1歩です。
ご協力をお願いします!
私たちと一緒に矢中の杜を守り、矢中の杜を楽しんでください。
お問い合わせ先
NPO法人“矢中の杜”の守り人事務局
担当:中村泰子
yanaka.no.mori@gmail.com
HP:https://www.yanakanomori.org
リターン品の参考情報
マクラメアクセサリーを作るワークショップ
講師:マクラメアクセサリー『merci』https://www.facebook.com/macrame.merci
榎で染める染色ワークショップ
講師:草木染め工房ぷにの家 http://puninoie.tsukuba.ch
矢中の杜へのアクセス地図はこちら↓