千年以上の歴史を持つ、世界にも類を見ない人馬一体の祭り

鳴り響く陣螺の音を合図に、打ち上げられた花火からゆっくり舞い降りる二本の御神旗。その旗を目指して一斉に走る400騎もの騎馬武者たち。御神旗を手にした騎馬武者が誇らしげに本陣山を駆け上がれば、会場は割れんばかりの喝采に包まれる─。令和の時代に戦国時代さながらの勇壮な光景を繰り広げる、相馬野馬追(そうまのまおい)のハイライトです。
この祭りのルーツは、相馬氏の祖と言われている平将門が野馬を放ち、敵兵に見立てて行った軍事訓練。以来、1000年以上に渡って伝統は受け継がれてきました。冒頭で紹介した「神旗争奪戦」の他にも、騎馬武者たちが街を行進する「お行列」や雲雀ヶ原の祭場地を舞台に勇猛果敢に行われる「甲冑競馬」など、3日間にわたって人馬一体となる様々な行事が行われます。例年16万人もの観光客が訪れる相双地方の夏の風物詩です。

各々の家に伝わる旗指物を背に街中を悠然と進む


震災にも負けなかった祭りが直面する、最大の危機

相馬野馬追が行われる相双地方は、2011年の東日本大震災・原発事故で大きな被害を受けた地域です。しかし、そうした厳しい状況にあったその年も、出場騎馬数を大幅に減らしながら相馬野馬追は開催されました。元々、野馬追には地域の平和と安寧を願う想いが込められており、地域住民にとっては「復興のシンボル」でもあります。そんな相馬野馬追が今年は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一部の神事を除いて中止となり、無観客での開催を余儀なくされてしまいました。 

今年は野馬追の喧騒が聞こえない雲雀ヶ原祭場地


新型コロナウイルスにより、出場者への奨励金が支給できない事態へ

相馬野馬追の中止・規模縮小は単に今年の開催だけに影響を及ぼすものではありません。 相馬野馬追に出場する約400頭の馬のうち、半数にあたる200頭は地域の馬主によって飼養されています。それも営利目的ではなく、この3日間のお祭りに愛馬と共に参加することを目的にしたもの。当然のことながら、馬を飼養するには経済的な負担も大きく、仕事の傍ら早朝から世話をし、野馬追が近づけば訓練も必要です。それでも年に一度の野馬追を楽しみに馬主たちは馬との暮らしを続けてきました。例年であれば、相馬野馬追に出場することにより定額の奨励金が支給され、それを飼養にかかる費用の一部に充ててきましたが、今年は出場奨励金の支給が行えず、馬主たちの負担は増す一方です。それでなくても、近年はこうした経済的な負担の大きさや少子高齢化の影響で、出場頭数が減少傾向にあった中での今回のコロナショック…。来年以降の出場を危ぶむ方が数多くいるのが現状です。

家族のように、馬と生きる
人と馬が共に暮らす相双地方の馬事文化

相馬野馬追は古くから受け継がれてきた日本の馬事文化を守るという側面も担っています。400頭もの馬が一度に参加する祭りは日本中を探しても類がなく、そこに甲冑姿の侍がまたがる光景は、世界でもここでしか見ることができません。また、出場馬の大半は全国各地の競馬場で走っていたサラブレッド。引退後の競走馬の受け皿としても相馬野馬追の果たす役割は大きいのです。中にはGⅠ競走などの大レースの勝ち馬の出場もあり、その馬目当てに訪れる競馬ファンも数多くいます。さらに、戦国時代にタイムスリップしたかのような勇壮な騎馬武者の姿を楽しみに足を運ぶ歴史好きや外国人観光客など、様々な人の心をつかんで離さない相馬野馬追は、地域にとっても貴重な観光資源となっています。

全日本2歳優駿の覇者 オーブルチェフ

地域の馬主を支援することは、伝統文化を残すこと

今回のプロジェクトは相馬野馬追を来年以降も続けていくために、馬主の方々を支援するのが目的です。馬主を続けられなくなるということは、一年間この日を楽しみに馬を育てている人たちの希望を失うことにも繋がってしまいます。地域の人たちにとっても相馬野馬追はただのお祭りではなく、復興の象徴でもあります。
皆さまからの支援金は、野馬追の為に馬を飼う方が馬主を継続できるようサポートするために使います。

具体的には、支援金の総額を飼っている頭数に応じて均等に分配させて頂きます。(支援総額が確定する10月以降、馬主が所属する騎馬会を通じて分配)

支援していただいた皆様には、地元で制作される馬にまつわるグッズの他、来年の相馬野馬追の招待券や甲冑の着付け体験など、相馬野馬追ならではの馬事文化を体感できる様々なリターン(返礼品)をご用意しています。伝統の相馬野馬追を未来に繋いでいくために、ぜひこのプロジェクトへのご賛同をお願いいたします!

伝統行事の根底には、人馬の共生文化が息づいている
▶応援者インタビュー
「震災で家族をなくした私にとって、野馬追は心の支えです」
相馬野馬追 功労者 菅野長八さん


Q相馬野馬追に参加したきっかけを教えてください。 
元々農家の出身で家には馬がいる家庭で育ちました。子どものころに野馬追に参加したこともあったんですよ。でも、本格的にのめり込むようになったのは社会人になってから。郵便局員として働いていましたが、千葉で装蹄師の仕事をしていた弟から引退した競走馬を相馬野馬追に出してみないかと譲り受けたのがきっかけです。乗馬の経験があったわけでもなく、ひょんなことから参加した野馬追だったけど、どんどんその楽しさにハマっていってもう40年以上になります。

Q馬主を続けるうえで大変なことはありますか?
野馬追に参加することは義務でも強制でもないんだけど、やっぱり馬を飼い続けるということは経済的には大変ですよ。維持していくのに30万から50万円はかかってしまいます。それ以外にも馬具の手入れや陣羽織やはかまの仕立てをするのにも費用が必要です。何より、仕事と馬主を両立するには家族の協力や理解がないと続けられなかったんじゃないかな。


Q菅野さんにとって野馬追はどんな存在ですか?
実は私は震災でその家族をみんな失ってね…。被災して一人になって生きがいを見失ったし、何度も何度も後悔しました。それでも野馬追だけは残ってくれた。野馬追に出ることより、生きていくことの方が大事なのかもしれませんが、私にとって家族と一緒に楽しんだ野馬追こそが生きるための支えでした。供養のためとの想いもあり、震災の年も出続けました。これからも自分が生きているうちはずっと野馬追に関わっていきたいと思っています。 




「親子三代で一緒に野馬追に参加することが一番の楽しみです」
遊馬館・大木戸愛馬会 伏見克夫さん

Q伏見さんと相馬野馬追の出会いを教えてください。
代々相馬野馬追に出場している家に育ったこともあって、野馬追があるのが当たり前のような感じです。野馬追に初めて出場したのは中学3年生の時です。馬に関わる仕事に就きたいと、JRAに就職した後も、野馬追の時期になると戻ってきてなるべく参加するようにしてきました。初めて出場してから50年以上になりますが、定年を迎え地元に帰ってきてからは前にも増して野馬追中心の生活です(笑)。今はハルとクロという2頭の馬を飼っていますが朝4時から馬に乗り、馬房の掃除に野馬追に向けたトレーニングと馬中心の毎日です。家の中にも野馬追に使う甲冑、衣装などのコレクションもたくさん集めています。とにかく野馬追が大好きなんですよ!

Q馬主を続けるために苦労したことはありますか?
馬は家族のような存在ですし、野馬追があるのが当たり前なので苦労と感じたことはありませんが、馬を世話するのは決して楽ではありませんし経済的な負担もあります。それでもこうやって続けてきているのはやっぱり馬や野馬追が好きなんでしょうね。だからこそ、今年はいつもの年のように盛大な野馬追が開催できないのは本当に残念です。 

Q今後の野馬追にかける想いを聞かせてください。
去年は5歳の孫が息子と同じ衣装を着て初めて野馬追に出たんです。孫が馬に初めてまたがったのはまだ1歳の時でした。それくらい私たち家族にとって馬は身近な存在です。息子と孫と親子三代で甲冑競馬や神旗争奪戦に出るのが今の私にとっての夢ですね。これだけの数の馬が出るお祭りは日本のどこにもないと思います。コロナが収束して来年の野馬追が開催されたときには、ぜひその熱狂もみなさんにも見てもらえればと思います。


▶主催者から
「相馬野馬追は地域にとっての誇り、この伝統を絶やしたくない!」
相馬野馬追執行委員会委員長 門馬和夫さん

Q馬主さんにとって相馬野馬追とはどんな存在ですか?
この地域には年に一度の野馬追のために個人で馬を所有している方が200名以上います。牧場などではなく、個人宅でこのような形で馬を飼っている人がこれだけいる地域は、日本中探してもどこにもないと思います。戦後間もない時期には復興競馬が開かれ、震災直後にも絶やすことなく野馬追は続けられてきました。伝統の野馬追に携わるということは馬主さんにとっても大きな誇りです。馬を飼うということはそれだけお金もかかりますし、世話をするのも大変です。それでも365日馬と生活を共にする馬主さんたちがこんなにたくさんいるということは、それだけで想いの強さが伝わるのではと思います。

Q地域の人たちにとっても野馬追は特別な行事なのですか?
地域の方に「南相馬と言えば?」とたずねればほとんど全員が「相馬野馬追!」と答えると思います。それだけ、野馬追は地域にとっても誇りの行事なんです。私も百姓の家の出身、家には農耕用の馬がいて、幼いころから身近な存在でしたし、野馬追の時期には家の前を騎馬武者たちが行列をつくって歩く光景をワクワクしながら見てきました。 

Q未来の相馬野馬追に込めた想いを聞かせてください。
今年のような無観客での開催は私も初めてでとても残念です。この素晴らしい伝統を守っていくために、馬を確保することは不可欠です。馬主の負担を減らすため、数人で協力して馬を所有し委託する体制づくりなども今後の課題だと思っています。 馬と人の文化や武士の文化、平和の象徴など相馬野馬追には様々な魅力があります。競馬ファンの方や歴史好きの方、外国人観光客の方など、幅広い方に感動を呼ぶ自慢の祭りです。そうした魅力を発信し続けながら伝統の相馬野馬追を未来へ繋いでいきたいと考えています。
今回のプロジェクトは相馬野馬追を誰よりも愛し、今後の継続を誰よりも強く願う、地域の個人馬主さんたちを支えるためのものです。200名を超す個人馬主さんは現在、何の補助も出ない厳しい状況の中、それでも地域の伝統を守ろうと必死で馬を育てています。こうした方たちの経済的な負担を少しでも軽減するためにも、来年またあの勇壮な光景をみんなで一緒に楽しむためにも、プロジェクトへの御支援をお願いいたします。



本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。


このプロジェクトは、東日本大震災からの復興につながるクラウドファンディングをサポートする「復興庁クラウドファンディング支援事業」の対象プロジェクトです。

  • 2020/12/10 20:00

    ご支援者の皆様馬主を支援するクラウドファンファンディング“一千年続く日本一の侍・馬事文化「相馬野馬追」を守りたい!”をご支援いただきまして、誠にありがとうございます。 皆様からいただきました支援金については、先日、馬主の方々に1頭あたり58,000円を配分し給付を完了しました。  【支援金使途...

  • 2020/09/16 20:00

    こちらの活動報告は支援者限定の公開です。

  • 2020/09/15 20:00

     本日、終了まで5日を残して目標額の1,000万円を達成することができました! ご支援いただきました皆様、心より感謝申し上げます。 金銭的なご支援だけにとどまらず、沢山の応援コメント、SNSでの応援メッセージをいただきまして、本当に励まされました。プロジェクトのPR活動はもちろん、来年度の『相...

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