あらすじ

今回のプロジェクトでは、現在の宮城県石巻市の日常を「街の情景」をテーマに、映像作品として記録します。
この未曾有の出来事から復興へと取組むこの街を、生活者に近い視点から考察し、そのさりげない日常的な出来事を具体的に映像作品として記録していくことに試みます。そして作品を通して、より多くの人に事実を知ってもらい、また何年も先の世代にとって、過去の実態を回想する手がかりにできればと思いこのプロジェクトを始動します。

いきさつ

そもそものきっかけは、私自身の石巻での滞在生活でした。昨年末から今年の3月の間に、被災した建物を修復し、アートスペースとしてリノベーションするプロジェクトを行いました。潮に浸かり、錆び付いた鍵穴。壁を剥がせば乾燥したヘドロの固まりとカビ。下水工事は3ヶ月待ち。毎日が現地に来ないと知る事、体得する事のできない事の連続でした。私たちが建物を修復する一方で、街の中では年度末に向けて建物の取り壊しが急ピッチで行われていました。確かに目の前に存在していた人の営みや地域コミュニティー。それを築いていた建物は、とても不条理な津波によって失われ、さらには残った建物の多くが取り壊されていきました。その光景を前に、私たちが信じていたコミュニティーとはなんて脆かったのだろうかと思う反面、儚さを感じました。何年もかけて山で育った木が材料となり、巧みの職人さんたちが建物にする。そしてそこに営みが生まれ、それが集まってコミュニティーができる。しかしそれをほんの短時間で失ってしまうことになったのですから。

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1)船や車などの漂流物が衝突して歩道部分が大破した橋。11月頃撮影

日本はこれまでに、戦後の復興や阪神淡路大震災からの復興など、いくつかの不条理かつ未曾有の出来事からその都度、復興を遂げてきました。そしてまた今回も復興を遂げることができるでしょう。しかし、それを成し遂げて時間が経ったとき、人々の意識は風化し、曖昧な記憶となり、当時の事や街の面影などの実態を回想するきっかけがなくなってしまうのではないかという危機感を強く感じています。

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2)年度末にかけて、中心市街地の多くの建物が取り壊された。2011年11月撮影

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3)漂流物がそのままになっていた川沿い。2011年11月撮影

世界中の多くの人にこの事を知ってほしい。何年も先の世代にもこの事実と実態を知ってもらうためのきっかけをつくりたい。この出来事を忘れてほしくない。その思いからこの過去を知る為に今を記録するプロジェクトは始まりました。
そして記録した作品を「事実を後生へ伝える為の手法」として、メッセンジャーの役目を果たしたいと思います。
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4)建物やインフラの復旧が進み、営業を再開した店舗が目立つようになった、アイトピア商店街。 2012年4月撮影

何をするのか

・旧北上川から見た、街の情景を記録する映像作品の制作

このプロジェクトでは、旧北上川と北上川が分岐する地点(海から約30キロ)から海に出るまでの川から観た堤防ができる前の街の情景と今ものこる傷跡を記録し短編映像として仕上げます。宮城県を縦断し、石巻市街地を回り込むように流れ海にでる旧北上川。その川は今も昔もそこにあり続け、街の姿を静かに見つめ続けてきました。

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5)中瀬から見た石巻中心市街地。2012年4月撮影

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6)欠損したままの河川敷。 2012年2月撮影

普段は静かに流れ、街を包み込むかのような優しささえも感じられるこの川も、あの日だけは狂ったかのように津波を海から内陸へと運びました。その傷跡は今も川沿いに残ります。 一級河川でありながら、大きな土手や堤防が建てられる事なかった市街地の川沿いには高さ約7〜4M、巾約20Mにも及ぶ堤防が建設される事になりました。

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7)堤防建設予定地付近。ここから中瀬に架かる橋や対岸への見通しはなくなる。2012年4月撮影

そうなると、街の人たちが愛してきた川の眺めは、もう観る事はできません。そして、街を守る為に、街とともに歩んできた川との関係は分断されてしまいます。
堤防の建設に反対する人たちが多く居る一方で、建設を望む人たちも多く居ます。

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8)GLから1Mの仮設堤防が建てられた石巻中心市街地。2012年4月撮影

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9)既にTP4M強の土手が造られている地区。上の写真と比べて情景の違いがよくわかる。2012年2月撮影

人の生命を考えた場合、それは致し方のない事かも知れません。そう思う一方で、ある特定の地区にコミュニティーを築くこと、コミュニティーの在り方について考えさせられます。この作品がこの実態を記録するだけでなく、堤防が完成した後の世代の人たちが以前の川と街の姿を思い起こす、または想像するきっかけになる事を期待します。

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10)TP約4Mの堤防建設予定地。2012年4月撮影

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11)沿岸部付近に向けて堤防は最高TP7Mの高さになる。 2012年2月撮影

制作期間

撮影期間 : 6月半ば頃から段階的に開始
編集期間 : 8月〜9月下旬
公開時期 : 9月下旬以降を予定
制作期間や公開時期は撮影期間の現地の状況や撮影期間の天候などにより変更になる場合があります。

活動拠点

撮影期間は石巻市中央に簡易スタジオを開所し活動します。最低限のリノベーションを施し、夜間も常時明かりを灯します。
編集期間は石巻の現地スタジオと横浜のスタジオをブランチスタジオとして使用します。また横浜のブランチスタジオを首都圏での発信拠点として機能させます。

リターン

¥ 500- お礼のメールとプロジェクト完了の際にご報告をいたします。
¥ 3,000- メーリングリストへの登録とプロジェクトの進捗状況を随時ご報告いたします。
¥ 5,000- 上記に加え、作品映像のエンドロールにお名前を表記いたします。
¥10,000- 上記に加え、完成ディスクを1枚寄贈いたします。
¥30,000- 上記に加え、お名前を個別表記いたします。
¥50,000- 上記に加え、展覧会や広報などの紙媒体にもお名前を表記いたします。
¥100,000- 上記に加え、完成ディスク5枚寄贈。
      さらに河川での調査・撮影にもご同行いただけます。

支援金内訳

      項目       内容              金額
1、現地スタジオ整備費 活動拠点の最低限のリノベーション    30,000-
2、活動運営・制作資金 活動の運営と制作、広報にかかる経費   250,000-
3、楽曲制作依頼費    楽曲の制作の謝金             50,000-
4、ウェブサイト管理謝金 ウェブサイトの維持の謝金(6ヶ月間) 20,000-
5、映像ディスク制作費 DVD40セット Blu-ray60セット
      ケース、ジャケット印刷を含む            50,000-
6、雑費      消耗品や協力者の飲料など。         30,000-
合計           1+2+3+4+5+6           430,000-

増田拓史 略歴

1982 年生まれ。横浜美術短期大学卒業。横浜を拠点に活動。特定のコミュニティーや地域、国をリサーチし、日常生活に埋もれてしまった「何か」を探索し掘り起こしていく作業をしている。 その手法として近年では、日常の家庭料理にフォーカスをあて、メディアを問わず、地域の方々と協働しながら具現化する食堂プロジェクトを展開している。
主な活動に、2011年「代官山食堂/代官山インスタレーション2011」(東京)、2011年「黄金食堂 / 黄金町バザール2011」(横浜)、2010~2011 年「Treasure Hill Artist Village Public Art Project」( 寶藏巖国際芸術村/ 台北・台湾)など。

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