コロナ禍における緊急支援【緊急宿泊4月15日まで/巡回看護とごはん配り継続します】

1月7日発令の緊急事態宣言とその後の寒波襲来の影響で野宿する人たちの状況が厳しくなっています。緊急支援にご協力頂けたら幸いです。都が提供する仕事が3月から無くなり更に生活が苦しくなることを受け、緊急支援を延長することにしました。

支援概要

期間:1月中旬~2月下旬 3月末まで 緊急宿泊は4月15日まで

内容:冬を越すための宿泊場所、食料・必要物資の提供、巡回看護から医療に繋げる活動を強化します

目標金額:200万円

Urgent Support for Those Living in Tokyo's Sanya to Survive the Winter of Covid-19
*Please click the above link for the English version

2月27日の巡回看護の風景
【現地で当事者の方の許可なく気軽に写真を撮らないよう何卒よろしくお願いいたします】


かつて東京のドヤ街と呼ばれた山谷周辺では野宿を長期間続ける人が多く、彼らからは、たとえ住む場所がなくても「自分で働いて食っていきたい」と生活保護の受給を拒否する声をよく聞きます。できる限り自活することにプライドがあるのです。私たち一般社団法人結YUIでは、昨年の緊急事態宣言を受けて今日まで、そういった野宿の方々へ食事やマスクなどの必要物資を届け、健康状態等聞き取りを重ねて希望する方には生活保護に繋げるアウトリーチ活動を行ってきました。安定した仕事と健康状態を保つことができれば野宿生活を続けることも可能でしたが、1月7日に発令された緊急事態宣言とその後の寒波襲来により状況がさらに厳しくなる中で「一時的に宿泊させてもらえないか」「自分より高齢で健康状態がよくない仲間をなんとかしてほしい」という野宿当事者からの相談の声が多くありました。自死もあります。私たちが運営している簡易宿泊所も新型コロナウイルスによる影響を受けており、更に運営受託している施設では低額であっても宿泊の支援継続は困難です。これまで通りのアウトリーチ活動を行いつつも、全てを無償提供し続けることに限界があります。そこでクラウドファンディングを通じて、二度目の支援を募ることに決めました(一度目:山谷にカフェをつくる)。


支援の内容について

 私たちが提供したいのは物的(宿泊、食料含む)サポート生活健康相談のための人的サポートです。まず物的サポートについて、野宿の形態には大きくわけて2つのタイプ、固定層と移動層があり、それぞれにあった形での支援を提供します。固定層は一定の場所にテントを設置して生活する人たちですが、一度テントを空けると不在中に撤去され、その場所に帰ってこられなくなるという事情があります。移動層には2タイプあり、荷物を預けて夜にテントを設置して野宿をする人と、テントがないので段ボール等で寝床をつくって野宿をする人です。

玉姫公園の様子

 支援の種類としては、テントでの生活を維持したい人には寝袋+食料の提供を、移動層でテント持たない人には緊急宿泊+食費の提供を行います。移動層でも気軽な外での暮らしがいい方たちには、引き続き寝袋+食料の提供を行っていきます。

宿泊を希望する場合もしない場合もそれぞれの方の健康状態の確認をした上で、必要に応じて専門家に繋げます。健康状態がよくない場合は生活保護について丁寧な説明をし、本人の意思を尊重しつつ、希望があれば生活保護の申請に同行します。

巡回看護前日のミーティングの様子 野宿の人の個々のケースについて話し合っています

そんなに困っているならば、なぜすぐに公的支援を受けないのか?と思われる方も多いと思います。これに関しては長い間、野宿生活を続けてきた方々には様々な思いがあることを知っていただきたいと思います(詳しくは後半に述べるのでぜひお読みください)。そういった方々には時間をかけて寄り添いながら必要な支援をしていきます。

 

地域生活支援:社会との接点をつくる

社会との接点として、我々が重視しているのは地域との関わりです。結YUIでは平時から山谷に住まう人たちとで地域清掃を実施してきました (さんやカフェ清掃隊)。定期的に有志で地域を回り、ゴミ拾いをするという地道な活動を通じて、生活保護の方や野宿生活の方々と言葉を交わし、互いを知っていきます。路上で飲んでいる人の中には一緒にゴミ拾いをし始める方もいます。また、清掃中に様々なまちの人から「おつかれさま」「ありがとう」と声をかけられることでまちの一員としての帰属感と自己肯定感の向上に繋がります。

 一度社会との接点が希薄になると、再び信頼関係を構築するには時間がかかります。個人の尊厳の回復には、物理的な環境(衛生的でプライバシーを守れる場所)と心理社会的な環境(自主的な選択が可能な生活環境、立場に関係なく人として互いを尊重しあい、話ができる人間関係)が必要ですこの2つの環境が担保されて初めて人は再び社会との関わりをもつ準備ができるのでは思い、その一助になりたいと願っています。

将来的には皆さんが山谷地域の住民の一人として過ごすことができるよう、地域でボランティアを含めた事業活動を通し継続的に関わり働きかけていきます。

みんなでまち中のゴミ拾いをして地域貢献に
    最後のポーズを画像で記録しています


ご支援の額の使い道について

・常時15名を対象とする場合、35日間で宿泊費2,250円と考えて約120万円が必要になります。

・極寒の屋外でも耐えられる寝袋など必要物資の提供、食事を野宿の人に届ける「ごはん配り」を継続して行います。約24万円

・看護師、精神保健福祉士等専門家による健康相談、医療に繋げるための体制づくり。約20万円

・その他クラウドファンディング手数料 消費税 約36万円

 野宿生活からすぐに福祉事務所で生活保護を申請する場合とは違って多額の費用がかかるようになってしまいます。少しでも多くの方にご協力頂けたら幸いです。

現在、寝袋の配布は既に始めています。看護師による巡回も始めました。
ご支援の額が目標よりも集まらない場合は物資と食料の支給の削減、受入れ人数や日数の削減で対応していきます。

『ごはん配り』の様子  野宿中の人に栄養ある美味しい食事を配り生活・健康状態の聞き取りを行います


当法人は山谷地域にて宿泊業と飲食業の事業活動を行う一般社団法人であり、免税などの特典はありません。コロナ禍で通常事業も大幅な赤字ではあるのですが、新型コロナウイルス感染症特別貸付を受けながら事業は継続できています。よってご支援の額は手数料税金を除いて100%支援目的に使用し、法人の通常事業の人件費や経費に充てることは一切ありません

今回は主に緊急支援のためのクラウドファンディングですが、この支援を通じて希望する方には医療扶助単給を含めて生活保護に繋げ、更に地域での活躍の場をつくるために地域清掃や就労支援に繋げていくことができればと考えています。将来的には誰もが山谷地域の住民の一人として過ごすことができるよう、皆さまからのご支援を賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます。


なぜ生活保護を受けたくないという野宿者が多いのか

 冒頭に、野宿生活者の中には生活保護の受給を拒否する方がいると述べましたが、その理由には下記のようなものがあります。複数の理由が当てはまる人も多くいらっしゃいます。もしご興味がありましたら・・・と義平の論文『日本におけるハウジングファーストの展開に関する考察』もご一読いただけますと幸いです。(見守り型宿泊所ありあけについても当該リンクよりお読みください。)

◆ 生活保護を申請すると家族への扶養照会がある
 「家族にはこの状態を知られたくない」「田舎はすぐ周りに知られるし生保なんてとんでもない」

住所を定めることを避けたい
 「(多重債務など)借金があるので受けられない」「DVを受けている」

生活保護に対する負のイメージ
 「生保を受けるなんて恥ずかしい」「できる限り自分で働いて食っていきたい」「年金が受け取れるようになるまで野宿で頑張る」

福祉事務所での負の体験
 生活保護の申請に来た方に「水際作戦」として追い返すことが奨励されていた時期がありました。特にその頃に『屈辱的な対応を受けた』という思いから「行政の世話になるものか!」と強く思っている人たちも多くいます。

 ⇒ 長く話していると実は生活保護を希望していることもあります。その場合は申請同行し、福祉事務所側との円滑なコミュニケーションができるようにして生活保護に繋げます。宿泊先が決まっているので皆さんが嫌がる更生施設や貧困ビジネスの施設に送られることもありません。生活保護受給中も就労継続は可能であり、借金がある人は自己破産の手続きに繋げます。

貧困ビジネスの囲い込み型宿泊所での負の体験
 支給される一ヶ月分の生活保護費は14万円程度ですが、入居費、食費、水道光熱費、テレビ代等としてその殆どが徴収され、手元に残るのは1~2万円のみというところが殆どです。真摯に障がいのある方のお世話をしている支援団体もある一方、営利目的の団体が多数あり、上から下目線の命令的指示で当事者の選択の余地のない“支配に近い支援”によって尊厳を傷つけられてきた人たちがいます。

 ⇒ 信頼関係を繋ぐことで再度生活保護に繋げ、より自然に自主的に生活できる簡易宿泊所で受入れ、将来的にアパート自立に繋げます。

精神的な問題
 精神的な症状があることで住まいの定着が難しい方たちがいます。また隔離病棟で入院した体験がある人は二度と病院に行きたくないと言う方も多くいます。

 ⇒ さりげない会話から精神保健福祉士や看護師による面談に繋げ、医療扶助単給での通院に繋げられるよう働きかけます。よりしっかりとした信頼関係が構築できれば生活保護を申請して3月以降の通院に繋げます。

自由を求めて山谷へ
 上記とも一部重なりますが、貧困ビジネスからの自由、隔離病棟や更生施設からの自由、その他ブラック企業による搾取的な長時間労働、家族に対する責任と負担といった、義務・責任感等縛りの多い日本型社会から逃れて自由を求めて山谷にいらっしゃる方たちがいます。同居人とのいさかいで住む場所を失ったり、元受刑者で就労が難しく社会的に孤立してしまったりで山谷に辿りつく方たちもいます。


秋葉原周辺で空き缶を集めて山谷に向かう野宿者


 国際的に見ても、日本の生活保護制度は生活全般の支援に繋がる貴重な社会制度です。多くの方が生活保護制度によって救われています。

 ただ、生活保護への差別的な見方であったり、家族への扶養照会があったり、収入の分を(勤労控除分を除き)後日差し引かれることで受給者の就労意欲の妨げになっていたり、一律での支給が基本であるため貧困ビジネスによる囲い込み型施設が横行したり、負の側面も多く抱えることに繋がっていることもまた事実です。

 特に格差社会が進行する現在、人それぞれのニーズに適応した給付の仕方(生活状況に応じた扶養照会の緩和、医療扶助単給や住宅扶助との併給等)がより一般化することが大事ではないでしょうか。

 誰しもが誇りを持って生きていきたい。そんな野宿当事者である方たちの声から学び、生活保護制度のより有効な運用に対する提言にも繋げていきたいと思います。


一般社団法人結YUI:私たちについて

山谷の多様性を活かしたまちづくり、寛容で包容力のあるまちづくりを目指し、簡易宿泊所の運営事業や地域でのボランティア活動をおこなっている社会的企業です。

2009年より一般観光客を対象にした簡易宿泊所を運営し(生活困窮者の就労支援を含む)、2014年より生活保護受給者を対象とした簡易宿泊所を開設して見守り型宿泊所として運営してきました。2018年には多様性を活かす場所づくりとして「さんやカフェ」をオープンし、「さんやカフェ清掃隊」で地域の清掃活動を行っています。

『ボリさんぽ in 山谷|ホームレス支援をする義平真心さん』
代表義平の最新のインタビュー記事になります(チャリツモ 2021年3月28日公開)

昨年2020年4月の緊急事態宣言発令から現在まで、コロナ禍で生活保護となった方を法人の運営する宿泊所で計51名を受け入れてきました。その内何名かは他支援団体が運営するシェルターやアパートへの転宅が決まりました。

20代 9
30代 5
40代 14
50代 9
60代 13
70代 10  計60名(2021年3月1日現在)

その他、都の要請で路上生活を送る人をゴールデンウイークと年末年始に述べ22名受け入れてきました。

2020年5月から現在まで、野宿する人を対象に栄養ある温かい食事を届け、健康状態や生活状況等の聞き取りを行う「ごはん配り」の活動を行っています。生活保護となった方もお手伝いで参加しています。

今までの活動を活かし、今回の緊急支援の段階から、将来的には皆さんの地域での社会参画を目指します。

『さんやカフェ清掃隊』みんながボランティアで地域の清掃活動をしています


想定以上のご支援の額が集まった場合

■宿泊支援は4月15日まで延長、巡回看護と食事提供は継続して行います
3月は例年のように都が提供する仕事が無くなる可能性が高く、野宿の方を対象とした食事提供を続けます。生活状況が苦しく野宿が難しい方には場合に応じて宿泊を延長、必要な人を生活保護に繋げます。

■生活困窮の方を受け入れる住まいづくり
山谷の中心部は台東区にあります。台東区で生活保護を受給する方は台東区内での居住という原則があります。彼らの自主性を重んじて尊厳を保つことが出来る住まいづくり(見守り型宿泊所、シェアハウス型のアパート)を台東区内に準備するための資金とさせて頂きます。

荒川区で運営している見守り型宿泊所のありあけ。台東区側にも持つことが出来たらよりよい支援の体制づくりに大きく前進します。


■まちで活躍できる就労継続支援B型作業所をつくる
山谷では使用障害(依存症)の方が多くいらっしゃいます。地域清掃活動の他にも、例えば観光客も多いこの地域で自転車の管理を含めたレンタサイクルを行う、さんやカフェをはじめとした飲食店での食材となる野菜づくり等、自己肯定感の向上と社会参加に繋がる場所づくりとして就労継続支援B型作業所を設立するための資金とさせて頂きます。


地域の人も外国人もボランティアで多様な人が集まり地域清掃イベントを行った時の様子(コロナ前)

現在は生活保護受給中の方たちも、過去野宿を経験されている人が多くいらっしゃいます。そういった皆さんが地域清掃、ごはん配り、そして巡回看護にも参加しています。
生活保護受給者の皆さんが野宿の人を支える形で社会参加をする、山谷のまちづくりの一つの形となっていくでしょう。
今後も山谷のまちが、地域の分断と排除を越えて、多様性と共生のまちとなるよう活動していく所存です。皆さまの応援の声、ご支援、どうぞよろしくお願いいたします。


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