はじめに・ご挨拶

はじめまして、南部鉄器工房 及富(おいとみ)の菊地海人です。

南部鉄器工房及富 菊地海人

私たちのチャレンジに興味を持っていただきありがとうございます。

私はこの仕事に就いて6年目になります。まだまだ修行中ではありますが、及富の跡継ぎとして、職人仕事だけではなく、デザイン、新製品の企画、SNSを活用した広報発信に取り組んでいます。

私は伝統工芸、南部鉄器を家業とする家にうまれました。幼い頃より両親をはじめ、祖父、祖母、仲間の職人達が楽しそうにものづくりをする背中をみて育ってきました。子供ながらに自分も将来この仕事を一緒にしたいとあこがれたことを鮮明に覚えています。

私の幼い頃には、南部鉄器は骨董の古道具というイメージが強かったものの、現在南部鉄器は世界中の人に知られる存在になりました。

先人たちが、南部鉄器は世界に通用する工芸品であると誇りをもち、挑戦し、その結果が実ったのだと思っております。弊社では1954年に5代目及富がアメリカへ出展し、その後も代々海外の展示会に挑戦してきました。

海外での展示会は常に盛況。南部鉄器は一過性のブームではなく、世界中に着実に定着しつつある

しかし、数年前から私たちが展示するブースの隣で、私たちの制作するものと見た目がそっくりの鉄器を扱う海外メーカーが出始めました。私たちが新作を展示すると翌年の展示会には模造品が展示されています。

「こんなまがい物を誰が買うんだろう?」と正直甘くみていたのも束の間、世界中で販売されるようになり、日本国内においてもメイドインジャパンと産地を偽られて主要なオンラインショッピングサイトでも販売されているケースが相次いでおります。

今すぐできることとして昨年よりSNSを通じてお客様への注意喚起を発信することに取り組んでおり、同時に法的措置をとれないかと試みておりますし、意匠登録をすることで守ることも進めています。

ただ、それでも埒が明かずイタチごっこが続く中、正直、諦めかけていた時のことです。

海外のお客様から日本製の鉄瓶を欲しいという問い合わせをいただきました。
模造品があるということをその方自身もわかっていらっしゃって、

”及富のホンモノの鉄瓶がどうしても欲しい” とメッセージをいただいたのです。

その時に、世界中の人々に対して、もっと安心して本物を買っていただく場所をつくることが、われわれの使命であり、それがこれからの伝統産業、日本文化を守っていくために必要なことだと決心しました。

私たちの挑戦をぜひ応援してください。

及富 菊地

このプロジェクトで実現したいこと 

南部鉄器は、連綿と受け継がれた伝統的なデザインだけでなく、職人一人ひとりがその時代に即した個性的なデザインと機能、そして想いを形にすることで世界中に知られるメイドインジャパンの代表的なブランドとして世界中に認知されるようになりました。

表面のポツポツとした模様は南部鉄器の伝統的なスタイルである「霰(あられ)模様」

同じ霰(あられ)模様の「令和あられ」元号である令和の出典である万葉集の梅の句にちなみ、白梅のイメージで制作









しかし今、それに伴って大きな問題が発生しています。

それは、

“南部鉄器のニセモノが世界中で出回ってしまっている”

ということです。

具体的には、

その人気にあやかった"NANBU TEKKI"や”南部鐵(鉄)器”と銘打たれた南部鉄器とは、およそ異なる製法や産地偽装のニセモノが大量に出回るようになったということです。

これらのニセモノの多くは

✓南部鉄器の認識を誤認させる

✓品質に大きな疑念がある

✓アフターケアやサービスの質が低い

といった問題を抱えており、その結果として南部鉄器全体の評価を落とす大きな要因となってしまっているのです。

"NANBU TEKKI"や”南部鐵(鉄)器”を名乗るニセモノに海外のお客様が惑わされないようにするため、そして本物の職人が心を込めて本気で作る南部鉄器の魅力を正しく伝えるために、多言語で積極的な情報発信を実施し、南部鉄器だけが持っている魅力とその価値を届けることができるような海外向けのオンラインショップを制作したいと思っています。


400年の歴史を誇る南部鉄器とは?
南部鉄器は400年の歴史。及富は1848年 嘉永元年創業

南部鉄器は17世紀半ばに当時の岩手県北部を治めていた南部家が、鋳物師を京都などから招いて仏具や茶の湯釜をつくらせたのが始まりとされ、その歴史は400年にもなります。

南部鉄器の2大産地である、旧南部藩の盛岡、旧仙台藩の奥州。廃藩置県の後に、岩手を代表する工芸品として、南部藩の南部鉄器、岩手県南部の南部鉄器として総称されます。私たちの工房は奥州で興りました。

私たち及富は鉄器を専門に作るプロの職人集団として1848年(嘉永元年)に創業し、173年に渡りその技術と伝統を継承して参りました。


お茶が美味しく淹れられると海外で人気

国際博覧会や展示会などで一品一品手作りされる日本の伝統と職人の技術の高さから南部鉄器は人気となりました。

また、溶出する鉄分によりお茶が美味しく淹れることができることなども紹介されたこともあり、オークションでも高値で取引されるなど、欧米や東アジアを中心に人気が高まっています。

サビを防ぐために表面に酸化皮膜をつける「窯焼き」と呼ばれる南部鉄器特有の伝統技法。
鉄分が直接お湯に溶けだすことから、お茶やコーヒーを美味しく淹れることができる

南部鉄器が抱える課題

世界的に南部鉄器の人気に比例して見過ごすことのできない問題が増えてきました。

日本のAmazonで販売されているの南部鉄器の多くが海外製

“南部鉄器と称して海外で作られた安価な鉄瓶が市場に流通している”

これが、私たちが抱えている課題です。

試しに日本のAmazonで南部鉄器を検索してみてください。海外製と思われる鉄瓶がお膝元の日本であってもその半数近くをしめている状況に驚かれることでしょう。

それだけではありません。海外製の鉄瓶は、日本製に比べてその価格は半額以下で提供されています。

商品説明も機械翻訳と思われるつたない文章で、その内容は全くのでたらめなものです。同じくつたない文章の商品レビューは水増しされているとの指摘もあります。

また、製造元も日本の製造元らしい名前になっていますが、日本にはそのような製造元は存在していません。

海外のオンラインモールは8割が産地偽装

海外のAMAZONや楽天のようなオンラインモールではさらに劣悪な状況です。

”MADE IN JAPAN”や”NANBU TEKKI”として、海外産の鉄瓶が紹介されて販売されていますが、驚くことにおよそ8割が産地偽装のニセモノです。

産地偽装の南部鉄器がもたらす本当の問題とは?

これらのニセモノの南部鉄器が私たちにもたらす問題は以下の4つです。

1. 南部鉄器を求めて購入を頂いたお客様を誤認させる

残念ながら海外製の大量生産の製品を日本産の南部鉄器と誤認しながら、それに気がつかないで日々利用されているお客様が非常に多く存在しています。

2. 品質が悪く健康に悪影響を与えている可能性がある

鉄瓶などは直接口にするお湯やお茶を淹れる目的で利用されます。生産国や商標を偽装している製品ですので、生産工程は隠されており、原料である鉄や塗料の健康に関する安全性には大きな疑念が残ります。


3. 保証内容やアフターケアにも問題がある

製造国や製造元が偽装されていますので、保証の範囲や内容などが曖昧でアフターケアにも問題が残ります。

そして、これら3つの問題が南部鉄器全体の評価を落とすことにつながってしまうという現実があるのです。


商標権に関する保護活動

これまで私たちも南部鉄器の商標権を持っている岩手県南部鉄器協同組合連合会などを通じて商標の保護活動に取り組んで来ました。

しかし、中国では組合とは無関係の第三者により一部の区分において”南部鐵(鉄)器”の商標が取得されており、異議申し立てを行い裁判にて争いましたが、8年間にもおよぶ裁判の結果、残念ながら中国で第三者の商標が認められてしまいました。

現在、中国国内では商標権の問題から南部鉄器としては日本から輸出ができません。

つまり、中国で”南部鐵(鉄)器”としているものは日本産ではないものである可能性が非常に高いのです。

問題解決:世界中のお客様にダイレクトに南部鉄器お届けするECサイトを開発する

私たちが抱えている問題を解決するためには、このような不条理な実情を日本語だけでなく多言語で積極的に発信することが必要だと考えています。

しかし、同時にニセモノの氾濫と商標権などの問題は、情報発信だけでは十分に解決できないとも考えています。

そこで、“私たちが直接オンラインサイトを開発して南部鉄器をお客様のもとに届ける” ことで、この問題を解決できると考えました。

これまで私たちは主に百貨店や催事場、国内向けのオンラインサイトを通じて製品をお届けしてきました。その経験やノウハウを活かし、世界中のお客様が南部鉄器の真贋や品質に関する一切の不安なく、安心してご購入をいただけるように及富が責任をもって直接お客様までお届けしたいと考えています。

そのための多言語・越境オンラインサイトを制作するにあたり、クラウドファンディングを利用して皆様のご支援をお願いしたいと思っています。


伝統的な南部鉄器の制作工程

及富では、型作り、鋳造、仕上げ、着色、出荷まで一括生産をしているのが特徴です。

制作工程を動画でまとめています。


型作り

鋳物砂を用いた型の制作にあたる師弟。
地元のクラフトビールブランドの看板を作る様子。30代の職人(左)が70代(右)の師匠から技術を習得している

鉄器の型を作る様子。生型製法と呼ばれる技法。
砂の調合、水分量、細かさを管理し、鉄器の模様一つ一つを再現する

鋳造

湯汲(ゆくみ)に入った鉄を型に流し込む工程。
鉄の温度が製品の良し悪しを左右するため、肉眼で見極めながら作業にあたる。画像の作業者は専務 菊地章

仕上げ

型から取り出した鉄器をヤスリや砥石を用いて、丹念に仕上げていく

着色前の検品作業。水漏れ箇所がないか、目に見えないヒビや割れがないかを検品する

着色

着色、乾燥の終わった鉄器を検品している様子。
品質を保つために各工程での検品が入念に行われる

鉄瓶の着色と乾燥 

南部鉄器は大切につかえば、世代を超えて100年以上利用できる道具です。

「祖母からうけついだ鉄瓶、調べたら及富さんの鉄瓶でした。」

「小さい頃にみた思い出の鉄瓶を新品で買うことができて嬉しかったです。」

そんなお客様の思い出とともに、紡がれてきた物語もまた私たちの自慢です。

資金の用途

オンラインショップ開発費
コンテンツ開発費
翻訳費
広告費
その他手数料

スケジュール

クラウンドファンディングスタート 7月中旬〜

クラウンドファンディング終了   8月末

リターン商品の送付開始      11月〜

オンラインショップ公開  11月末〜 
※リターン商品の送付とオンラインショップの公開は可能な限り前倒ししたいと思います。

最後に・・・

“本物の製品とそこに込められた想いをしっかり届けたい!”

これは私たちが本プロジェクトを通して実現したい大切な想いです。

私たちは1つ1つの南部鉄器を手作りで心を込めて作っています。

そして、厳しい審査を潜り抜けて市場に出るそれぞれの南部鉄器には私たちが170年以上かけて培ってきた技術でのみ再現できるクオリティと誇りいっぱいに詰まっています。

南部鉄器は私たちの誇りです。

この想いに賛同していただき、世界中の人たちに私たちが作る「本物」の南部鉄器の魅力が伝わることを願います。

私たちが一つ一つ心を込めて作った南部鉄器をお届けします

及富について

5代目 及川富之進 が作成した継承図私たちは、1848年(嘉永元年)現在の岩手県奥州市水沢羽田地区にて初代 及川利源太により宝生堂として創業しました。

伊達藩の保護のもと伊達家のお抱え釜師として活躍し、茶の湯から始まった及富の歴史は170年を越え現在も継承されています。

「富を及ぼす」と書いて「及富(おいとみ)」私たちの工房の名前で5代目及川富之進が由来です。

鉄器を通して、多くの人に富をもたらしたい。それが私たちの願いです。






株式会社 及富

代表取締役 及川一郎

岩手県奥州市水沢羽田町宝生57

TEL 0197-25-8511

FAX 0197-25-8513


<All-in方式の場合>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。



【2021/07/26追記】

当CAMPFIREでの問題提起がTwitterなどのSNS上で話題となったこともあり、Amazonでの南部鉄器の模倣品が急減するなど大幅改善がされているようです。

残念ながら現在でも一部に残っていますが、皆様のご支援と行動の結果が具体的に現れたものと大変うれしく思っております。

同時に一般の消費者の方がその真贋を判断することは難しく、正規品も誤って模倣品と判断するようなことがないようにしたいと考えています。

参考まで海外製の見分け方を2つご紹介します。

①購入前に商品の「販売元」の住所を確認する
代表者は日本人のような名前となっていることがありますので「住所」を確認してください。中国発送の場合「CN」日本の場合「JP」と記載があります。

②購入前に商品の「メーカー」「ブランド」の名称を検索する
国産メーカーの場合、検索エンジンでそれらを検索すると公式WEBサイトを確認することができます。

それ以外にも「Q&A」や「フィードバック」の回答内容に違和感があるものや価格が異常に安いなども判断材料となりますが、上記の2点をご確認いただけるだけでも多くの模倣品を避けることができます。

Amazonには多くの正規品も出品されていますので誤解のないように引き続きご支援をお願いいたします。


【ネクストゴールについて 2021/07/30追記】

多くの皆様からのご支援のおかげで、目標の金額を達成することができました。
高すぎる目標ではないか?と当初は不安に思っておりましたが、公開からわずか1週間で目標達成ができたことに皆様への感謝の思いでいっぱいです。

同時に8月末まで私たちのクラウドファンディングは続きます。
1ヶ月の期間を残しておりますので、私たちの考える「ネクストゴール」に関して、追記という形でお伝えさせてください。

多くのクラウドファンディングでは、目標金額を達成した際に「ネクストゴール」といって目標とする金額を増額して再提示することが通常のようです。

私たちもその通例にならい関係者で話し合いながら、ネクストゴールを設定するべきか検討をしました。そしてネクストゴールを設定しないことを決定しました。

理由は、シンプルに「海外向けのオンラインショップの費用捻出」、「南部鉄器のおかれた模倣品の現状を多くの人に認知していただく」という当初の目的をおおむね達成できたと判断したためです。

目標金額を超えて集まったご支援につきましては本プロジェクトのさらなる拡充にあてさせていただきます!

ありがたいことに、南部鉄器を買うのであれば、当クラウドファンディングの支援として協力したいという声もいただいております。そのため、リターン品の追加はご支援者様のご要望に答える形として終了日まで適宜実施していきたいと考えております。

引き続きクラウドファンディング開催期間終了まで応援よろしくお願いいたします。

株式会社 及富 菊地海人

  • 2022/10/06 15:49

    こんにちは、及富の菊地海人です。今年初めに海外向けオンラインショップを公開してから半年以上が経過し、その後の反響をご報告いたします。2月公開当初の注文は1件。3月は4件。と少しずつご注文が増えてきており、9月には20件と、着々と注文件数が伸び続けております。世界情勢がいまだ不安定な中、円安が追...

  • 2022/07/27 08:54

    こんにちは、及富の菊地です。クラウドファンディング開始から1年が経過。その後の進捗をご報告いたします。2月に多言語対応のオンラインショップの公開をして、半年間に続々と海外からのご注文をいただくようになりました。特に、アメリカからのご注文をたくさんいただいています。円安という状況も影響してか、注...

  • 2022/01/28 15:44

    お世話になっております。及富の菊地海人です。いよいよ本日より、海外向けオンラインショップの公開が開始しましたことご報告いたします。https://oitomi.com/また、ご支援いただきました方のお名前の表示について、サイト内のスペシャルサンクスにて公開しております。https://oito...

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