はじめまして。特定非営利活動法人glolab(グロラボ)の柴山と申します。

glolabは主に15歳から24歳くらいまでの外国にルーツを持つ若者のキャリア教育とコミュニティ創出事業に取り組んでいる団体です。

私は、以前外国にルーツを持つ子どもの高校進学支援をするNPOに勤務していました。毎年数十名の子どもたちを日本の高校に送り出していたのですが、中には高校生活がうまくいかず中退してしまう子や進路に悩んでNPOに相談に来る子がいました。希望をもって高校に入っても、友達関係や勉強の難しさなどから自信を失ったり、その先の未来が具体的に描けなかったり。日本では高校に行かないとその先は難しいため高校に行こうと支援をしていましたが、高校進学後の道も平坦ではないことを実感しました。一方彼ら彼女らは、それぞれがユニークな個性を持ち、前に進もうと、もがいていました。

私は、「高校に入学したらそれで終わりではない。立ちはだかる壁をどうやったら乗り越えられるか共に考えてくれる大人の存在、困ったら相談できて、成長を後押ししてくれる場が必要なのではないか」と強く思うようになりました。

そんなとき、外国にルーツを持ち自身も進路選択に悩んだ経験をした景山と出会い、glolabを立ち上げました。

glolabの理念

具体的には高等学校や支援団体と連携した進路支援プログラムや、地域社会をフィールドに将来を考える「みらいチャレンジプログラム」を実施しています。また、キャリア進路支援動画の配信、自分の状況を知るLINE診断というツールも提供しています。

何もないところから始めたglolabですが、2022年度(2022年11月現在)は62人の高校生にキャリア支援プログラムを届けることができました。


こちらのデータをご覧ください。

文部科学省総合教育政策局 国際教育課 『外国人児童生徒等教育の現状と課題 』(令和3年5月)より作成

文部科学省総合教育政策局 国際教育課 『外国人児童生徒等教育の現状と課題 』(令和3年5月)より作成

これは、文部科学省が令和3年度に実施した「公立小・中・高等学校等における日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等について調査の結果」です。

日本の全高校生の大学や専門学校への進学率は、71.4%に対し、日本語指導が必要な高校生の進学率は51.9%で、21.5ポイント低く、進学も就職もしていない者の率は、全高校生が4.8%に対し日本語指導が必要な高校生は、13.4%と2.8倍となっています。同じ日本の高校に通っていてもどうしてこのような格差が起きてしまうのでしょうか。

もちろん日本語が母語ではない生徒にとって大学や専門学校の受験のハードルは高いと言えるでしょう。でもそれだけでしょうか。

2020年に私たちは、70人の外国にルーツを持つ若者と教職員に調査を実施しました。その結果、4割の方が「進学や就職の意志があったが、大学や企業の情報に十分にアクセスできず、もっと情報がほしかった」と回答しました。

そういった状況のなか、将来像を描けずキャリアパスを十分に検討できないまま、家族やエスニックコミュニティなど限られた大人からの情報を基に進路選択をしたり、場合によっては進学・就職を断念して帰国するケースがあることもわかりました。また、3割近くが「外国ルーツの大学生や専門学校生徒の交流」「ロールモデルの経験談」「インターンや働く体験」が必要だと回答しています。

この調査結果から「日本語」の課題の上に

 ● 情報へのアクセスのしづらさ
 ● 相談の場の不足

の課題があるのではないかと私たちは考えています。

そして、それ以外に制度の壁もあることがわかりました。


これは、Aさんというフィリピンにルーツを持つ生徒から聞いた言葉です。

みなさんは「公用」という在留資格*をご存知でしょうか。東京には大使館がたくさんありますが、大使館でドライバーやメイドさんとして働く外国人がいます。そういった外国人やその子どもは「公用」という在留資格で日本で暮らしています。

Aさんの在留資格はこの「公用」でした。将来ITエンジニアになるために専門学校に行きたいという夢をもっていましたが、兄弟が多い上、家計は苦しく、保護者が専門学校の学費をすべて払うのは難しい状況でした。私にコンタクトをとってきた時はすでに高校を卒業してから2年も経っていました。「高校生の時、学校の先生が貸与型の奨学金があることを教えてくれたけど、私の在留資格では申請できなかったんです。」とAさんは言います。「公用」の在留資格では、アルバイトもできないので、何もせず家で家事だけをしていたそうです。Aさんは、それでも将来に向けて何かしないといけないと思い、Facebookで私を見つけて連絡をしてくれました。私は、①高校を卒業していれば、働く在留資格に変更できるので*、学費を貯めるために一旦働く選択肢もあること、②公用でも借りられる奨学金がないわけではないことを助言しました。Aさんはその後、働くことができる在留資格に変更しました。そして、今、進学を目指して学費を貯めるために働いています。

Aさんは一歩前に進むことができましたが、高校時代に適切な助言や伴走支援があれば、10代後半の大切な2年間を無駄にすることはなかったのではないでしょうか。

Aさんのような「公用」という在留資格以外に「家族滞在」という在留資格で暮らす子ども・若者も多くいます。日本には、いろんな国のレストランがありますが、そのレストランのコックさんの子どもたちは、保護者のコックさんに扶養されていることで、「家族滞在」という在留資格で日本に住んでいます。コックさんは一例ですが、日本で仕事の在留資格で来ている保護者の子どもたちに付与される在留資格が「家族滞在」です。

こうした「公用」「家族滞在」の若者たちは、多くの奨学金から対象外とされています。日本語、情報のアクセス、相談の場の不足といった課題の上に、「制度の壁」を抱える生徒がいるのです。

* 一定の要件を満たせば高校卒業後、「家族滞在」「公用」から働くことが可能な「定住者」「特定活動」という在留資格に変更が可能です。https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri07_00122.html

 


ルーツや環境に関わらず、すべての若者が自らの道を納得感をもって進める社会、進学意欲のある高校生みんなが平等に進学するチャンスを得られる社会であってほしいと、私は願っています。

『この進学の壁に対して、glolabとして何かできないか、学校外の民間でできることはないか。』

そんな思いから新しいプロジェクトを立ち上げました。それが「NEWDOOR進学プレッププログラム」です。

このプログラムの対象は、外国にルーツを持つ高校生の中でも特に制度の面でも困難さを抱える「家族滞在」「公用」の在留資格を持ち、かつ、進学をする意欲があっても進学をするのに経済的な困難を抱えている生徒です。


ただ情報提供や進路選択をサポートするだけではなく、このプログラムを通して自分の力で直面する壁を乗り越える力を培ってほしいと考えています。そのような力を持った若者は、様々な領域で活躍できると信じているからです。

そのために、NEWDOOR進学プレッププログラムは、4つのプログラムを提供します。

①奨学金等の必要な情報にアクセスする方法を学ぶ「情報収集」講座
②お金の管理について学ぶ「 マネーリテラシー」講座
③壁を乗り越える考え方/生き方を学ぶ「ロールモデルとの対話」
④日本語の作文力を向上させる「日本語作文クラス」


プログラムの最後に、受験費用として10万円を給付します。(この10万円は、プログラムの趣旨に共感くださった個人の方のご寄付を基金として、生徒に給付します。)

経済的に困難を抱える家庭には社会福祉協議会等による受験費用の給付や、自治体によっては社会福祉協議会等の受験費用の給付や貸付制度もありますが、やはり家族滞在や公用の生徒は対象外となっていることが多いのが実情です。

そこで私たちglolabは、プログラム参加者に受験費用を給付することにしました。(目的外の使用を避けるため実費支給します)

2022年度は助成金を得てパイロット版プログラムを実施し、現在3名の生徒がプログラムに参加しています。


私たちは、2023年度はさらにプログラム内容をブラッシュアップして、7名の生徒にプログラムを届けたいと考えています。


みなさんからの応援の寄付は、キャリアプログラム講師謝金、日本語講師謝金、教材費、コーディネータ人件費として使わせていただきます。

2023年度生 7名 (2023年4月ー2024年3月)約1,350,000円
キャリアプログラム講師謝金 50,000円
オンライン日本語教育運営費 約800,000円(日本語講師謝金、教材費、コーディネータ人件費)
プログラムコーディネータ人件費(プログラム企画実施、調整、伴走支援) 約500,000円

2022年度生 フォローアッププログラム 約300,000円
オンライン日本語教室運営費 約200,000円
プログラムコーディネータ人件費(進路相談等伴走支援)約100,000円

CAMPFIRE 手数料 9% 約150,000円

NEWDOOR進学プレッププログラムは、このようなスケジュールで実施していきます。

2023年1月 2023年度生 公募開始
2023年3月 2023年度生 面接/対象生徒決定
2023年4月 2023年度プログラムスタート

私たちの活動は多くの方々によって支えられております。

まるはちさん(NEWDOOR進学プレッププログラム支援者) 「様々な家庭環境が理由に就学が困難な外国人ルーツの若者たちにチャンスを与えたい」「身内ではできなかった第三者だからこそできるフォローをしたい」「外国ルーツの若者たちの可能性を広げたい」そのような話を(glolab代表理事)柴山さんから伺った際に私は感銘を受け、何よりも自分ができなかった事の贖罪に対し、できる範囲の事をしたいという思いが、支援に至った動機です。

若者には無限の可能性がある、というのは与えられる環境次第です。

自力があっても、それを発揮できるスタートラインに立てるかどうかで未来の選択肢の幅に大きく影響します。1人でも多くの外国ルーツの若者たちが新しいドアを開けて学びの機会をつかみ取り、未来を切り開いていけるよう、切に願っています。

尾寅さん、畑中さん、川田さん(住友商事100SEEDサポートメンバー)住友商事サポートチームの尾寅・畑中・川田と申します。当社は、社会貢献活動プログラム「100SEED(*)」の一環として、外国ルーツ青少年の教育課題に取り組むglolabさんをサポートしています。この活動がスタートして早や3年が経とうとしています。

当社から多数のメンバーが参加し、glolabさんと一緒に外国ルーツ青少年の教育課題に取り組んで参りました。その過程で、様々なプログラムを通じて成長する子供たちの姿を見守ってきました。このNEWDOOR進学プレッププログラムも、非常によく練られたものになっており、少しでも多くの外国ルーツ青少年の成長に役立つことを心から願うとともに、その輪が広がって大きな流れとなってくれることを期待しています。

(*)100SEEDとは、世界各地の住友商事グループ社員が、自ら対話し、積極的に参加することで、それぞれの地域社会の教育課題の解決に取り組む社会貢献活動プログラムです。

日本に暮らす外国にルーツを持つ若者は、日本で学校教育をうけ、成長していき、一人一人が未来の社会を担う大切な存在です。しかしながら、適切なサポートやチャレンジの機会が得られず、本来持っている力を社会で発揮できない現状があるのも事実です。翻って考えれば、多様な背景を持つ子どもたちを支える制度があれば、日本社会への貢献度も自然と高まるでしょう。つまりこれは、子どもたちの問題なのではなく、社会制度の課題であると言えます。

このプログラムで受け入れられる生徒の数はまだ多くはありませんが、今後、プログラム内容のブラッシュアップしてモデル化することによって、多くの波及効果を見込めます。

社会に生きるすべての若者が自分が望む道に進める社会をいっしょに作りませんか。 



<募集方式について>
・本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。
・glolabは非営利法人ですが、このクラウドファンディングを支援することで、支援者が税制優遇を受けることはありません。

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