6万6千年前に南アフリカの洞窟で、喉頭降下がおきて、母音を発声できるようになった人類は、コンピュータネットワークの時代にどのように生きていくのがよいか。これは画家ポール・ゴーギャンの問い「私たちはどこから来たのか。私たちは何者か。私たちはどこへ行くのか」に対する、私の答です。

私は、2007年4月に、日本人としてはじめて、最古の現生人類遺跡である南アフリカ共和国東ケープ州のクラシーズ河口洞窟を訪問しました。この洞窟は、ほとんどすべての人類学の本で最古の現生人類洞窟として紹介されています。どうして最古の現生人類洞窟だと考えられているかというと、この洞窟の中で、頤(おとがい、下顎の先)が発達して、肺の空気の出口である喉頭が降下しても窒息しなくなり、母音の発声が可能な声道を獲得したからです。(我々現世人類と他の霊長類の最大の違いは、母音を発声する声道の有無です。)

以来、私は、言語を獲得した人類、言語の脳内処理メカニズムについて、学際的な研究を続けてきました。その成果として、従来謎であった人類の起源、言語の脳内処理について、全く新たしい仮説を得ました。

・いつ、どこで、どのようにして、言語を使う人類が誕生したのか。 (南アフリカで7万2千年前にクリックという子音を獲得し、それを使っているうちに下顎が発達して、母音を発声できる声道を獲得した。クリックー母音二段階進化)

・言語処理は、脊髄反射の回路を使っていて、概念装置は、脳室内の脳脊髄液中を浮遊するBリンパ球である。

・文法は脳幹聴覚神経核の方向定位能力を転用している。そのため文法を使うようになると、ヒトは言語をモノラルで聞き取る。

・文字は、広大なメソポタミア地方を管理する行政上の目的のために生みだされたが、それを使って知識を書き残すことで、世代を超えた急速な知的進化が起きた。これが文明である。

・脊髄反射の回路を言語処理に使っていることの制約(新たな言語記憶と意味記憶をどう獲得するか、言語情報の誤り訂正をどうするか、生活に結びつかないことへの知的好奇心はどうやって向上させるか、など)を乗り越えることで、人類はさらに進化できる。

これらの概要は昨年末にクーリエジャポンで「人類言語のディープ・ヒストリー」として三回連載させていただきました。(有料部分を雑誌を購読せずにお読みになりたい方には、ワードファイルでお送りしますので、ご連絡ください。)

https://courrier.jp/columns/101724/

人類が言語を獲得した「瞬間」にはこんなことが起きていた

https://courrier.jp/columns/104945/

「文字の誕生」で人類は何ができるようになったのか?

https://courrier.jp/columns/107874/

野生動物「ヒト」を「人間」へと変えた「言語の論理性」の力

昨2017年には、ロシア、ガーナ、スペイン、パキスタンほかの7つの国際学会で、研究成果を発表してきました。学際的な研究成果を共有し、検証していただくためにあたっては、日本国内の学会に適当なものがないために、国際学会に参加するよりほかに方法がありません。

私は、2015年3月に会社を辞めて、退職金や雇用保険を使って海外出張を続けてきましたが、いよいよ旅費がまかなえなくなってきました。今年は手始めに、3月にロシア、4月にパキスタンのカシミール地方で、国際学会が予定されています。

ロシアの学会には論文が採択されましたが、渡航はしません。パキスタンのカシミール地方で開催される学会に参加するための渡航費用(航空券、滞在費、査証取得費用など)をクラウドで公募させていただきたいと考えております。

▼このプロジェクトで実現したいこと

デジタル言語学の仮説を世界の研究者に提供し、人類の知的進化を促進する。

▼プロジェクトをやろうと思った理由

退職金が尽きてきて、旅費がまかなえなくなってきたため。

▼これまでの活動

2007年から研究を始め、日本の電子情報通信学会、情報処理学会、人工知能学会、日本進化学会などで学会・研究会活動を行うことで、仮説を構築した。
2012年以降は、国際学会に参加してきた。(すべて自費で参加)

▼資金の使い道

国際学会への参加費用と渡航費用

▼リターンについて

パトロンの皆さまは、最古の現生人類遺跡で撮影した画像と私が海外で発表した講演(英語、日本語)を自由にダウンロードできるサイトへのアクセスができます。(今回のロシアでの論文と、パキスタンでの予稿論文を含む)

 

 ▼最後に

この人類と文明の研究は、石牟礼道子さんの「水俣病はチッソが悪いのではない。人類文明の原罪である」という言葉を読んで、人類とは何者だろうか、文明とは何だろうかという疑問に遭遇したことから始まりました。

原罪というのは、何も悪いことをしていなくても、罪をもつという考え方です。デジタル言語学の結論では、人類は原罪をもっていません。

問題はむしろ、人類が言葉の正しい使い方を知らないことにあります。

言葉を正しく使うことで、新たな文明が始まり、ヒトは人間になることができます。

シュメールで出土した楔形文字の彫られた粘土板(ロシア、エルミタージュ美術館蔵)

文明が文字を生んだのではない。文字を発明したことで文明が生まれた。文明は言語的現象である。

南アフリカ共和国東ケープ州キングウィリアムズタウンにて(2012 年撮影)

南アフリカ共和国ケープタウンにある南アフリカ博物館(IZIKO)にて、

最古の現生人類洞窟クラシーズ河口洞窟で出土した頤の化石

第19回国際言語学者会議で発表した「概念の分子構造」

2013 年の第19回国際言語学者会議で発表した「文法の量子生力学」

1924年に発見されたアウストラロピテクスの化石「タウングチャイルド」オリジナル

 

 第19回国際言語学者会議でのポスター展示、N. チョムスキーにポスターを説明(2013年7月、ジュネーブ大学にて)

 

 

 

  • 2019/07/19 16:10

    *キャンプファイアの支援者の皆さま、潜在的支援者の皆さま*昨年3月にご支援をお願いしたあと、20の国際学会・国内研究会ならびに台湾大学と京都大学での講演を無事に終えることができました。20の学会・研究会に参加するにあたってかかった費用は、およそ200万円です。(20のうちで旅費が支給されたのは...

  • 2018/05/15 14:03

    こちらの活動報告は支援者限定の公開です。

  • 2018/04/29 08:55

    最終日です、よろしくお願いいたします。   今、言語獲得の生成アプローチの学会で発表した、「文法処理の脳内メカニズム(仮説)」の提出に追われています。   この秋にイギリスのケンブリッジ大学出版会から本になる予定です。   クーリエジャポンでも書いたように、我々は母語を片耳だけで聞...

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