目的

 文化の国際化と世界水準が求められている昨今、「国」という大きな単位が持つグローバリティは、それを構成する最小単位である「個人」や「地方」が持つ「主体性」と「革新性」、即ちローカリティが支えるものであると考えます。また、ローカリティは個々の人間の特性に支えられているように思われていますが、それは個々の特性を発揮し活躍できる土壌が大前提になっています。その土壌に必要な文化素養の育成と水準向上を目的としたものが本構想です。
 「固有文化の中でも常に変容を続け、その在り方を問う」という芸術本来の特性を生かし、コンテンポラリーアートをキーワードとした交流事業の中で、国際相互理解を進める事が可能であると考えるに至りました。そして、そのローカリティの理解から得られる新しい観点により、各国の持つナショナリティやグローバリティが再発見・再確認されることを期待しています。
 以上のことを実現させる可能性を秘める人・場所などのネットワークを持つ福井大学教育学部、ベラクルス州立大学美術研究所、ベラクルス州立大学付属ハラパ人類学博物館、ハラパ彫刻公園、福井市美術館の協力の約束を取り付けた上での提案となります。

内容

 「日本人現代美術作家6人によるグループ展(ベラクルス州立大学付属ハラパ人類学博物館)」
 大きな空間を占有する彫刻作品を輸送する計画であり、現地博物館での展示も壮観なものになることは予想するに易しい。空間が現代美術や芸術文化にとっては「資産」であることを両国に示唆する良い機会となるはずです。

会場

 「ベラクルス州立大学付属ハラパ人類学博物館」
 メソアメリカ最古の文明といわれるオルメカ文明やメキシコ湾岸に栄えたトトナカ文明の遺物を中心に展示している近代的な博物館での展示となる予定です。館所有の展示物は保存状態、大きさ、彫刻の質のいずれをとってもメキシコ国内でも最も優れているといわれているオルメカの巨石人頭像(オルメカヘッド)を筆頭とした考古資料です。これらは美術品としての価値も高く、メキシコ固有の造形感覚を色濃く見て取ることのできる作品群です。

期待される成果

 国際文化交流を考えたとき、教育を基盤として広く効果的な継続的文化振興事業が欠かせないものとなります。我が国の多彩な文化芸術の対外発信や国際文化交流の推進、文化芸術の国際的な創造・発信拠点の形成を図るとともに、我が国の専門家の派遣や現地の人材養成を通じて、海外の文化遺産の保護に係る国際協力を推進する必要があります。地域の文化施設がそれを担うべき役割を求められていることは明白であり、大学等の教育機関がそれらの活動に積極的に関与してきています。
本事業は両国における独自の芸術文化を理解し橋渡しをする、ネットワークの形成に携わる人材の輩出が期待できるものです。福井・ハラパを拠点としての発信で、地方の地域性とを前提としながらも国際社会の要求にも充分応え得る本質的で上質な文化の醸造が可能となります。
 今回の福井市・ハラパ市2都市間での交流は、ともに県庁所在地・州都であり、大学をはじめとした美術館・博物館・研究所を多く有した文化教育拠点としての特性がすでに備わっていることを基に進められてきており、また、昨年度から継続的に両大学間で人的交流もなされ、成果を上げてきています。
 2020年には日本で行われることが決定しているオリンピック・パラリンピックにおいても多角的な文化プログラムで国際文化交流事業を催し、文化芸術立国として世界にアピールしていく事が謳われており、「経済財政運営と改革の基本方針」や「日本再興戦略」に於いても言及されています。この数年間で起こるムーブメントを一過性のものではなく継続性を持たせることを視野に入れての活動は今後どの分野においても不可欠なものとなるでしょう。グローバル化により地域の持ち得る意義を再確認し、世界に向けて発信することとなり、これからは一地方、一地域に止まらない文化振興活動となるものです。

グループメンバー

 

坂本 太郎│SAKAMOTO Taro

1970年 埼玉県生まれ
1997年 愛知県立芸術大学美術学部美術科彫刻専攻卒業
1999年 愛知県立芸術大学大学院美術学部美術研究科彫刻専攻修了
2000年 愛知県立芸術大学修士課程修了

ステイトメント
それはごく微かな虫の翅音であったり。
それはごく幽かな月の陰でもあったり。
それは時に多様なカタチをともなって。
それは常にスケールを変えながら。
ワタシの前に遠くから届く。
目の前に落ちてきたものを手に取り。
手触りを楽しむように掌でころがして見ている。
モノが出来上がってくる過程にはいつもそんな感覚が身体の中にあります。

自然と向き合うとき、太古の昔から綿々と続いてきた時間の流れを感じる瞬間がある。感受したそれらを、空間に佇み自身と対峙する存在として表現することを 毎回の目指すところとしている。大きな動物と向き合っている時に感じるような、 静謐かつ圧倒的な存在感と空気感、強い意志を持つ作品を、生み出していきたい。


展覧会
<主な賞歴>
1997年 国際瀧富士美術賞
1997年 愛知県立芸術大学美術学部卒業制作展 桑原賞
1999年 愛知県立芸術大学大学院修了制作展 買上賞
2002年 愛知教育文化財団 第13回助成賞
2006年 ドイツ国際木彫シンポジウム「FLUR2006」一等賞
2009年 冨嶽ビエンナーレ 入選
2010年 NYフリーマン財団VSCアジアンアーティストフェローシップ助成賞

<主な個展>
1999年 ギャラリー妙(名古屋)
2000年 ギャラリーSOL(東京)
2001年 フタバ画廊(東京)/ 2002年、2004年、2008年
2003年 小野画廊京橋(東京)
2004年 小島びじゅつ室(東京)/ 2009年
2005年 メタルアートミュージアム(千葉)
2005年 ギャラリーアートポイント(東京)
2006年 ギャラリー坂巻(東京)
2007年 GALLERY IDF(名古屋)/2008年, 2009年, 2010年, 2013年,2016年
2007年 中京大学C.スクエア(名古屋)
2007年 Hilton Nagoya Art and Dine Seasons(名古屋)
2009年 イナガキコミックスギャラリー(愛知)
2009年 ギャラリー山口(東京)
2011年 red mill gallery (アメリカ バーモント)
2011年 E&Cギャラリー(福井)
2012年 コバヤシ画廊 (東京)/2013年,2015年
2015年 ヴェラクルス州立ハラパ彫刻公園

<パブリックコレクション>
「水源」愛知県立芸術大学
「園長先生」西春幼稚園
「まなざし」笠松刑務所
「UBUSUNA」笠松刑務所
「Cocoon of Forest」FLUR(ドイツ国際木彫シンポジウム), エアルバッハ, ドイツ
「Voice」ヴェラクルス州立ハラパ彫刻公園

 

 

 

 

 

 

 

遠藤 研二│ENDO Kenji

1967  埼玉県生まれ
1993  武蔵野美術大学卒業
1997  愛知県立芸術大学大学院修了
1999  武蔵野美術大学「パリ賞」および国際交流基金の助成を受け渡仏
2000  ドイツ・ベルリンにて滞在制作
2001  アイルランド共和国にて滞在制作(2003・2005 にも)
2005  アーティスト・イン・レジデンス『C. A. R. K. 』ディレクター
2006  イギリス・ベルファストにて滞在制作
2009  アメリカ・バーモントストゥーディオセンター・フリーメンアジアンアーティストスカラシップ受賞
2010   ポーラ美術振興財団「美術に関する国際交流助成」受賞

ステイトメント
私は私自身の芸術概念に「人類の希望」ということをテーマに選んでいる。私はかつての1960年代、米ソの冷戦時代に両国がその国威を現すために宇宙開発競争をしていた時代に生を受け、その「人類の希望」という『宇宙』がたびたび報道によりお茶の間をにぎわせていた時代に幼少期を過ごした。世界中の人間がアポロ計画の映像に注目していた非常に夢のある時代だったと思う。
しかし最近はこのような動きがあまり見られない。高度に発達した情報化社会が虚像作り出し、いちはやく情報が手に入る事によって世界の様々な事象が良くも悪くも成長し、非常に多くの事柄を発生させ、それによって事態はより複雑化し、常に混沌を生んでいるからである。
今まさに人類の希望は失われつつある。そんな疲弊した社会の中、私は芸術こそが人類に希望を与えるものだと考え、微力ではあるが私自身が芸術活動をすることで人々が希望を持つきっかけになればよいと思い活動している。私の芸術概念は「人類の希望」であり、それは「人類の宇宙進出」にあると考えている。それゆえ私の作品は宇宙を連想させるものであり、宇宙の疑似体験できるものを制作している。
私は自身の作品を介して人々に宇宙への夢を持ってもらい人類の希望である宇宙開発を活発化するようなことになればよいと考えている。近未来に我々が宇宙旅行できる時代も近いと聞くし、人々が宇宙空間で生活するような時代が来るかもしれない。疲弊した社会を芸術が救うと私は考えている。そして人々は芸術に対してその期待があるからこそ、それこそが人間社会から芸術が無くならない理由のひとつであると言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

竹下 真澄│TAKESHITA Masumi

1978  静岡県生まれ
2002  愛知県立芸術大学美術学部彫刻専攻 卒業
2003   同 大学院美術研究科彫刻専攻 修了
現在    静岡県立清水南高等学校 非常勤講師
      愛知県立芸術大学美術学部 非常勤講師

ステイトメント
『記憶の断片から物語へ』
私の心の中にある芸術に対しての無意識的欲求は、幼いころに体験したものだ。それはカトリック教会によって創造された荘厳なる空間と、そこに佇む威厳ある男性、幼い子供を抱く女性の姿だった。
もうひとつは私が生まれ育った自然が豊富な環境だ。山に足を踏み入れれば、ここにも荘厳な空間とそこに佇む威厳ある巨木、実り豊かな植物の姿があった。
そしてこの二つの「記憶の断片」が重なるのだ。もしかしたら私が作り上げた想像の産物かもしれない。記憶の断片と断片を繋ぎ合わせていくものが、自分自身の「在り方」であり、物語なのだ。

『少女の姿』
もし他者が自分の鏡であり、その存在によって自分を認識するのなら、他者としての存在でしか認識できない異性というものは、もうひとりの自分の姿なのではないだろうか。この他者からの認識の断片によって作り上げる姿は、永遠に捉えきれない女性なのだ。旧約聖書の創世記に謎の女性が出てくる。それはアダムが想像されたとき一緒に創造された女性だ。それはきっとアダムにとって永遠に捉えきれない女性の姿なのかもしれない。

『現代のアイコン』
現在、世の中には少女をアイコンにしたものがたくさん存在している。それはきっと現代の男性が物語を求め、永遠に捉えきれない女性の姿を求めているからだと考えている。なぜ求めるのか。アイコンによってのみ自分の存在意義を確認できるからではないだろうか。自分の象徴となり、物語や伝説を付け加えていくことによって特別な存在になるのだ。アイコンであるもう一人の自分が賞賛されることによって、自分も疑似体験ができる。そこでやっと自分を認識できるのだ。

 

 

 

 

 

下平知明│SHIMOHIRA Tomoaki

1978 佐賀県生まれ
2003 愛知県立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
2012 名古屋造形大学非常勤講師
2014 愛知県立芸術大学非常勤講師

ステイトメント
湧き上がってきたり潜んでいたりする様々な感情を、自分から取り出して別の個体として出現させるようなつもりで作っています。
誰に言うとも無い思いを形にしようと努めているのですが、日常の些細なことから、時にはあまり人に言いたくないような感覚であったりもします。また、形や素材もさまざまに変化させ、そこに与える曲面にも明確なモチーフを持たせずに、幼少から蓄積された記憶の中からイメージを掘り起こしています。
そうしていると、思いや作品に矛盾が生じます。その中で揺れ動くことは踏み外してしまいそうな緊張感を伴っていて、緊張の連続は非常に苦しいことなのですが、上手にバランスが取れたとき、あるいはそんな気がしているときに、今まで見えていなかった形が見えてくるのです。
そのとき駆け巡る感覚は、自分自身を形作る上でかけがえの無いものに感じられます。

展覧会
2006 第70回新制作展入選 以降72回から78回まで入選(東京)
2008 第9回大分アジア彫刻展入選(大分)
2011 第20回富嶽ビエンナーレ展入選(静岡)
2014 「下平知明展」中京大学・Cスクエア(愛知)
   「ジ・アートフェア プリュス‐ウルトラ2014」スパイラル(東京)
2016   大分アジア彫刻展 大賞

 

 

 

 

  

壬生 真代│MIBU Mayo

1986年 三重県に生まれる
2010年 愛知県立芸術大学 美術学部 美術科 彫刻専攻 卒業
2012年 愛知県立芸術大学 大学院 美術研究科 美術専攻 彫刻領域 修了
現在、福井県福井市に在住。

ステイトメント
毎朝起きて、顔を洗って、服を着替えて、ご飯を食べて、仕事へ行って働き、夕方家に帰り、ご飯を食べてお風呂に入り、布団に入り眠りにつく。その間にも何かが変わっていて、それと同じように地球が自転と公転を繰り返し、太陽が昇っては沈んでいく。何も変わっていないようで何かが変わっていく。
すべての人が年を重ねていつかは死を迎え、花が咲いては枯れ、咲いては枯れを繰り返し、わたしの細胞が日々作られては死んでいき、できた水たまりの水が空へ上がり雲ができては再び雨を降らし、星が壊れてはその塵が少しずつ集まり、星の形を形成していく。すべてのものは日々等しく変化している。
そういった何かが何かに変わっていく、その境界に興味を持ち制作を続けている。
 身近なものをモチーフに、「境界」をテーマに彫刻作品を制作している。ものとものとの境界をあいまいにして、もの自体が与えるイメージを抽象化させ、見る人に新たな視点で想像してもらうことを目指している。

展覧会
2008年 学生交流企画 Part2 「Young Artist From Japan」 (クンストアカデミー・デュッセルドルフ、ドイツ)
2009年 越後妻有アートトリエンナーレ2009 大地の芸術祭
          眞田岳彦 絲の家プロジェクト「糸+芸大生」 (越後妻有交流館 キナーレ、新潟)
2010年 愛知県立芸術大学卒業・修了制作展   (愛知県立美術館ギャラリー)
2012年 愛知県立芸術大学卒業・修了制作展  (愛知県立美術館ギャラリー)
2013年 「かめざき小路てん2013」   (愛知県半田市亀崎町一帯)
2013年 個展「木のしごと」展   (florist_gallery N、愛知)
2014年 個展「壬生真代」展    (E&Cギャラリー、福井)
2014年 「亀崎せこみち展2014」   (愛知県半田市亀崎町一帯)
2014、2015年 「結節点」展(三重県立美術館 県民ギャラリー・三重画廊、三重)
2015年 若狭熊川 まちなみ芸術祭  (旧逸見勘兵衛家蔵ギャラリー、若狭町熊川、福井)
2016年 みのかもannual2016 わいわいアートフォレスト (美濃加茂市民ミュージアム、岐阜)

 

 

 

 

 

  

松見 知明│MATSUMI tomoaki

1988  福井県生まれ
2010  福井大学教育地域科学部美術教育サブコース卒業
2012  福井大学大学院教育科教育専修美術専攻修了

ステイトメント
私は、自身の存在をこの世の無数の生きものたちの一つと考えたとき、この身体で生きていることが不思議だったり、怖かったりする。でも、そんな感覚になることが、自分の正体や外の世界の本当(真実)を知る手がかりになると期待している。私の制作は、このような不安に似た気持ちと少しの期待から動き出し、一つの生きものを誕生させる。特別な力を秘めたその生きものが、見る人に新たな世界と自分とのつながりを感じさせる存在であってほしい。

展覧会│exhibition
<個展>
2011    ギャラリー58(東京)
2016            松見知明展 新世代への視点2016

 

<グループ展>
2007・09  「福井大学美術教育サブコース在学生・OBOG有志展」 福井県立美術館(福井)
2009・11  「福井大学美術教育サブコース大学院美術教育専修卒業・修了制作展」福井県立美術館(福井)
2014    「フクイ夢アート2014 招待作家企画展示」福井県福井市毛矢 足羽川堤防
2014    「Fusion +PLUS 」展 ギャラリー58(東京 銀座)

  • 2016/10/07 16:53

     本日募集最終日です。後8時間です。ご支援お願いします。  現地では展覧会も今日が最終日となっています。このプロジェクトは作品の輸送費の支援を募っています。来月になりますが、作品が無事に日本に帰ってこれるよう、ご協力お願いします。  また、この展覧会の図録を支援者にリターンとしてお渡しする...

  • 2016/09/29 20:03

    出品作家の紹介です。壬生真代氏。今回の、現地での滞在制作を手掛けてくれています。テグスとホットボンドを使い、作家自身の柔らかな感性を空間に浮かぶインスタレーションとして再現しています。

  • 2016/09/21 19:35

    出品作家の紹介です。遠藤研二氏。いち早く現地入りし、滞在制作をしていただきました。有機的な、生命体かのような動きをも感じさせるメタル素材の作品です。増殖してゆきそうな印象を与えます。

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