活動報告

ここでつづく暮らし「うみさと暮らしのラボ」のこと〜プロジェクトが生まれるまでの物語(その2)

 こんにちは、WEの塩本です。
 クラウドファンディング、もうすぐ折り返し地点ですが苦戦しています。どうか、パン菓子工房のはじまりのもうひとつのストーリー「うみさと暮らしのラボ」のことを聞いてください。


〈この町にはなにもない 本当?〉


 わたしは震災後に南三陸町でモノづくりを続け発信していきたい! という女性たちといっしょに、手づくり市の勉強会、手しごとスキルアップ講座、などを続けてきました。そのなかでいつもひっかかっていたのは、みんながしばしば口にする

「この町にはなにもない」という声でした。

 特に、手芸材料が手に入らない。震災直後はプリント布や色とりどりの毛糸や、手芸の材料が、どんどん、どんどん、支援で送られてきたものです。それがなくなったとき、隣町の大きなショッピングセンターや100均まで行かなくては、通販で見つけなくては。時間がないなか、移動距離も長くガソリン代もかかり、ネット通販にも慣れておらず誰に聞いていいかもわからず。その大変さは理解できました。

 でも、できる限りのお手伝いを続けながらわたしたちが気になっていたのは、この町の自然と暮らしが生み出す宝のほうでした。
 森の木々、木の実やツルや竹、里の草花、蚕や羊毛、海からは貝や砂や海藻など、都会では手に入れにくい素晴らしいものが溢れている。そうした素材をいかす、人々の知恵。こうしたことに興味を持つ人たちといっしょに、少しずつこの土地の材料を使ったモノづくりをしていけないだろうか。


[写真:2015年夏、南三陸町歌津「さとうみファーム」で開催させてもらったWE茜染め講座のようす。さとうみファームの羊毛と、講師のアトリエゑん さんの洋服を染めました]


 そんなころ、清美先生との出会いから本気のパン講座がはじまっていました。生徒として参加した町内の女性たちは教室を重ねるたびに、パンへの思いを語り、どんなパンを作りたいのか、親しく言葉を交わすようになりました。

 せっかくパンを作るのなら、この土地の食材を使ったおいしいパンをつくりたい。

 オーガニックの材料で作った身体にやさしいパンを家族に、友人に、食べてほしい。
 町を出て行く人たちは、「この町には、なにもない」と言うけれど本当にそうだろうか?
 町の食材で作ったおいしいパンを食べてもらえたら、町の人たちもこの町の豊かさに気づいてくれるんじゃないだろうか。

[写真:2015年夏、パン講座のようす。清美先生の指導のもと、みんな真剣です]

 

〈地元の材料とオーガニックにこだわったマルシェを〉

 こうして、モノづくりの分野と食の分野で「地元の素材をいかしたい」という思いが高まったわたしたちが次に挑戦したのが、竹テントを使っての小さな市「ひころマルシェ」でした。最初の開催は2015年秋、南三陸町入谷(いりや)の「ひころの里」という、パン菓子工房ouiのすぐそばの古民家と広い原っぱのある場所です。マルシェでつかう竹テントや机や看板や箱も少しずつ地元の材料で手づくりしはじめました。

[写真:2015年9月、NPO法人トージバさんを講師に、入谷で、竹テントマスター育成講座を開催。竹林から竹を切り出し、2台の竹テントをつくりました!]


 パン講座の生徒たちも、ご厚意で時間貸ししてくださるという石巻のパン菓子製造許可のある加工場まで出かけてパンをつくり、「ここむぎ」というグループを作ってはじめての販売を行いました。その晩、「ここむぎ」のメンバーのひとりのお宅に近所のおばあちゃんから電話がかかってきました。今まで、こんなに美味しいあんぱんを食べたことがない。材料はどうしたの、と。小豆は入谷のご近所さんがつくっているものを使っているのよ、ただ、お砂糖はきび砂糖というものを使っているのよと答えると、おばあちゃんはちょっと驚いた様子だったそうです。

 このことは、「ここむぎ」のメンバーのみならず、わたしたちみんなを勇気づけてくれました。おいしいもの、いいものは、伝わる。この小さなマルシェを核に、この土地の素材と自然のめぐみをいかす知恵をともに調べ、学び、伝える仲間を増やし、地域でめぐらせる取り組みを続けていこうという決意がめばえました。森里海の豊かなめぐみをいかし、「この土地でつづく暮らし」をコンセプトにしたプロジェクト全体に「うみさと暮らしのラボ」という名前をつけました。

[写真:2015年9月、はじめての販売で「ここむぎ」が販売したほわほわのフォカッチャ、名前はわざと「ホカッチャ」]


〈「うみさと暮らしのラボ」で取り組んでいること〉

 2015年秋のはじめての「ひころマルシェ」以降、取り組みがゆっくりと形になり始めたのが2016年の春でした。5月と10月の「ひころマルシェ」には、町内だけではなく近郊からも関心を持つ人たちが出店したり、手伝ってくれたり、遊びに来てくれたりしました。

[写真:2016年5月のひころマルシェ。古い傘をアップサイクルする取り組みをしているアーティスト、CASA Projectさん(気仙沼)に、子ども向けワークショップを開催してもらいました]

 

 パン講座の生徒からうまれたグループ「ここむぎ」はこのパン菓子工房ouiプロジェクトを引っ張っていくとともに、無農薬小麦の栽培にも挑戦しています。地元の南三陸杉を使って暮らしまわりのモノを自分で作りたいという仲間たちは「南三陸木工女子部」の活動もはじめ、リノベの技術を身につけながら町内の古民家を直したり、木工のシェア工房を整備し、今回のパン菓子工房建設でも力を発揮しています。そのほか、草木染め研究会、織物や、蚕からの糸とりなど、忙しい時間を縫って一つ一つスキルを身につけつつある人たちがいます。こうして、手づくりの食、手しごと、マルシェ出店、ワークショップ開催など「小さなナリワイ」の種を育てようとしています。

 最後に、「うみさと暮らしのラボ」プロジェクトが大事にしていることをご紹介したいと思います。

 「すこやか」にこだわる
 「地球にやさしい」にこだわる
 「素材」にこだわる
 「おいしい」にこだわる
 「地産」にこだわる
 「うつくしい」にこだわる
 「たのしい」にこだわる

Facebookページです。
https://www.facebook.com/umisatokurashinolabo/

 

[写真:2016年、草木染め研究会some-lab、はじまったばかりの活動ですが、地元の草木染め植物の調査とワークショップづくりなどをしています。近所で拾った栗のイガ、椿の葉っぱ、タブの木の皮、などで染めた手紡ぎのシルクウール]

 

この土地で、ながく、幸せに暮らしていくためにできること。
その答えのピースを本気で考え、ひとつでもみつけていくことが、日本の人口減少地域全体の課題を解きほぐしていくことだと思っています。
おいしいパンからはじまる小さな経済は、間違いなく、そのピースのひとつです。
どうか、この三陸沿岸の小さな里山ではじまった取り組みを応援してください。

 

塩本美紀

 

 

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