2018/07/14 16:18

クラウドファンディングのスタートに先立ちまして、

6月27日(水)に新宿カンファレンスセンターにて、

ブレヒトの芝居小屋移転に関する記者会見を実施しました。

不慣れな運営ではありましたが、
集まっていただいた記者のみなさんが熱心にお聞きくださり、
ご質問も具体的で、
非常にありがたい時間となりました。

呼びかけ人を代表して、

池辺晋一郎さんにもご出席いただき、

ほんとにあたたかい思いをお聞きすることができました。

 

なかなか日本の国内では実現しづらい、
オープンスペースのブラックボックスな劇場であり、
ぼくたちの創造の源泉でした。
失うのはあまりにも悲しく、さみしい思いもありますが、
新たな劇団のあり方を求めて、
移転先を探そうと思います。

また、9月にはブレヒトの芝居小屋での最後のブレヒト作品を上演します。
お願いばかりになりますが、
ぜひぜひ、足をお運びいただければと思います。

 

池辺晋一郎さんの発言要旨

「ブレヒトの芝居小屋」について
初めてブレヒトの芝居小屋に入った時に、広渡常敏(前劇団代表 1927-2006)さんの大切なイデーの一部であったチェーホフのなかの一場面を思い出しました。『かもめ』で、トレープレフという若い作家が新しい芝居をつくってニーナという娘に演じさせるんですが、〝芝居というものは三方を壁に囲まれた空間でやる、それがいっこうに変わらない。それを変えなきゃ〟という意志でトレープレフは芝居をつくる。しかしその『かもめ』から約百年経っても実際は何も変わってないわけですよね。それがこの「ブレヒトの芝居小屋」で変わったという印象をものすごく受けました。もちろん当時のアンダーグラウンド演劇とか、いろんなところで同じような試みはありましたけれども、常設の小屋として、つまり芝居をする空間という目的で建てられたもので、三方が壁じゃないという空間は、おそらくなかったと思います。そういう意味で非常にユニークなものができたなというのが最初の印象でした。

東京演劇アンサンブルという劇団に対する思い
ぼくがこの劇団に持っている感覚というか気持ちは、東京演劇アンサンブルの演ずる芝居が、体制とか多数派には与しない、それでいて物事の表層ではなく本質、いちばん深いところを常に凝視している。そこから物事をくみ取り表現していくというコンセプトに貫かれていること。そのことに心惹かれています。しかもそれが理念だけに固まったガチガチの表現で終始するのではなく、むしろ逆に、全体としてあたたかく、ほとんど家族的と言ってもいいような結果を生みだす。それができる劇団というのは稀有だと思いました。東京演劇アンサンブルのそういうポリシーは他にはないものだということをずっと感じ続けてきています。

東京演劇アンサンブルというコンセプトを残すことの意味
この小屋が消えてしまうということは、単にこの劇団の問題だけじゃなくて、日本の演劇という大きな視座から、たいへんな問題だと思います。単にひとつの劇団の存続に関わることだけではなくて、日本の演劇文化全体に関わってくることは明らかだと思います。そのために、残さなきゃいけない。ここでの東京演劇アンサンブルのコンセプトをより長く持続させなきゃいけないということを、演劇に深く関わる、しかし演劇の外部の人間とし て、痛感しています。

何故か? 数の論理に抗する文化の重層構造
数というものが絶対だという論理だけで構成してしまうと、必ず世の中は崩れるというふうにぼく自身は考えています。数だけに頼るなら、たとえばぼくの仕事である音楽の世界で言えば、クラシック音楽や或いはぼくが直接携わっている現代音楽なんて要らないわけですよね。AKB48 だけあればいいということになってしまう。もしこの論をそのまま敷衍していくと、世の中は表側だけあって重層構造が何もない社会になってしまう。これは、今の日本の政治にも言えることだと思っています。数というものを絶対として振りかざしていたら、世の中は、その多層構造を失うと思います。そういう意味で、演劇においても、東京演劇アンサンブルの活動は、その重要な層をつくるための仕事だと思うんです。そのことによって文化全体が膨らんでいく、大きくなっていく、育っていく。そのための大切な仕事をしているのがこの劇団だと思っています。もちろんそういう仕事をしてる人はたくさんいますけれども、その重要な一部を、この劇団が担っていることは間違いないと考 えています。

東京演劇アンサンブル 劇団移転応援基金の呼びかけ人を代表して
たくさんの皆さんの声が高まること、気持ちが高まることが、結局この移転の資金を集めたり、新しい空間をつくることの基本になると思いますので、ぜひご協力をおねがいしたいと思います。

(2018 年 6 月 27 日 TKP 新宿カンファレンスセンター 5A ルームにて)