2014/09/09 15:26
こんにちは。『俺クラ』でアドバイザーを務める田口和行(@t_AGCH)と申します。
普段は現代音楽の分野で活動している、鹿児島在住の作曲家です。

今回の活動報告は私の担当ということで、『俺クラ』が目指す音楽について書いてみます。

■A←B→C

東京オペラシティ主催公演の一つに、
バッハと現代音楽を軸とした「B→C」というリサイタルシリーズがあります。
これに対して「アニソンからもバッハやクラシックの影響は聴こえる」と、
伊藤亘希(『俺クラ』ギタリスト)、萩原佳明(同ディレクター)、
私の3名で盛り上がった際に出た言葉が「A←B→C」でした。

この言葉が生まれた2011年の時点で、伊藤さんは既に、
《ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C》などをニコニコ動画へアップしていました。
演奏の良さは勿論、クラシックの硬派なリサイタルで演奏しても遜色が無いアレンジに、
私は強い感銘を受けました。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm14718899



伊藤さんとなら、面白いことが出来るかも知れない。
それが確信に変わったのが、翌年にアップされた《ゆりゆららららゆるゆり大事件》です。
原曲に比べると、渋く落ち着いた(地味な?)印象を受けるかも知れませんが、
クラシックギターの美味しいフレーズが満載の、絶妙なアレンジだと私は捉えています。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm18240841



クラシックの文脈でアニソンを捉え直す。
旧式の音楽理論だけでは捉え切れない魅力を持つアニソンに、
クラシックギター独奏という形態は太刀打ち出来るのか。
もしかすると、殆ど前例のない試みかも知れません。

■《ギターのための12の歌》と現代

映画音楽等でも活躍した現代音楽の作曲家、武満徹(たけみつ・とおる。1930-1996)。
氏が1977年に発表した《ギターのための12の歌》は、
アイルランド民謡やシャンソン、当時は未だ新しかったビートルズのナンバーなどを、
ギター独奏のためにアレンジした作品でした。

氏が「なによりも柔軟な精神のエチュード」と語った本作は、
ギター音楽のレパートリーの狭さに問題を提起したもので、
クラシックの訓練を受けて来た演奏家が、
ジャンルを転身せずに新たな世界を開けるような内容となっています。

初演から37年。ギターを巡る環境も変わったでしょうが、
特にクラシックのステージで取り上げられる作品は限定的なままだと云えるでしょう。
武満氏と同じ次元を目指すなんて、おこがましい話ではありますが、
現代の視点で新たな「ギターのための歌」を作ることは、
現代の音楽に携わる者として必然だと私は考えます。
そして、現代の日本において、アニソンは避けて通れない音楽の一つでしょう。

『俺クラ』がいつか、ギタリストのステージを彩る新たなレパートリーとなってくれたら。
その実現のためにメンバー一同、尽力しておりますので、
応援ならびにご支援の程、何卒宜しくお願い致します!


■プロフィール

アニメと声優を愛する現代音楽作曲家。独学で作曲を学ぶ。
高校生の頃、ラジオから流れて来たサクラ大戦の音楽に感銘を受け、
同時に、この世に作曲家(田中公平先生)が存在することを知る。
SQUARE(現:SQUARE ENIX)植松ラヂヲ「第1回アレンジ道場」ノビヨ賞(チョコボのテーマ)、
第26回日本現代音楽協会作曲新人賞富樫賞、
上田希リサイタル「毒っとクラリネット!」公募選出作品第1位などを受賞。
作品は国内外で演奏ならびに出版されている。昨年はピアノ10台による作品を発表した。

好きな声優は中村繪里子さん。
現在好きなアニメは、みならいディーバ(※生アニメ)。
アイマスでは真くん推し!
http://greenhorn2011.blog24.fc2.com/

■『俺クラ』委員会メンバー

ギタリスト:伊藤亘希 http://kokigitarre.jimdo.com/
ディレクター:萩原佳明 http://www.hagiplan.com/
イラスト:葉月 http://www.pixiv.net/member.php?id=33452
広報:三上満里奈 http://nerimarina.hatenablog.com/
アドバイザー:田口和行 http://greenhorn2011.blog24.fc2.com/