2016/10/13 13:50

みなさんこんにちは!高岡です。
日本より地理的に緯度が高いカナダでは、明け方は2度くらいになってきました。
私が住むバンクーバーでは、既に紅葉シーズンが到来しております。上記の写真はバンクーバーにある大学構内の写真です。

「地理」データの分析手法に関する研修を受けに来ています

昨日からカナダで、生態学・環境学・公衆衛生学とのジョイントセッションとして提供される地理空間分析(GIS: Geographical Information System)の研修を受けにきています。

なんで、そのような研修会に来たか?
理由は3つです。

1つ目:子どもの虐待や安全は、欧米では公衆衛生や地理的条件にも強く影響を受けると考えられているから

2つ目:多様な参加者が参加するため、本プロジェクトに対して様々な意見がもらえるから

3つ目:科学的にも信頼されている統計ソフトウェアRでの研修会のため、今回のプロジェクトにすぐ得たスキルが活用できるから

の3点です。

子どもの安全をいろんな視点から見ること


そもそも、今まで日本の虐待対応は、心理学、社会福祉学、小児科学、看護学、経済学、法学、保健学、教育学、脳科学、公衆衛生学、分子生物学・・・云々色々な分野で研究が進められてきました。ただ、様々な理由からほとんどの研究は、各学問の中でのみ議論・検討されることが多かったといえます。

子どもの安全はもちろんのこと、普段私達の生活は、心理学だけ、社会福祉学だけ、小児科学だけ・・・、各一つの学問だけで考えられるものでしょうか?(もしそうなら、ほんまでっかTVでもあれほどの数のコメンテーターはいらないはずですね)

私達の生活は、時にこころの問題、からだの問題、お金の問題、法律の問題、教育の問題、様々な面から成り立っています。

現場でも多職種・多機関連携が大切と言われているのだからこそ、研究面でも様々な分野の人達と今回のプロジェクトを進めて行くことが大切です。

でも、なんで「地理」情報?

色々な人達とコラボしていきたいのですが、なんでもかんでも盛り込めば良いというわけにもいきません。

現場の方々が日々忙しい中から集めて頂いたデータは本当に貴重なものです。その貴重なデータを有効に使っていくためには、どのような切り口から検討すれば良いか、優先順位がとても大切なのです。

今回私達がプロジェクトで検討する内容では、「地理」情報をその優先順位の一つとして考えています。もちろん細かい住所などは個人情報なので扱いません。ただし、各市区町村や地域といったレベルであれば、「地理」情報はとても大切になります。

例えば、私達の生活でも、
-A市に住むと、子育ての具体的支援やサービスが利用しやすい。
-B市に住むと、子育てのお金の補助が充実している。
-C市に住むと、保育園の待機児童がほとんどない!
など、「地理」的条件によっても大分生活が異なることがあります。

都市部では核家族が増えていて、地方部ではまだ地域のつながりが残っているというような条件も「地理」情報を視点に考えると、うまく整理できるのです。

地理情報+その他の情報で何ができるのか?

現在、地理情報を活用している身近なアプリはGoogleマップです。使えば使う程、様々な交通渋滞まで検討しながら、最短・最適なルートを教えてくれます。

他に地理情報を活用したアプリとしては、ポケモンGOがあげられます。地理情報を活用して、様々なイベントやデータを活用しながら、ユーザーの楽しみの幅を広げていますよね!

さて、AIに視点を移すと、地理情報をどのように使っているのでしょうか?

以前NHKスペシャル「NEXT WORLD」でご覧になった方もいるかもしれませんが、カリフォルニア州では、実際に地理情報にその他のデータ(犯罪の種類、犯罪の時間帯など)をAIに盛り込むことで、実際の犯罪発生を「地理」的に予測しています。その成果として、AIを使う前と後を比較すると、検挙率が2倍違ったと報告されています(出典1)。

私達の子どもの安全を守るプロジェクトでも、「地理」情報+他のデータ(過去のあらゆる事例のデータ)をAIに学習させることで、現場の支援者の方々により良い意思決定サポートを行いたいと思っております。

新しい視点を有効活用する際に大切なこと:慎重かつ大胆に

このように「地理」情報データは、現代のビッグデータ解析でも大切なトピックとして注目されています。しかしながら、欧米でも地理データを子どもの安全に活用しようという動きは、ここ5年程で、やっと始まったばかりなのです。

理由は、地理的に正確なデータがスマホの発展と共に得られるようになったことや、地理情報を用いた研究手法を気候変動や生態学、伝染病などの発生予防などの他分野で進んでいたからです。

新しい手段を、子どもの安全に活用するには、まだまだ検討の余地がいくつかあります。そのため、慎重に議論を重ね、大胆に実装していくことが重要です。

より良い発展のために、私達は実際に問題点を、皆様の様々な意見・多様な専門家の力・新しい技術の助けを借りながら改善したいと思っています。

私が、今回の地理情報分析の研修会に参加を決めたのも、そのような様々な専門家の人達に出会い、今回のプロジェクト発展に向けて活発な意見交換ができることが理由でした。

この終日研修が今後11月中旬まで不定期で12日間続きます。一日研修終了後も、現在プロジェクトで使うデータベースの整備、AIを用いた分析手法、アプリ開発を仲間と日々進めています。

今回の研修会で得た意見やスキルをプロジェクトに実装できるよう、積極的に意見交換及びスキルアップしてきます。

また「地理」情報を用いた研修会についてどこかで活動報告できればと思っています。

P.S.
現在、本プロジェクトの分かりやすいイラストを、メンバーのデザイナーと共に話し合いながら準備しております。近々公開致します。

出典1:Mohler, G., Short, M., Malinowski, S.,ほか(2014). Randomized Controlled Field Trials of Predictive Policing. Journal of the American Statistical Association.
( http://dx.doi.org/10.1080/01621459.2015.1077710 ) アクセス日:2016年10月12日