今回インタビューした吉田雅史さん、竹本拓真さん、福田悠裕さん、安立直之さん

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●VOCALOID FAN-ding:https://camp-fire.jp/highlights/vocaloid-fan-ding

もっと自由に、ボカロのキャラクターを生み出せる世界へ
―『VOCALOID FAN-ding』リリース以降、SNSでは大きな反響が続いていますね!
竹本:はい、本当にありがたいことに、SNSを中心に多くのボカロファンのみなさまに取り上げていただいています。特に、第1弾プロジェクトである『足立レイボカロ化計画始動!ついに足立レイがVOCALOIDで動く!?』は開始から2時間弱で目標金額の500万円を達成し、さらに24時間経たずして次の目標として設定していた1,000万円に到達しました。ここまで大きな反応をいただけたことを、とても嬉しく感じています。

※2025年12月26日段階
―今回なぜこうした取り組みを始めようと思われたのか、その背景を教えてください。
竹本:昨年は、ヤマハがVOCALOIDを発売してから20周年という大きな節目の年でした。ボカロPの皆さんやリスナーの皆さん、そしてさまざまなボカロキャラクターを育てていただいたパートナー企業の方々のおかげで、VOCALOIDを楽しむ方は年々増え、この20年でボカロは“ひとつの文化”として確かな存在感を持つようになったと実感しています。VOCALOIDができたことで、ボカロPという名称が出来るほど“曲を作る”という敷居は下がったと感じる一方で、VOCALOIDのボイスバンクやキャラクターそのものを生み出す事、つまり“ボカロキャラクターを作る”事への敷居は依然として高く、まだまだ限られているのが現状です。
もちろん、現在もパートナー企業から個性豊かで魅力的なボカロキャラクターが生み出されていますが、もっと多くの方に、もっと自由に、ボカロキャラクターづくりに挑戦いただける世界を広げたい――。
その思いが、今回『VOCALOID FAN-ding』を立ち上げることになった最初のきっかけです。

――さまざまな手法がある中で、あえてクラウドファンディングを選んだ理由は何でしょうか。
竹本:ボカロキャラクターを作るには、キャラクターの企画、ボイスバンク開発、イラスト制作、デモソング制作、販売計画など、さまざまな関係者と連携しながら数ヶ月かけて丁寧に作っていく必要があります。そこには、技術や、工数、費用のすべてが必要です。その負担を一人で抱えるのは大変です。また、キャラクターは作るだけでなく、どう育てていくかも重要です。ボカロキャラクターは、公式だけでなく、ボカロPやイラストレーターによる創作活動が盛んで、リスナーやファンによる応援も熱心で、みんなで一緒に育てていくという文化が醸成されていると考えています。
そこで可能性を感じたのが、クラウドファンディングでした。制作段階から “作る人”と“応援する人”が一体となり誰もがボカロキャラクターの制作に携わることができる――その仕組みこそ、“文化そのものを一緒に育てたい”というヤマハの理念に最も合っていると考えました。
―これまでVOCALOID化の相談を受けるなかで、資金の問題で実現しなかったケースもあったのでしょうか。
竹本:正直なところ、「そもそも挑戦できると思ってもらえていなかった」というのが実情でした。さまざまな方とボカロ化についてお話しをしていると、ずっとボカロになりたいと想ってくれているのに、どこか『雲の上の話』だと思われていると感じます。作りたい気持ちはあっても、自分には無理だろうと、コンタクトを取ることすらしなかった方がたくさんいたはずです。
そうした、これまでアプローチしきれていなかった方々に向けて道を開きたい。それが、この取り組みの大きな目的の一つです。
―CAMPFIRE を協業のパートナーとして選んでいただいた理由はなんでしょうか。
竹本:CAMPFIREさんが、なにより「自分ごと」として考えてくださった印象が強かったためです。ボカロ文化やVTuber、音声合成界隈に理解があるチームの方が、初回からしっかりと向き合ってくださったのがCAMPFIREさんでした。
VOCALOIDのチームだけでは絶対にやり切れない領域ですし、プラットフォーム側にも本気で注力してもらう必要があると感じていました。その意味で、一緒にボカロ文化を作っていけるパートナーだと思えたことが、大きな決め手でした。

“楽器”としてのVOCALOIDと、“文化”としてのボカロ――その交差点でヤマハが担う使命
―ヤマハは楽器メーカーとして長い歴史を持っていますが、VOCALOIDをどのように捉え、向き合っているのでしょうか。
竹本:私たちにとって、製品としてのVOCALOIDは『楽器』であるべきだと考えています。これまでヤマハは楽器メーカーとして、クリエイターの繊細な演奏表現をいかに自由に音で再現するかということを大切にしてきました。VOCALOIDでも同じで、細かな表情まで自分の手でコントロールできることを重視しています。
最近ではAI技術を用いた歌声合成も増えていますが、多くはAIが自動で判断して歌ってくれます。それはそれで魅力的な手法ですし、我々も活用しているところではありますが、クリエイターの意図をどこまで繊細に反映できるかという点においては強くこだわっていきたいところです。
ただ、VOCALOIDはソフトウェアとしての“楽器”であると同時に、“キャラクター”としての側面も持っています。この二面性のバランスをどう設計するのかは、私たちにとって常に大きなテーマです。
―確かに『ボカロ』という言葉は、人によって思い浮かべるものが大きく異なりますね。
安立:「ボカロ」という言葉との出会い方は人それぞれです。VOCALOIDというソフト名から入る方もいれば、ボカロP・ボカロ曲といった呼び名や、音楽ジャンル、ゲーム、キャラクターなどの文脈から触れる方もいます。
つまり、「ボカロ」という言葉は、文化として広がる過程で、多層的な意味を持つようになりました。
広がっているクリエイティブ——楽曲、二次創作、歌ってみた、イラストなど、これらの文化はすべて、ユーザーの皆さんが自由に発展させてきたものです。
ヤマハとしては、その広がりをコントロールしようとするのではなく、自然に育つ文化として尊重したいと考えています。
“楽器としてのVOCALOID”と“文化としてのボカロ”。
この二つの距離感をどう保つかは、簡単ではありませんが、とても大切なテーマだと思っています。
―AI時代における音声合成技術の進化が加速する中で、VOCALOIDをどのような文化装置だと位置づけているのでしょうか。
吉田:ちょっと話はそれますが、今は生成AIを使えば、誰でも一昔前には考えられなかった完成度の楽曲を得ることができるようになりました。それ自体は素晴らしいことで、新しい音楽制作方法とも呼べるし、また新しい文化の形も、生まれてくると思います。
一方で、私たちがボカロで大切にしたいのは、技術そのものよりも、音楽をどう楽しむかということです。ボカロ文化は、楽曲を作るクリエイター、その楽曲を聴くファン、歌ってみたやイラスト、MVなど、二次創作に関わる多くの人たちの掛け算で成り立っています。
誰かのクリエイティブに、別の誰かのクリエイティブが重なっていく。その連鎖によって、コミュニティが育ち、居場所が生まれていく。そこには、人ならではの温度や関係性があります。
ヤマハとしては、「楽しむ場」「つながる場」を守り、育てていくことこそが、VOCALOIDに関わる使命だと考えています。
キーワードは「居場所作り」”ニコニコ技術部が、自分の居場所だった”
―吉田さんのお話にあった“技術と文化の交わり”という視点で伺うと、竹本さんご自身は、ボカロ文化の中でどのような体験をされてきたのでしょうか。
竹本:実は自分自身、 学生の頃、ニコニコ技術部に所属していて、ニコニコ動画に作品を投稿する側の人間でした。VOCALOIDキャラクターを題材にしたロボットを作ったり、木彫りの作品を作ったりしていたんです。ボカロがあったからこそ、今の自分がいる、という実感があります。自分の作品を面白いと言ってもらえる場所があって、そこに人が集まっていて、イベントにも呼んでもらえた。そのコミュニティが、自分にとっての居場所でした。
そこがあったからこそ、今の自分がいますし、そこからヤマハに入ることにもつながりました。
そんな体験を、もっと多くの人に味わってほしい。それが、今の仕事の根底にある思いだと思います。
そういった意味でも、クリエイターにとっての『居場所』、ファンにとっての『居場所』、そして両者が交流できる『居場所』を作ることは、自分自身の信念でもありますし、VOCALOIDを生み出した企業としての使命だと考えています。

―ボカロ文化の中で、最近感じている新しい潮流や変化はありますか。
竹本:ボカロ文化は、さまざま文脈からボカロに出会い、世代交代がどんどん起きているのが特徴だと思います。中高生、10代の方々が新たに文化に入ってきていて、彼らが今のボカロシーンをつくっていると言っても過言ではありません。吉田:一方、2007年前後のボカロ曲を聴いて育った世代が、大人になって今度は自分なりの解釈で音楽を作って、その結果、ボカロは一つのジャンルにとどまらずに、ロックやポップス、クラブミュージックなどのいろいろなジャンルの音楽の中に溶け込む形で存在しているように感じています。
儲かるからやるのではなく、“ボカロ文化が好きだから”
―そのような中で立ち上げられた『VOCALOID FAN-ding』ですが、名前に込めた思いを教えてください。
竹本:『VOCALOID FAN-ding』の FAN は、ファンの皆さんを指しています。ファンの方々と一緒に、ボカロ文化を発展させていきたいという思いを込めて、この綴りにしました。福田:コピーとして掲げている“ 好きが集まる場所から、ボカロの未来が動き出す”というフレーズにも、その思いを表現しています。ファンの好きという気持ちが集まり、そこからボカロの未来が動き出していくような場所をつくっていきたい。その願いが、名称の中に込められています。
―『VOCALOID FAN-ding』などの取り組みの中でヤマハがボカロ文化の中に積極的に関わっていこうとしているのは、どのような思いからだったのでしょうか。
福田:ボカロ文化はクリエイターやファンを巻き込んだ創作活動によって発展してきましたが、ヤマハはその中でVOCALOIDというツールを提供する企業にしかなれていないと感じておりました。そして冒頭でも述べたようにヤマハとクリエイターやファンの皆様との間にはやはり距離があると感じています。ヤマハをもっと身近に感じてもらいたい、もっと直接声を聞きながら一緒に文化を育てていきたい、という考えから、私たちは2〜3年前から、イベントやYouTube出演など意識的に“前に出ていく”取り組みを始めてもいます。
その中でよくいただくのが「ヤマハの中の人も、ちゃんとオタクなんですね!」という声で、私たちにとってはとても嬉しい反応なんです。
たとえばVTuberの新しいボイスバンクを出すとき、単に“売れそうだから”選んでいるのではなく、そのVTuberさんの活動理念や文化的背景、ファンの活動まで理解したうえで企画を通しています。
だからこそイベントなどで実際にファンの皆さんと対話してみると「あ、本当にこの人たち、文化が好きなんだ」 と伝わっている感覚があります。
そのような活動を通して、まだ十分とは思っていませんが、私たちは “企業としてのヤマハ”ではなく、“文化を愛する一人のファン”としてVOCALOIDをつくっているということを伝えていきたいんです。
もちろん、企業としてボカロ文化を支えるためにはビジネスとして幾分かの収益は必要になってきますが、それよりも文化的な愛がある人間が企画し、開発し、ファンの皆さんと一緒に楽しむ。ビジネスとしてやっているだけではなく、好きだから関わっている。
その姿勢を見て安心してもらえるように、私たち自身もファンの一員として歩んでいきたいと思っています。

―その変化を踏まえ、次の10年のボカロの未来をどのようにしていきたいと考えていますか?
竹本:これまで、ヤマハやVOCALOIDは、どこか遠い存在だと思われていたかもしれません。今後は、ボカロ文化の中心に、もっとしっかりと入り込んで、みなさんと一緒にこの文化を盛り上げていきたいと考えています。『VOCALOID FAN-ding』はその第一歩にすぎません。ボカロ文化の中で日々皆さんが挑戦しているように、ヤマハも一歩一歩、ボカロ文化に貢献できるよう新しい挑戦にどんどん取り組んでいきます。
ヤマハは変わります。どうか楽しみにしていてください。
そして、これからも一緒にボカロ文化を育てていき、10年後ここがあったから今の自分がいると想ってもらえる。あなたにとっての居場所になれていることを願っています。
『VOCALOID FAN-ding』募集中プロジェクト


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