21年間早大生に愛された激辛美味カリー「メーヤウ早稲田店」復活!ファンの信頼を獲得するためのこだわり

思い出の店を復活させたい―—。 そんな想いからクラウドファンディングを活用したプロジェクトがある。2020年2月15日に開始した『21年間早大生に愛された激辛美味カリー「メーヤウ早稲田店」の味を復活させたい!』もまた然り。本プロジェクトは、目標金額の150万円を大幅に上回る約420万円もの資金調達に成功した。
なんと、プロジェクトを立ち上げたのは、10年以上お店に通い続けたファンの一人。飲食業の経験なし、普段は会社に勤めているという早稲田大学出身の高師雅一さんだ。

なぜ、メーヤウ復活へ立ち上がったのか。そして、熱狂的なファンの多い飲食店のクラウドファンディングを成功させるためのこだわりについて話を伺った。

プロジェクトデータ
プロジェクト名: 21年間早大生に愛された激辛美味カリー「メーヤウ早稲田店」の味を復活させたい!
実施目的: 店舗の開設資金調達/新規、既存ファンへのリーチ
実施期間: 2020年2月15日~3月26日
調達金額: 4,279,110円
プロジェクトURL: https://camp-fire.jp/projects/view/105458

早大生に愛されたカレー屋「メーヤウ早稲田店」

早稲田大学の近くにあるカレー屋「メーヤウ早稲田店(以下、メーヤウ)」。1997年に開業し、2017年閉店までの21年間、早大生に愛され続けた。多いときには1日300食以上ものカレーが売れたほどの人気店だ。

メーヤウカレーの特徴はなんといっても“ヤミツキになる辛さ”。10種類以上のスパイスを独自ルートで仕入れ、調合。こだわりのカレーは、メーヤウの店長である高橋忍さんが研究を重ねて完成した一品だった。

独特の“ヤミツキになる辛さ”にハマる早大生も数多い。高師さんが早稲田に在学していた当時を振り返り、このように語った。

「早大生の約90%はメーヤウの存在を知っていて、約50%は食べた経験がある。あまりの辛さに離れる人もいますが、そのうち約10%の人はその辛さにハマって、ファンになっていく。そんなカレーでした」

21年続いた人気のお店が、突如閉店

21年間繁盛し続けたメーヤウだったが、2017年3月に一時休業。そのまま閉店という、あまりにも突然の別れだった。

店長の高橋さんは、2016年頃から体力的な問題で今後の営業継続について考え始めた。「閉店を視野に入れている」そんな話を何気なくした常連客の一人が、とある企業の経営者だった。メーヤウを大規模リニューアルする方向で話が進み、リニューアルオープンすべく2017年3月に一時休業を決めた。

ところが、契約を締結する直前、事業譲渡自体が白紙に…。ビルオーナーからも店舗退去を強いられたことで、突然の閉店を余儀なくされたのだった。

メーヤウ復活に立ち上がった一人のファン

そこで一人の熱烈なメーヤウファンが立ち上がった。本プロジェクトを立ち上げた高師さんだ。メーヤウのカレーを先輩が後輩に奢るという独特な文化が早大生にあり、高師さんも同様にサークルの先輩に奢ってもらったことがキッカケで、在学中はほぼ毎日通うほどハマったという。大学を卒業してからも休日には足を運び、ファン歴は10年以上。メーヤウの閉店に悲しんだ一人だった。

飲食業未経験の不安すら払拭させるメーヤウへの愛

閉店から約1年半後の2018年9月に、早稲田大学のイベント「地球感謝祭」で、元メーヤウスタッフがキッチンカーで1日限定販売を実施。メーヤウの公式Twitterアカウントに告知ツイートをしたところ、多くの反響を呼び、イベント当日は早朝から行列ができた。元店長の高橋さんも「メーヤウの味を絶やしてはいけない」と痛感していたそうだ。


「この日、元店長の高橋さんと知り合いになりました。高橋さんとお話しさせていただき、メーヤウへの想いを聞いたことで、何とかお店を存続させたい、力になりたいと思ったんです。そこから、僕が継ぎますと何度も交渉しました。メーヤウのために魂を売れると話して、『こいつなら裏切らないだろう…』と思っていただけたのかなと」

そして、高橋さんの監修のもと「早稲田メーヤウ」の屋号でカレーの提供が決まった。

飲食業の経験がなかった高師さんは、会社員の仕事の合間に1年修行を重ねたという。「料理すらほとんどつくったことなかった」と話し、酷い火傷を負うことも。それでも「メーヤウを復活させたい」という想いが、高師さんの原動力となった。

思い出の飲食店の減少に警鐘を鳴らしたい

また、メーヤウと同じように長年愛される飲食店が早稲田大学周辺には数多くあった。学生にとっては喜ばしい、「安い」「多い」「美味い」の三拍子が揃ったメニューを提供する飲食店も多かった。

しかし、そんな飲食店が年々閉店しているという現状がある。昔とは異なり、コンビニなどで買ったご飯をスマホを見ながら教室で食べる生徒が増えたこと、一人暮らしの生徒が以前より減ったことで、外食文化自体が減少している。

「飲食店の経営難は、結果的に社会の関心事でもある」と考えた高師さん。そういった現状があることを、メーヤウを通して伝えたいという想いもあった。

ファンへのリーチを期待したクラウドファンディング、同時に懸念点も

クラウドファンディングを実施する前、2019年3月に1日限定で高円寺に間貸し営業をした。Twitterでの告知だけだったものの、オープン前から100人近くのメーヤウファンが行列をつくった。

新規、既存どちらもリーチできるのがクラウドファンディング

この状況を見て、メーヤウ復活のためにクラウドファンディングの実施を決めたという。資金調達だけでなく、新規、既存関係なくリーチできると考えたのだ。

「メーヤウの店舗を復活させるためには、既存ファンだけでなく、新規ファンの獲得も必要です。既存ファンの熱量の高さで話題になった結果、新規へのリーチにも繋がるかもしれないと考え、クラウドファンディングが良いだろうと思いました」

熱狂的なファンとクラウドファンディングの相性を懸念

しかし、懸念点もあった。メーヤウファンは非常に熱狂的であるため、「味が変わってしまわないか」と不安感を抱く人も少なからずいたため、二代目としての信頼を確実に得なくてはいけないということだった。また、資金調達の手法としてクラウドファンディングという新しい形態への理解が得られないかもしれないといったものだ。

「メーヤウは人生の一部と言ってくれる方もいるほどにメーヤウファンは熱狂的です。そういった方々に出資ではなくクラウドファンディングという比較的新しい形で、快く応援をしていただくための工夫は絶対必要だなと思ってました。」

「ファンの信頼を獲得するため」にこだわった5つのポイント

ファンの反応を鑑みて、「信頼を獲得するため」のプロジェクトページを作成した。高師さんがこだわった5つのポイントを以下に記載する。

① 本文

どれだけメーヤウが好きかということ、そして元店長の高橋さん監修のもと実施したプロジェクトであることを伝えている。クラウドファンディングを開始する前に高師さんの「メーヤウ愛」を綴り、反響が大きかったnoteの記事から一部転載した本文だ。

(note)「早大生に愛された激辛カレー「メーヤウ早稲田店」が復活」

また、「飲食店の減少についての想い」や「現状を訴える新聞記事へのURL」を本文の初めに記載。多くの人の社会的な関心事として共感してもらえるような演出となっている。


② 写真
メーヤウらしさを伝えるために2019年3月に実施した1日限定店舗の写真を使用。調理場で撮影された写真は、高師さんが自然とメーヤウメンバーに溶け込んでいる1枚だ。


「この写真はメーヤウに関わるみんなの躍動感が伝わり、気に入っています」

飲食系のプロジェクトではフードの写真をメインに置くことも多いが、本プロジェクトはファンへの信頼を得ることが重要だと考えた結果、人にフォーカスした写真を掲載していたのだろう。

③ リターン
高師さんの原体験をもとに、「ファンなら喜ぶリターン」を2つ用意した。

【メーヤウを知らない早稲田現役生にカリーご馳走券+カリー無料券付き!】
・合計10食分を育ち盛りの学生に御馳走させて頂きます
・先輩が後輩に辛いカリーを食べさせる、あの学生文化を継承します

【生涯メーヤウ食べたいメーヤウ中毒者はこちら!
・早稲田メーヤウ会員証の「応援メンバーの証」を1枚お渡しします
・店舗にてご提示頂くと裏メニューのココナッツアイスが無料

「僕がメーヤウにハマったキッカケである『先輩が後輩に奢る文化』をこれからも残し続けたいと思いました。また、僕が大学生の頃にメーヤウからTwitterのフォローバックされたときすごく嬉しかったので、メーヤウに認められたことが証明される何かしらの価値を提供したいと考えました」

ほかにも、新規ファンや地方に住んでいてメーヤウへ足を運べない人向けには【メーヤウカリーをお家で食べて応援!(冷凍品の配送)】、金額関係なしに応援したい人向けには【リターンを気にせず応援してくださる方向け】、とターゲットによって幅広いリターンを用意した。

④ 宣伝

クラウドファンディングを開始する前、元店長の高橋さんに「メーヤウのアルバイトOBや常連客50人」のLINEグループを作成してもらった。グループにはプロジェクトの説明と、「応援・拡散お願いします」と言葉を添えた。

できる範囲でファンへの協力を仰いだ結果、クラウドファンディング開始時に投稿したツイートの拡散力が上がった。

また、クラウドファンディング実施の前日には、日本経済新聞・PRTimesに情報を掲載。「ただのファンではない」ということを演出したそうだ。

⑤ 店舗準備

資金調達に直接関係があるわけではないが、ファンからの信頼を獲得する上で重要なのが、「再現度」だ。メーヤウを復活させるうえで、最も重要視していた部分でもある。

「一番のリスクは、前と味が違うと思われてファンのみなさんが離れていくことでした。それだけは回避すべく、さまざまな人へ試食を頼んで、フィードバックをもらいました」


メーヤウファンの知人や、メーヤウを初めて食べる人に試食してもらったという。メーヤウファンの中には、高師さんが作るメーヤウの微妙な差がでてしまい気づく強者もいたことは励みになり、「絶対裏切らない味を提供したい一心で修行した」と高師さんは語った。

既存ファンだけでなく、新規ファンを獲得することも念頭に、新しい味のあり方も追求。一番難しかったと振り返った。

プロジェクト公開初日に目標金額150万円を達成

2020年2月15日にプロジェクトを開始。15日中に目標金額である150万円を達成した。そして、プロジェクト終了の3月26日までには、およそ420万円の支援が寄せられた。

クラウドファンディングがファンの熱量を高める

メーヤウファンからの支援者は数多く、中には一人で20万円の支援した人もいたという。感動的な応援コメントが多く記載されており、元店長の高橋さんも「20年やってきて良かった」と目頭を熱くしていた。高師さんは「ファンの熱量の高さを感じた」とコメントしている。

「僕やメーヤウの想いに対して『応援します』と支援していただいた。ただの融資ではここまでエモーショナルな体験を生み出すことはできなかったなと。資金調達の方法としてクラウドファンディングが必ずしもベストではないと正直思っています。でも、想いを伝えたり、誰かを喜ばせたり、そういったエモーショナルな体験ができるのはクラウドファンディングのメリットではないでしょうか」


ロイヤルカスタマー(熱狂的なファン)を味方につけることが目標達成のカギ

飲食系のクラウドファンディングで目標金額の支援してもらうためには、熱狂的なファンである「超ロイヤルカスタマー」を味方につけることが重要だと話す。

「僕自身もですがメーヤウファンのみなさまはものすごい熱量を持っていて、メーヤウを愛しています。そんな熱狂的なファンと接点を持ち続け、味方につけるコンテンツをつくることが、クラウドファンディングでは大切になってきます。そこに意識を向ければ達成へ近づくことができるのではないでしょうか」


高師雅一(たかし・まさかず)
1987年、埼玉生まれ。早稲田大学卒。メーヤウ復活のプロジェクトをやっています。メーヤウのチキンカリーとサウナが大好きです。