フラワーカンパニー「BOTANIC」、クラウドファンディングを活用したファン作りとは

“未来の花屋”を実現するためにクラウドファンディングを活用したBOTANIC Inc(以下、BOTANIC)、「世界観を伝える」ことを軸に、さまざまなこだわりを取り入れた同社。取締役副社長COOの上甲 友規(じょうこう ともき)さんから話を伺った。
プロジェクトデータ
プロジェクト名: フラワーロスゼロに挑戦!花き業界をアップデートする「未来の花屋」をつくります!
実施目的: サービス認知拡大・施設の開設資金調達
実施期間: 2020年2月24日~3月30日
調達金額: 260万円
URL: https://camp-fire.jp/projects/view/232241

株式会社BOTANICとは

「花き業界をアップデートし、花・植物に関わる人を幸せにする」をミッションに掲げるBOTANIC。代表取締役CEOの田中彰さんは、同社を立ち上げる以前、花という商材に魅せられて、都内の有名な花屋で修行をしていた。花の魅力を再認識すると同時に、花き業界の複雑な流通や過剰な廃棄ロス、労働生産性の低さ、ユーザーニーズの未開拓などの課題を感じ、2014年4月に同社を立ち上げた。現在、BOTANICでは3つの事業を展開している。

1. ex. flower shop & laboratory

同社のメイン事業であるフラワーショップ「ex. flower shop & laboratory」。2014年に開業し、SNS運用やファッション誌等のメディア露出により顧客を増やすとともに、花屋の在り方を模索している。後述するサービスは、実店舗を運営しているからこそ生まれた発想だ。

2. 花のサブスクリプションサービス「霽れと褻(ハレトケ)」

2017年に開始された「霽れと褻(ハレトケ)」は、提携農園で育てられた花と、その花のストーリー(新聞)を定期配達するサービス。注文した分だけ農園で採花し、新鮮な状態で出荷される仕組みだ。

3. D2Cフラワーサービス「Lifft(リフト)」

昨年スタートした花の廃棄ロス(フラワーロス)の問題を解決すべく立ち上がった「Lifft(リフト)」。フラワーロスは業界全体の課題となっており、花屋は適正な利益を得られない現状の一因になっているという。課題の解決策の一つとして、農園と顧客を繋ぐ流通経路(農園→複数の中間業者→花屋→顧客)の見直しが必要だ。この流通を極力シンプルにすることで、廃棄ロス、不要な流通コスト、在庫維持に必要な人件費などが削減され、高品質な状態かつ適正な価格で花を顧客へ届けられる。そんな花屋の新しいあり方を「Lifft」で築こうとしている。今後、同社が注力していきたいと考えているサービスだ。

世界観を伝え、ファンと一緒にブランドをつくり上げたい

2020年2月、BOTANICのオフィスとLifftのコンセプトを体現するショールーム「Lifft Concept Shop(仮称)」の開設費用として、クラウドファンディングを開始した。なぜ、同社はクラウドファンディングの活用を試みたのか問いかけると、上甲さんは「BOTANICの世界観を多くの方に伝えることで、共感してくださる新しいファンをつくりたかった」という。


「花は、世界観を見せて、そこに共感や好意を持って買ってくださる商売だと思っています。ブランドをつくり上げていくのも同様に、ファンを増やさなければなりません。そのため、しっかりメディアを巻き込みながら、世界観を提唱していく必要があります。そして、僕らの世界観に共感してくださる人たちとブランドを一緒につくり上げていきたいと考えていたんです」

「特に、花への興味がライトな方々にも僕らの世界観を知ってもらいたい。クラウドファンディングでは、そういった人たちにも訴求できると考えました。実際、“おもしろいことをやっている!”と興味を持った人が集まってくださって、僕らの取り組みが訴求できたと感じています」

この想いが伝わり目標金額の100万円を早期に達成し、2020年3月18日現在では180万円を突破している。

短期間でこだわり抜いたプロジェクトページ作成

プロジェクトページには、BOTANIC、そしてLifftの世界観を伝えるためにさまざまな工夫を凝らしていた。2~3週間という短い準備期間の中、作成していったプロジェクトページ、本文、写真、リターン、宣伝それぞれのこだわりについて伺った。

「本文」は切り口を明確に構成する

花へのライト層やクラウドファンディングを活用している人へ世界観を伝えるため、「サスティナブル(持続可能性)」を切り口に本文を構成していった。人が集う場所(Lifft Concept Shop(仮称))で花と植物を循環させたい、そして、廃棄される花・植物を無くしたいという想いが伝わる内容となっている。また、スペース自体が完成されていないことから、各スペースは図と説明が入れてあることで、イメージがつきやすくなっているのもポイントだ。

「写真」は統一感を出す

ネットでも花を販売しているBOTANICは、写真で商品の購入を検討する顧客も多いことから、花の写真にはこだわりを持っている。プロジェクトページでも同様に写真の選定にはこだわったという。写真には統一感を持たせ、世界観が伝わるような選定をした。「これまで、どうすればデザインセンスが伝わるかを研究してきた」と語る上甲さん。強みが発揮させられたとともに、写真が与える印象の大きさを感じた。


「リターン」は豊富に

「花屋さんがこんなこともやっているんだ」と支援者へ理解してもらうため、リターンはあえて豊富にしたという。文章での説明だけでなく、リターンを見たことで、BOTANICができること(=BOTANICの世界観)が分かるようになっている。


この投稿の影響もあり、目標金額達成までの速度が早まったようだ。開始されてからではなく、開始前に仕込んでおくことで、スタートダッシュを加速させ、より注目を集めることが可能になる。また、目標金額が達成した際にも同様に投稿をしており、そちらも多くのいいねがついていた。



クラウドファンディングで新しいファンが増えた
募集終了までの残りわずかの期間には最後の追い込みを考えているという。また、今回のクラウドファンディングを振り返り「やってみて、とてもよかった」と上甲さんは語る。それは、クラウドファンディングを活用する理由でもあった「BOTANICのファンを増やしたい」という願いが実現へと向かっているからだ。

「リターンの中身が分かりづらく、支援を迷っている人もいました。そのため、リターンの内容をもう少し見えるように情報を発信していきたいと考えています。いま、150人以上の方がパトロンになってくださって、もともとBOTANICのファンだった人もいれば、普段お花屋さんと距離が近くない人もいらっしゃった。いろいろな方たちが支援してくださったので、クラウドファンディングを実施してすごく良かったと思います」