コロナ禍で大ピンチ。それでも日本を明るく照らし続ける「東京タワー」が挑戦したクラウドファンディングの全貌

東京のシンボルマークとして長年愛され続けてきた「東京タワー」が、クラウドファンディングに挑戦した。プロジェクトページ公開から約1ヶ月で2,400万円超の資金調達を達成。12月20日の終了まで今も尚走り続けている東京タワーのクラウドファンディング実施メンバーにインタビューを決行。苦しい状況下でも前向きに思いを伝える東京タワープロジェクトの全貌に迫る。
昨今の新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、展望台への来場者数はコロナ禍前と比較し、約80%もの減少。観光面での売り上げが見通せない状況の中、「何とかして東京タワーを守り抜きたい」という思いを胸に、10月30日から『上を向いて歩こう!東京タワーのライトアップが、皆さんに元気を与えられますように。』のプロジェクトを開始した。

プロジェクトページ公開から約1ヶ月で2,400万円超の資金調達を達成(2020/12/4時点)。12月20日の終了まで今も尚走り続けている東京タワーのクラウドファンディング実施メンバーにインタビューを決行。苦しい状況下でも前向きに思いを伝える東京タワープロジェクトの全貌に迫る。

プロジェクトデータ

プロジェクト名: を向いて歩こう!東京タワーのライトアップが、皆さんに元気を与えられますように。
プロジェクトの目的: 日本を明るく照らす特別ライトアップに向けた資金調達
募集期間: 2020年10月30日~2020年12月20日
プロジェクトURL: https://camp-fire.jp/projects/view/323045

東京タワー開業約60年で初となる未曽有の事態

東京タワーが建設されたのは1958年。今からおよそ60年前のことだ。これまでは家賃収入や観光収入を中心に、ほぼ黒字経営を維持してきた。

ところが、コロナ禍の予兆が出始めてきた2020年2月頃から観光客が減少。観光客の約4割を占めていた訪日外国人観光客の減少が、売上に大きな影響を及ぼした。さらに、例年は全国各地から修学旅行で観光客が集まる場所となっていたが、修学旅行を実施しない、東京への修学旅行は避けるといった学校も増加。現在は、東京都内や神奈川県・千葉県など近隣の観光客がほとんどだという。

「東京タワーを未来永劫維持していくために何ができるのかを考えていました。どうしたらいいのか先が見えない状況だったとき、偶然『京成バラ園』のプロジェクトを知りました。それまではクラウドファンディングをしようという発想はなかったのですが、こういう方法もあるのかと。

そこで、飛び込みでCAMPFIREさんに話しを聞きに行ったら『新型コロナウイルスサポートプログラム』のキャンペーン中だとご説明をいただき、やってみようと決めました」

8月末に『新型コロナウイルスサポートプログラム』の申請を行い、10人体制でプロジェクト設計の準備を進めた。そして、申請から約2ヵ月後の10月30日にプロジェクトページをオープンした。




二つの懸念点を打破したプロジェクト設計のアイデア

クラウドファンディングの実施にあたっては、事前に二つの懸念点があったという。一つはクラウドファンディングを実施することで「東京タワーが潰れるのではないか?金儲けを考えているのではないか?」といった“ネガティブブランディングになる可能性”。もう一つは東京タワーには展望台チケット以外の商品がないため、どうしても“リターンの幅が狭くなってしまうこと”だった。

東京タワーは二つの懸念点をどのように打破していったのだろうか。

〇 ネガティブブランディングになる可能性の解決案

【とにかく前向きに】
「本文やタイトルの内容はとにかく前向きに書くようにしています。『力を貸してください』というメッセージはもちろん伝える一方で、『上を向いて歩こう』というキーワードを使いました。コロナ禍で苦しいのはみなさま同じです。東京タワーを見上げて、コロナで落ち込んだみなさまの心を少しでも前向きにできるようにという思いでページをつくりました」

前向きさは「資金の使い道」にも現れている。東京タワーのメインデッキにハートマークや西暦を表示するといった粋さ。コロナ禍で苦しかった2020年を頑張った人たちへ向けた感謝の気持ちやエールが込められた内容になっている。


また、本文だけではなくSNSでも前向きな言葉と共にクラウドファンディングの告知をしている。

「最初は積極的にアピールしてしまうと東京タワーはクラウドファンディングでお金儲けを考えているのではないか、と思われることを心配していました。ですが、SNSで発信した直後は支援が増加していますし、前向きに応援してくださっているコメントが届きます。とても励みになっていますし、みんなで感動しているところです。引き続きもっと積極的にアピールしていこうと思っています」

〇 リターンの幅が狭くなってしまうこと解決案

【①近隣の観光業者と協力/②遠方者・年配者向けの内容/③東京タワー初の試み】

① 近隣の観光業者と協力
「近隣の観光業の方たちと協力しました。例えば、シーライン東京さんの協力のもと東京湾遊覧船『シンフォニー』のサンセットクルーズペアチケットをリターンに設定し、海から東京タワーを楽しんでもらう、ザ・プリンスパークタワー東京さんのペア宿泊プランで東京タワーをホテルのお部屋から楽しんでもらうなど。クラウドファンディングを知らない企業様も多かったので、しっかりと説明をして。東京タワーだけではリターンのバリエーションがないので、協力してほしいとお申し入れさせていただきました。お付き合いのある企業様であったことと、観光業のみなさまも同じように大変な時期だったことから、すぐにご理解いただけました」
各観光施設も、東京タワーをキッカケに足を運んでほしいという思いがあったのだろう。ちなみに協力相手は観光業者だけではない。幸稲荷神社と協力して設定した「令和3年3月3日日付入りオリジナルデザイン タワー大神宮333御朱印セット」のようなリターンもある。

ザ・プリンスパークタワー東京と東京タワー

②遠方者・年配者向けの内容
「最初に行けないけど支援したいという方向けに『御礼の手紙』と非売品の『日本電波塔初代ロゴ入りオリジナルトートバッグ』をセットにした3,000円のリターンを設定していました。ただ、プロジェクトページを公開してみると、コロナ禍で足を運ぶことが難しい遠方の方やご年配の方から思いのほか多くの『支援したい』という声をいただいたので、追加で東京タワーのグッズを詰め合わせた『東京タワーSpecial支援セット』という10,000円のリターンを設定しています」

東京タワーの来場者には40~50代の人が多いそうだ。そのため、今回の支援でも40~50代の人が多くの割合を占めている。特に女性層が多いため、女性をターゲットにした「御朱印」や「1時間限定のシンデレラツアー」などのリターンも設定されている。

③東京タワー初の試み
これまで東京タワーでは体験できなかったリターンもある。なんと、個人でも展望台のメインデッキを貸し切りできるのだ。

「イベントなどで法人のお客様へ貸し切りはしてきましたが、今回は初めて個人の方も貸し切りが可能となっているので貴重かと思います。ちなみに個人的に一押しのリターンは3時間限定で東京タワーをお好きなカラーにライトアップできるリターンです。東京タワーが333メートルということで333万円の金額を設定しています。かなり高額な金額のため、CAMPFIREのキュレーターさんには無理を言って設定したので、ぜひこちらのリターンにも注目してほしいなと思います」


前向きなメッセージや多くの協力を得たリターンの影響もあり、プロジェクト開始から約1ヵ月経過した現在1,115人の支援者から24,477,014円の資金が集まっている。(2020/12/4時点)

順調に目標金額へ近づいているように感じるが、担当者からは「3,000万円はとても大きな数字なので正直なところ不安は拭えない」とも。同時に、プロジェクト終了までの残り期間への前向きな姿勢が感じられた。

「3,000万円はなかなかキツイ数字だと思っていますが、宣言をしたからには何としてでも達成したいと思っています。そのためにも、引き続き目標達成のライトアップに向けて頑張っていることをアピールしながら、支援していただいた金額を逐一ご報告していければと思っています。

また、お取引先のみなさまにも個別にご連絡していまして。ありがたいことに、そこから拡散いただくこともありますので、アナログではありますが続けていこうと考えています」

2021年を良い年へするために、東京の夜景を盛り上げたい

クラウドファンディングには初挑戦だった東京タワー。クラウドファンディングを実施してみての感想を伺うと、「今まで直接コミュニケーションを取れなかったお客様と接点ができた」と語ってくれた。

「初めての挑戦だったため、どう伝えることが正解かリターンはどうすべきなのか正解が分からず難しさを感じていましたが…クラウドファンディングがキッカケで東京タワーへの思いを一人ひとりから直接聞くことができました。東京タワーへ毎日通勤していると東京タワーの存在を当たり前のように感じてしまうこともありますが、改めて東京タワーが愛されていると感じました。それが社員一同のモチベーションに繋がっています。

ただ、支援者のみなさまには高額の支援をしていただいているため、リターンに対して不満に思われたりガッカリされたりしたらどうしよう…という心配はあります。ここまで温かいコメントを贈っていただけたので、リターンをお返しするまでしっかりやりきらなければという気持ちです」


最後に、本プロジェクトへの支援を考えている人たちへ向けたコメントを伺った。

「2020年はオリンピック・パラリンピックが開催される予定の記念すべき年だったにも関わらず、とても大変な年になってしまいました。東京タワーを含め、多くの方々が厳しい状況にいらっしゃると思いますが、2021年は絶対に良い年にしていきたい、その後押しを東京タワーができたらと思っています。『東京タワーのライトアップを見ると元気が出ました』というお声をいただくので、3,000万円を達成して、日本を元気にできるようなスペシャルライトアップで、年末年始の東京夜景を盛り上げていきたいです。

また、東京タワーは昨年、施設をリニューアルしています。今は外からしか見られないという方も多いと思いますが、コロナ禍が落ち着いたら東京タワーの展望台にもお越しください!2021年はハッピーな年になると信じて。みなさま、引き続きご支援よろしくお願いします。」