2019/12/05 14:19

 まず『マブラヴ』という作品について駆け足で簡単に説明しよう。

 ここではPCゲーム「マブラヴ」(アージュ、2003年)「マブラヴ オルタネイティヴ」(2006年)の二作品をまとめて『マブラヴ』というひとつのお話として扱う。「マブラヴ」は「マブラヴ エクストラ」と「マブラヴ アンリミテッド」というふたつのシナリオからできているので「オルタネイティヴ」とあわせて三つのシナリオで成り立っていると言える。

 ユーザー(ゲームのプレイヤー)が最初に触れるのは「エクストラ」シナリオ。時は2001年10月21日、舞台は日本・横浜辺りによく似た柊町にある優秀な進学校・私立白陵学園附属柊高等学校。主人公・白銀武(しろがね たける)はそこに通う3年生。学業や部活動に励むこともなく唯一の特技は放課後のゲーセン通いで鍛えたロボット格闘ゲーム、隣家に住む幼なじみ・鑑純夏(かがみ すみか)とはしょっちゅう一緒にいながら恋愛関係に発展する気配もない、モラトリアムな日々を過ごしていた。そんな彼らの前に現れたのは転校生・御剣冥夜(みつるぎ めいや)。彼女は日本を代表する超巨大財閥の跡取り娘でありながら最初からタケルにベタ惚れという謎多き存在。冥夜の出現に危機感を抱いた純夏、タケルを恋愛対象として意識し始める他のクラスメイト…という展開で始まる学園恋愛アドベンチャーゲーム。

 「エクストラ」を一定条件クリアしてプレイできるようになるのが「アンリミテッド」シナリオ。平和な学園生活の恋愛騒動に悩んでいたはずのタケルがある朝目を覚ますと、そこは一転、戦火に荒廃した無人の街だった。学校に着くとそこは国連軍基地、見慣れたはずの先生も級友も(但し、純夏は見つからない)皆軍人軍属、2001年10月という日付はそのままに地球外侵略者との戦争で人類が絶滅の危機に瀕しているという並行異世界だった。プレイヤーもタケルも訳のわからないままに話は進み、恋愛ゲーム的な要素を含みながらタケルは訓練兵として成長してゆくがある日突然、人類の敗北をほのめかされ幾多の謎を残したまま物語は終わる。

 リアルタイムで三年のブランクを経て発表されたのが「オルタネイティヴ」シナリオ。訓練課程中に人類敗北を迎え、悔しさを爆発させたはずのタケルが目覚めたのはまたも2001年10月、人類劣勢の世界だった。「アンリミテッド」での記憶と軍人として約三年鍛えられた身体も持っていたタケルは“前回”もこの基地で強権を持っていた香月夕呼(こうづき ゆうこ。「エクストラ」では物理教諭、この世界では基地副指令)と協力し人類勝利と自らを縛る理不尽な“ループ”からの脱出を目指す。“前回”より早いペースで正規兵に昇格したタケルだが直後にとんでもない事件に遭遇、夕呼の作った次元転移装置で元の(「エクストラ」)世界へと逃げ出す。しかし「オルタ」世界の因果を背負ったまま逃げてきたタケルは平和な世界にも次々と災厄をもたらし、ようやく自己の果たすべき責務に立ち返って「エクストラ」世界の夕呼の協力で決意新たに「オルタ」世界へ戻る。そこでタケルが出会うのはこの世界にいないはずの純夏だった…その後、数多の犠牲を払い最後の戦闘に生き残ったタケルはこの世界が“無限ループ”していたのは自分が他のヒロインと結ばれたから(「アンリミテッド」にはそもそも純夏と出会う選択肢が存在しない)で、さらに人類の戦術が敵に漏れて人類に多大な犠牲が及んだこと、いずれも純夏の無意識領域が引き起こしたことであり、タケルの元の世界への帰還と人類の勝利は純夏が自ら犠牲になる作戦しかあり得なかったことを知る。全ての責務を果たしたタケルは、今度は自然の摂理の力で“元の世界”へと帰ってゆく…。


 とりあえず『マブラヴ』に関してはこんな認識でこのあとの説明を読んでみて欲しい。