2013/09/27 18:08

【増上寺「光摂殿」大広間会場出展者 10】

 

古賀 崇洋  KOGA Takahiro


【略歴】
1987 福岡県出身
2010 佐賀大学文化教育学部美術・工芸課程 卒業
2011〜鹿児島県長島町にて作陶

 

http://www.ikeyan.jp/artist/2011/koga.html

 

 

ステートメント


価値観の多様化が言われつつも、現代のリソースは都市部に集中する一方、空洞化と画一化が進んだ地域の文化的な力が弱まっているが、都市部から発信される時代の価値観やニーズを意識しつつも、九州・鹿児島地域の独自性を積極的に混合し、あえて地方から価値を発信したい。企業ではない、個人の領域でのみ追求できる異化作用のあるフォルム・質感を追求している。

●「頬鎧盃」について

現代のモノは工程の効率化により、摩擦のない作りやすい形状が一般化している。消費者の価値観もそれに沿ったモダン・ミニマルが一般化し、ペイントやカラーリング技術の発達により、製品の装飾は交換可能なバリエーションとして意味を剥奪された。「頬鎧」は元来が身を守る防具ではあるが、戦国という時代、武将という特異な使い手を背景に、戦う相手を威嚇するための目的から、場合によっては過剰とも言える装飾性を持ち、形状に込められた意味合い、フォルムへのこだわり、なにより圧倒的な個性を追求したモノといえる。
また、盃という機能については、酒宴は古くから儀礼・交流の場としての意味合いが強く、酒類と酒器はそこで発展した。現代、飲み会は個別化と飲酒離れといった希薄化がすすんでいる。古来よりの酒宴の席は、神聖な儀礼や政事における意思決定をも含み、さらには無礼講といった立場を超える祝祭の場として人の度量や心意気を見る場でもあった。その密度を恢復し、突出した個を持つ酒器によって酒宴=コミュニケーションを盛り上げる端緒としたい。 
当時、武家の教養として発展した日本の総合芸術、茶の湯。その系譜を汲んだ懐石の器として発展した酒器。茶の湯と戦国武将と工芸、特に焼き物との密接な繋がりから必然的に導いた頬鎧のフォルムをした磁器盃という関係性を特筆しておきたい。

今回、天祭一○八「増上寺現代コレクション」のコンセプトである我々の時代の作品を残す、文化復興を目指すというものに賛同し、上記コンセプトを作品に込められているか、表現できているか、同時代性のアーカイブとして歴史ある由緒正しき増上寺というこの上ない場所に自分の作品を残せるか、などをお集まり頂く様々な方に観て頂き判断して貰える良い機会だと思い出展を希望致しました。 今回主に出展を予定している頬鎧盃は従来の頬鎧盃の作品の反省点を参考に、よりアーティスティックに表現の幅とバリエーションを増やしています。(目下制作中)更なる進化をさせていますのでより質の高いパフォーマンスと特に初見の方には驚きを持ってお見せできると思います。