デザイン会社「ノンバーバル」経営の会員制ウイスキーバー、クラウドファンディングで新規顧客を開拓

大阪・裏北新地のとあるホテル内に、ひそやかにたたずむウイスキーバーがあります。一般では入場できない会員制のそのバーの名前は「WhiskybarV(ウイスキーバー・ヴィー)」。ウイスキーというニッチな領域にもかかわらず、会員数は現在500人を突破。今後は会員数1000人を上限とし、クラウドファンディングを通じて新規顧客の獲得に取り組んでいる。
プロジェクトデータ
プロジェクト名: 【裏北新地-会員500人突破記念】非公開会員制ウイスキーバー!一般会員限定募集!
プロジェクト目的: 新規顧客の獲得
募集期間: 2019年11月25日~2020年2月2日
プロジェクトURL: https://camp-fire.jp/projects/view/206269

このバーの経営は、大阪・東京のデザイン会社「NONVERBAL®︎,INC.(株式会社ノンバーバル)」。いったいなぜ、ブランディングデザイン会社(以下、デザイン会社)が会員制のウイスキーバーを経営しているのか。社長の冨士 武徳(ふじ たけのり)さんに聞いた。

■自社事業運営の実体験をもとにノウハウを蓄積

――まず、なぜデザイン会社が隠れ家バーを運営されているのか教えていただけますか。


冨士:(事業運営の)実体験を元にし、ブランディングに関して多角的視点を持つことで、一貫したブランディングのノウハウを蓄積するためです。弊社の業務について、少し説明します。主にクライアント事業のブランディングの仕事をお受けしていますが、ノンバーバルでは、「クライアントワーク」、「インハウス」の2種類のスタイルがあります。

デザイン会社は通常、クライアントワークとした受注が多いのですが、弊社はそこに加えてインハウスで、ブランドの立ち上げから運営、そこからどうプロモーションして、売上や利益を残していくか。を自社事業の中で管理をし、シミュレーションをしながらブランド展開をしています。

こうした実体験を元にして、多角的視点を持ち、ブランディングのノウハウを蓄積していきます。

――普段のお仕事では、どんな業種のクライアントがいらっしゃるのでしょうか。
冨士:弊社のクライアントの業種は幅広いですね。大きくは地域や観光、ホテルやレストラン、ブライダル、葬儀会館、介護施設、食品メーカー、アパレル、製造業などBtoBtoCがメインですが、領域は様々です。

ブランディングという観点では、ビジネスを長期存続させるには「ブランド」は必要不可欠なものです。いわゆるヘビーユーザーとなるリピート顧客を作っていくことが重要なわけですが、それは業種が変わっても(ブランディングの)本質は変わりません。なので、私たちは顧客(心理)構造を身近に確認できる環境として、このウイスキーバーの運営をしています。

店舗の表層的なデザインだけではなく、ブランドのコア・ファクターとなるコンセプトメイキング、人事(採用や教育)、CRM(顧客関係性マネジメント)を行い、今のウイスキーバーとの差異化を考え、エッジを立てて、社内で磨きをかけていくイメージですね。

――中でも飲食店を選ばれたのはなぜなのでしょうか。
冨士:飲食店は常に飽和状態で既存のプロモーションとは異なるやり方がないかどうかを探求したいと思うようになりました。

今はウェブ予約やグルメアプリで予約を待ち受けるやり方だと思います。常連顧客になれば本人宛のDMを送ったり、ウェブアクセスでのDMでお得な情報を流したりするかと思います。しかし開封率、閲読率などの面や、反応率では課題がないとは言えないのが現状です。

弊社でも飲食業のクライアントが多いのですが、どこも日々の集客のみならず、顧客づくりには困っています。店舗をどうブランディングするかというところから始まり、店舗のコンセプトやイメージ、サービスや料理で違いを作っていくのが王道なのですが、それ以外の集客面でも、新しい店舗としての可能性を探っていきたいというお声をよくお聞きするんです。

一般的に、ホテル、ブライダル、塾、飲食店、美容室は受動型サービスの経験が長く、プロモーション手法も保守的な傾向があります。プロモーションを外部サービスに委託するケースが多く、くプロモーションコストも安価ではないうえに継続的に集客する必要があります。

継続的な集客には主に広告が使われている訳ですが、これに依存してしまうと、なかなか自社で集客、顧客化をするのが先延ばしになります。特に常に新規客へのアプローチばかりに偏ると、せっかくファンになっていただいた顧客の「ブランド離れ」が起こり、受動型でのプロモーションは、そのルーティンからなかなか抜け出せないというジレンマに陥ります。

これらを解決する手法として飲食店の中でも「会員制ビジネス」に注目することにしました。しかし、こうした実証実験はクライアントの土俵ではなかなかできないので、実践として自社で「会員制ビジネス」の飲食店を持つことにしました。

■会員制バーで実践する「ファン」構築と集客


――会員制ウイスキーバーの詳細について教えてください。
冨士:会員制サービスなので、クラウドファンディングページ(https://camp-fire.jp/projects/view/206269)を通じて入会をしていただく必要があります。新規会員のメンバーズカードは「ブラック会員」と「ロイヤルゴールド会員」があり、ブラック会員が入会3万円、ロイヤルゴールドが入会10万円です。ロイヤルゴールドは更新料が年間5万円かかります。ロイヤルゴールドを数年間継続し、ある条件を満たした方のみプラチナ認定があります。

――本来は会員にならないと入店できないわけですよね。今回のプロジェクトのリターンや特典について教えてください。
冨士:今回、CAMPFIREで実施したプロジェクトに関しては、特別機会として、新規のお客様に1日限定の体験入店権ができるリターンを用意しました。特典内容は、オリジナルハイボール1杯とおつまみ1品がつきます。ぜひ、今回の体験入店で、ウイスキーに興味のある方に会員制バーを体験していただきたいと思っています。

――会員制にするメリットを教えてください。
冨士:初来店いただいた際に本人確認として身分証明(名刺可)のご提出と、同時に公式LINE@の登録をお願いしています。以後、お客さんとのダイレクトメッセージでやり取りができるようになるので、会員様と密接なコミュニケーションがとれるようになります。

クラウドファンディングのリターンは事前に購入していただいているので、お客様が必ずご来店いただけるのもありがたいですね。

――お店は隠れ家的なホテルの中にあるんですよね。
冨士:そうなんです。席数は24席しかありませんので、バーテンダーやシェフとお客様との距離が非常に近く、親密な関係性を築けることも特徴ですね。

会員様宛へのダイレクトメッセ―ジは、頻度はそう多く送りません。月1〜2回くらいで情報を入れるようにしています。やはり、頻度が多すぎても嫌がられてしまいますから。内容はイベント案内やウイスキーや料理の非公開情報などで、一人ひとりの会員様との密接なやりとりをさせていただいております。

――プロモーション施策としての効果はいかがでしょうか。
冨士:通常飲食店がDM送っても開封率は40〜60%程度ですが、私たちの店舗の開封率は70%を超えています。内容は会員様のみの情報なのでここでは言えませんが、会員様(ファンになっていただいたお客様)にとって有益な情報や利用価値のある情報をどんどん企画していきたいと考えています。

――ウイスキーの魅力を教えてください。
冨士:「存在価値の奥深さ」でしょうか。個人的にはストーリー性のあるマニアックなものが好きですね。私どものウイスキーバーには「ウィスキーコンシェルジュ」が在籍していて、ウイスキーと料理のペアリングもご提供できることも特徴の一つです。

最近はワインのペアリングは多いのですが「ウイスキーのペアリングをしてくれる店はなかなかない。」とよく喜んでいただいています。バーでしか提供できない調理法での料理とオリジナルハイボールとのぺアリングもあります。


うちのバーテンダーはもとはイタリア・東京・大阪でのミシュラン店のトップシェフの経験があり、ウイスキーだけでなくワインもかなりマニアックで詳しい方に在籍していただいています。また、通常のウイスキーバーでは軽食しか出さないことがほとんどですが、料理はモダン・イタリアンとしっかりとした食事もお愉しみいただけます。最近は、シェフが調理法にこだわったペスカトーレ(マフィアが好むペスカトーレ)がおススメ。イタリアやワイン好きの方でもシェフとの会話も楽しんでいただけると思います。

――どんなお客様におすすめでしょうか。
冨士:昔ながらのオーセンティック・バーの要素だけではなく、スタイリッシュなニューヨークのバーを思わせる落ち着いた空間づくりにこだわっていますので、男性同士だけでなくカップルでの来店や、デートの利用も多いですね。30代後半~40代のお客様がメインですが、20代、50代の会員様にもご利用いただいています。一杯1200円くらいから楽しめるので、今回のプロジェクトを機にぜひ、ご自身の隠れ家の一つとしてウイスキーの世界を体験していただけきたいですね。