北海道コンサドーレ札幌がコロナ禍で見せたパートナー企業・サポーターとの絆

スポーツ界にも多大な影響を及ぼしている新型コロナウイルス。多くの試合が延期や中止になり、再開後も無観客での試合を余儀なくされた。『北海道コンサドーレ札幌』のプロジェクトは、開始から13分で目標金額(300万円)を達成、16時間で2,000万円の支援金を集めた。これほどまで多くの支援者、そして支援額を集めることができた秘訣に迫る。
試合ができない、試合をしても観客がいなければチケットやグッズの売上はない。多くのスポーツチームが経営的に大きな打撃を受けている。

サッカー界でも同様に、(J1リーグは)2月下旬から6月いっぱい試合中止を発表、7月4日に試合を再開した。試合のできない4ヵ月間、「自分たちに何かできることはないか」とクラウドファンディングを実施するクラブチームも出てきていた。

その中でひときわ注目を集めたのが、『北海道コンサドーレ札幌』のプロジェクトだ。開始から13分で目標金額(300万円)を達成、16時間で2,000万円の支援金を集めた。支援者の数も4,000人を超えるほど。なぜ、これほどまで多くの支援者、そして支援額を集めることができたのか。北海道コンサドーレ札幌のパートナー事業部 伊藤浩士さんからお話を聞いた。

プロジェクトデータ

プロジェクト名: #全道一丸で乗り越えよう!コンサドーレパートナー企業 応援プロジェクト!
プロジェクトの目的: パートナー企業支援
募集期間: 2020年6月4日(木)〜8月22日(土)
支援総額: 56,128,613円
支援者数: 4,905人
プロジェクトURL: https://camp-fire.jp/projects/view/264664

過去4回のクラウドファンディング実施が5回目の後押しに

北海道コンサドーレ札幌(以下、コンサドーレ)は、これまで4回のクラウドファンディングを実施。毎回目標金額を達成している。2019年6月に実施したプロジェクト『J1北海道コンサドーレ札幌元主将・河合竜二引退試合を、一緒に盛り上げましょう!』では、目標金額(200万円)を大幅に超え、約1,400万円の資金が集まった。このプロジェクトの成功が、今回のプロジェクト実施に踏み切るキッカケに繋がったと伊藤さんは語る。

「河合竜二氏が2018シーズン限りで22年間に及んだ現役プロサッカー選手を引退し、2019シーズンからC.R.C(コンサドーレ・リレーションズチーム・キャプテン)に就任しました。当時、最後の花道をクラウドファンディングで多くのパートナー企業様(クラブの協賛各社)、サポーターのみなさまに支えられ引退試合を開催することができました。そして今回、コロナ禍で何かできることはないかと彼自身でパートナー企業様の動向をヒアリングしており、私たちパートナー事業部でも何かできることはないかの考案と同時に、パートナー企業様への動向調査を始めていました。河合氏の考えとパートナー事業部の考えが一致したことが、今回のクラウドファンディングの決め手になりました」

どんな状況下でもクラブを支え続けてくださるパートナー企業様を、クラブ側が支える側に立つ。誰もが困難な状況だからこそ、クラブに関わる全ての方々と手を取り合ってこの状況を乗り切るため『#全道一丸で乗り越えよう!コンサドーレパートナー企業 応援プロジェクト!』を発足した。


サポーターが最大のPR。開始13分で目標金額達成

6月4日にプロジェクトページを公開後、およそ13分という驚異のスピードで目標金額を達成。数字の勢いに伊藤さんも「本当に感謝したい」と感嘆の声。同時にプロジェクトを支援したコンサドーレサポーターへの信頼の厚さを口にした。

「プロジェクトを発足させたときから、サポーターのみなさまの力があれば目標金額を達成できるだろうと確信がありました。私たちの最大の強みは“サポーターのパートナー企業様に対するロイヤルティの高さ”です。過去のクラウドファンディングの経験から、サポーターのロイヤルティの高さは北海道に存在する私たちクラブにとって誇らしいと自負しています。新規企業へアタックする際の提案資料の中にも記載したほど、本当にパートナー企業様に対する献身的な活動や行動はJリーグクラブのなかでも屈指です。その証として昨年、クラブ史上初カップ戦決勝では一体感と改めてサッカーの素晴らしさをお届けできたのではないかと思っています」

大変な状況であるのはみんな同じ。それでも4,000人以上の支援者を集めたのは、コンサドーレ選手・スタッフが常日頃からサポーターたちと真摯に向き合い続けているからに他ならないだろう。そんなサポーターたちに向けて「コンサドーレにとって、サポーターこそが“クラブを支える営業マン”です」とコメント。

「毎日のようにサポーターのみなさんがツイートしてくださって。特に最初の一週間は、本当に私たちクラブ内でも感謝と誇らしさで感極まったほどで、目を見張るものがありました。選手自身のツイートももちろんですが、やはりサポーターのみなさまのSNS発信が最大のPRになりました。改めまして、本当にありがとうございました」




「本文」「リターン」へ手間暇をかけたプロジェクトページ

日頃の活動から得たクラブへの信頼が今回の圧倒的な数字に繋がっているが、一方で手間暇をかけて作成したプロジェクトページもまた目標達成の要因でもある。中でも、「ストーリーを意識した本文」と「パートナー企業様と連携した52種類のリターン」について解説していく。

● ストーリーを意識した本文

プロジェクトページ本文は、「ページの構成」「写真の選定」を特にこだわったという。

未曽有の状況だからこそ、みんなで力を合わせて乗り越えていこう!という前向きな印象が感じられる内容だ。プロジェクトページ公開までの期間、何度も話し合いを重ね校正していったのだそう。

「クラウドファンディングは真摯に向き合う想いとストーリーが大切だと思います。日頃から支えてくださるパートナー企業様、サポーターのみなさま、クラブに関わる全てのみなさまに対し、改めてクラブの存在意義を考えました。この苦境に立たされているのは私たちだけではないと」


最初にプロジェクトページのたたきを作成したときは、ネガティブな内容を中心に構成してみたのですが、プロジェクトメンバーから、これまで支えてくださったこと、そしてこれからもお世話になるパートナー企業様へ感謝がしっかり伝わる内容にしようと。最初に考え構成した、たたきを白紙に戻し、一から練り上げたんです」

ページ内に掲載されているたくさんの写真からも感謝や前向きな気持ちが伝わってくる。試合や練習中の写真だけではなく、これまでパートナー企業とともに実施してきた取り組みが理解できる写真、コロナ禍の選手たちの写真など。多くのみなさまがクラブを支えているという物語(ストーリー)が見て取れる。

「これまでのパートナー企業様との取り組み内容、ファン・サポーター、そして子どもたちとの笑顔があふれるイベント、コロナ禍で練習中止している選手の自宅トレーニング風景の写真などでみなさまにわかりやすく、かつ選手たちからも了承を得ながら、作り込んでいきました」

数多くの写真の中から、写真の色合いや角度などかなり細かい部分を見て、ストーリーが一番伝わるような写真を選定したそうだ。

● パートナー企業と連携した52種類のリターン

本プロジェクトでは、各パートナー企業様からのギフトをリターン品として設定。その数はなんと52種類。外出自粛を言い渡されていた中、4月1日から全パートナー企業様へ提案をすることになっていた。直接話に行くのは困難だったことから、電話やビデオ通話を利用して企画概要や趣旨を説明したという。

「パートナー企業様へ電話やビデオ通話で動向調査を実施し、可能な限りでどういう状況なのか、本当にクラウドファンディングのお声掛けをしても問題はないのかをヒアリングを続けていきました。各担当がリモートなどで説明するのは大変だったと思います。しかし、ご参画してくださったみなさまが協力的だったことが大きく、多くのパートナー企業様からリターン品のご提案をいただき、52種類もの商品でスタートすることができました」

パートナー企業一覧パートナー企業一覧

 



そして、在宅ワークが余儀なくされている中、各社ご担当の方々からのサンプル品手配の協力もあり、ただリターン品として掲載するのではなく、その品のPRにもなるようにとリターンの写真にもこだわっていた。コンサドーレの選手たちがリターン品を持った写真を掲載。選手たちはみんな口を揃えて「パートナー企業様のためなら」「成功するといいですね」など、非常に協力的で胸が熱くなったそう。

「一体感という言葉は簡単に口にできても、実行するのはなかなか難しい。それが今回も大きな形になったと実感しますし、チームとフロントがクラウドファンディングを実行するにあたり一枚岩になっていました。これはコンサドーレのトップ(代表取締役社長CEO)である野々村が日頃から先頭に立つリーダーとして、チーム、そしてクラブ全体の状況を常にパートナー企業様、サポーターのみなさま、メディアのみなさまに発信しているからこそだと思います」

サポーターのロイヤルティ高さが定量的に感じられる

伊藤さんは「これまで以上にロイヤルティの高さを感じた」と話した上で、定性的な面だけでなく定量的に可視化できることがクラウドファンディングのメリットだとも。

「日常的にサポーターのSNS発信、購買行動などからロイヤルティの高さは実証されていますが、クラウドファンディングではより数字として可視化されます。どれだけ支えられているか一目瞭然でした」

同時に「企業向けに商品・サービスを提供するパートナー企業様とプロジェクトを進めるのは難しかった」と伊藤さん。クラウドファンディングの支援者の多くは一般消費者向けのため、企業向けの事業を実施するパートナー企業様との連携の難しさを痛感し、今後の課題解決に向けてパートナー事業部内で話し合われたようだ。


最後に、本プロジェクトに関わったパートナー企業、選手、そして多くの支援をしたサポーターに向けて感謝の気持ちを述べた。

「日頃よりクラブを支えてくださるパートナー企業様、サポーターのみなさま、そしてクラブに関わる全てのみなさまの力でこんなにも誇らしい結果を残すことができました。未だ日常生活へ戻るには時間が掛かるかと思います。私たちは世界中が経験したことのない苦境を乗り越え、コロナ禍の前よりも良いクラブになれるよう、そして地域のみなさまに必要とされるクラブになれるように、今できることを全力で取り組んで参ります。今後もクラブに関わる全てのみなさまと一緒に新しい景色を見られることを信じておりますので、引き続きもご声援よろしくお願いいたします」

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