「誰もが祭りの一員になる」1支援につき1サメ!?温泉シャークが誇る企画力、巻き起こした熱狂。

“原動力は面白いことをやりたいと心から思う気持ち”そう語る永田さんの目は、まるで人生を楽しむ無邪気な少年のよう。 魂を込めたプロジェクトが生んだ熱狂で、前代未聞の純国産サメ映画を作り出しCAMPFIREアワード2023「たくさんの仲間を集めた部門」大賞を受賞。その想いとファン作りの真髄に迫りました。

プロジェクトデータ 

プロジェクト名:【特撮×温泉】日本発サメ映画「温泉シャーク」制作プロジェクト!2023年完成 
募集期間:2023年6月4日~2023年7月17日(43日間) 
調達金額:11,406,100円 
支援者数:1278人 
プロジェクトURL:https://camp-fire.jp/projects/view/650832 
プロジェクトオーナー:温泉シャーク @hotspringshark(X:旧Twitter) 
日本屈指の観光地である熱海温泉をモデルに、世界に誇れる純国産サメ映画を製作するため企画された“温泉シャーク”のクラウドファンディング。 

コロナ禍と熱海・伊豆山の土砂災害があり一度は企画が中止となったものの、2023年サメ映画ルーキー氏の協力もあり熱海温泉を盛り上げようと改めて企画が進行しました。 

脚本・監督には「全国自主怪獣選手権」2連覇を果たした井上森人氏、更に一部の特殊音響効果には邦楽界のレジェンドとも言われる平沢進氏も加わるなど、プロジェクト開始前から多くのファンを惹きつけます。 

更に「1支援毎にサメが1匹増える」という「サメマシマシプラン」のリターンが話題を呼び、432人からの支援が集まったことで432匹のサメが登場するという、前代未聞のサメ映画の制作が決定。 

その素晴らしい企画力で当初の目標金額100万円をわずか5時間で達成、最終的に1278人から1,140万円を超える支援が集まり、今回のCAMPFIREアワード2023「たくさんの仲間を集めた部門」受賞に至ります。 

当対談ではCAMPFIRE代表取締役の家入一真と共に、クラウドファンディングに至った原体験からプロジェクトを通して得られたものについて自身の体験をお話いただきました。 
以下、対談形式にてお送りします。 
プロジェクトオーナー:永田雅之さん(永田さん) 
CAMPFIRE代表取締役:家入(敬称略) 

抜群の企画力で前代未聞“432匹のサメ”映画を制作 

家入:この度はCAMPFIREアワード2023「たくさんの仲間を集めた部門」受賞おめでとうございます。 

まずはじめに、永田さんの活動についてお伺いしてもよろしいでしょうか。 

永田さん:ありがとうございます、映画「温泉シャーク」の企画プロデュースをしております永田雅之と申します。福岡県久留米市出身で、約7年前に静岡県熱海市に移住しました。 

普段は映像制作の仕事をしており、今回映画制作の本プロジェクトである「温泉シャーク」を企画しました。 

家入:僕も福岡県出身で現在は長野県の軽井沢に移住しているので、永田さんとは共通点を感じます。 

「温泉シャーク」いよいよ公開に近づいていますが、もうすでに色々なテレビや新聞などでニュースになっていて、とても話題になっていますね。 

クラウドファンディングについても取り上げていただいてありがとうございます。 

引用:絶賛制作中!日経MJ掲載されました! 

永田さん:これだけ話題になったのは、今回CAMPFIREさんのクラウドファンディングで皆さんに楽しんでいただき支援の輪が広がったおかげだと思います。 

特に「1支援毎にサメが1匹増える」というとんでもない企画で、432匹のサメが登場することになったのが大きな話題になりました。 

クラウドファンディングをしなければこんな企画は出てこなかったですし、とても盛り上がったので本当にやってよかったと思っています。 

家入:僕らもクラウドファンディングのプラットフォームを運営して13年くらい経ちますが、「1支援毎にサメが1匹増える」みたいな事例は初めてなんじゃないかな。 このアイデアはどこから出てきたのでしょうか。 
引用:【特撮×温泉】日本発サメ映画『温泉シャーク』制作プロジェクト!2023年完成 

永田さん:サポートしていただいたCAMPFIREパートナー*の方から、別のクラウドファンディングで「1支援毎にお弁当が現地に1つ届く」というリターンがあったという話を伺いまして、すごく面白いと思ったんです。 

*CAMPFIREクラウドファンディングパートナーの詳細はこちら 

サメ映画ファンの中では「サメ映画なのにサメがなかなか出てこない」っていうのが定説なので、いただいたアイデアをヒントに今回「1支援毎にサメが1匹増える」という企画にしてみました。 

「僕が支援したサメが画面に出てる!」という瞬間を見てみたいなと思いまして。 

最初は監督と「200支援くらい行けば面白いんじゃないかな」なんて話していましたが、話題が話題を呼んで最終的に400支援以上になって驚きました。 

家入:よく「登場人物の名前を決められます」とか「映画に出演できます」とかはありますが、“サメが出てくる”っていうのは他にはなくてすごく面白かったです。 

永田さん:あと「映画本編にサメ被害者として登場」というのもリターンに加えたら、1日で全部売り切れてしまって。 

「このリターンがあるんだったらもっと早く知っておけばよかった」という支援希望者が続出したのですが、被害者をあんまり増やすと劇中のストーリーが破綻してくるので限定10人にしました。 

家入:「お金出してでも被害者になりたい」ってサメ好きの人は本望ですよね。 

永田さん:そうなんです。リターンを「ただ何か提供するだけ」じゃなくて、支援するにあったって“一緒に作っていく”とか“輪の中に入っていきたい”と思ってもらえるものを意識しました。 

支援することはお祭りで神輿を担ぐ一員になること 

家入:クラウドファンディングの本質って“お祭り”みたいなものだと思うんです。 

僕らがCAMPFIREを立ち上げる時も、お祭りになぞらえ「挑戦者の火をみんなで囲んでその火を大きくしていく」という意味で“キャンプファイヤー”という社名にした経緯があって。 

例えばお祭りの提灯みたいに「地域の人たちがお金を出してお祭りにスポンサードする」というのも、クラウドファンディング的な側面があると思ったんです。

プロジェクトを支援することはお祭りに参加するための参加料であり、お祭り騒ぎを一緒に作り、神輿を担いだり踊ったりする仲間の一員となることなんじゃないかって。 

ただ、お祭りは思いつきから生まれるわけではなく「参加したくなるような企画や仕組み」があって成り立つので、温泉シャークさんのような企画力はまさに重要な要素だと思いました。 

永田さん:お祭りのようにみんなを巻き込むということに関しては、今回X(旧Twitter)の力も大きかったです。 

お祭り騒ぎの雰囲気を作るためには、プロジェクトのスタートである程度の人たちに見てもらう必要があると思っていたので、2ヶ月ぐらいかけて0からフォロワーを増やしていきました。 

引用:映画『温泉シャーク』公式 

サメ映画は海外からはたくさん来るけど日本からはあまり発信されてないという現状があったので、温泉シャークのクラウドファンディングが始まると、皆さん「待ってました!」という感じで、うまく波に乗れたんだと思います。 

コミュニティの熱量を高めるカギは“コアなファン” 

家入:僕は、SNSなどを通じてコミュニティを形成するとき「熱量をどう高めていくか」というのがすごく大事だと感じていて、温泉シャークさんはそのやり方がすごく上手いなと思いました。 

コミュニティって漠然と人が集まってくるのではなく、まず“コアなファン”がいて彼らの内側からの圧力が高まって、その熱量が外に少しずつ漏れ伝わる圧力鍋みたいなイメージがあるんですよね。 

そしてその熱量に魅力を感じて、更に人が集まってくる。 

なので今回、すでにある“サメ映画”というジャンルのコアなファンの方々がいて、更に“温泉”とか“地域”というそれぞれのコアなファンの方々がギュッと集まってきたんじゃないかなという印象です。 

永田さん:まさにおっしゃる通りで、まずコアなファンの人たちが楽しまないと拡散力が生まれないので、その人たちに「どう楽しんでもらえるか」をすごく大事にしました。 

例えばクラウドファンディング初日には、本当にコアなファンの人たちを呼んでイベントを開催したり、今まで出してなかった初公開映像を出してサメファンの人たちに拡散してもらったりしました。 

今現在も制作中の状況を発信しながら更に応援してくださる人を集めているのですが、常にサメ映画ファンの方々や、この映画のコアなファンの皆さんが喜んでいただけるような情報発信やイベントの企画を意識しています。 引用:映画『温泉シャーク』公式

“地域×温泉×サメ”で町おこしの新しいロールモデルに 

家入:これまでも永田さんは「熱海モンスター」といったご当地映画を作られていたり、熱海の町おこしプランナーもされてらっしゃるそうですね。 

永田さんが熱海という町で地域貢献をしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。 

永田さん:約7年前、特に縁もゆかりもないのですが「犬の散歩にいい場所だな」と思ったのがきっかけで熱海市に引っ越してきました。 

熱海に住んでみると、色んな活動をしている面白い人たちがたくさんいることに気づき、「自分にも何かできることはないか」と考えたんです。 

熱海で何か新しいことをして情報を発信すれば、この町がもっと盛り上がるかもしれないと。 

その中で、コロナの時期に若いクリエイターの方々が仕事に困っているのを知り「熱海で映画を作ったら面白いかも」と思い「熱海モンスター」という短編映画を撮影しました。 引用:【予告編】熱海モンスター

それから「温泉防衛バスダイバー」という特撮映画を作り、今回の「温泉シャーク」に至ります。
 引用:【温泉シャーク クラファン終了直前!特別公開】『温泉防衛バスダイバー』

 撮影地が聖地巡礼の場所になることもあるので、それが観光にどれだけ貢献できるかはわかりませんが、ファンの方々が来て楽しんでくれたら面白いなと思ったんです。 

家入:僕も先日熱海に行きましたけど、アートやカルチャーといった面で盛り上がっていますよね。友人のアーティストも熱海に移住したと聞きました。 

永田さん:そうなんです。本当にアーティストの方がたくさん来て熱海に色々なものができているので、面白いなと思っています。 

家入:僕も移住して「この地域で自分に何ができるのか」というのを今探っていて、色んなコミュニティに参加しています。 

地域には観光ガイドに載っていないような特別な場所もあって、まだまだ発見や可能性があるなと思います。 

そんな中で「温泉シャーク」さんの“地域×◯◯”という活動は新しいロールモデルになるかもしれないと感じました。 

こういう面白い活動がこれから更に広がっていけば、地域がもっと魅力的になるんじゃないかなと思っています。 

永田さん:地域で映画や映像を作るとき、お役所が作ったような退屈な映像が多いんです。 

確かに美しいけど、型にはまっていて個性がなくて面白味がないんですよね。 

だから自分の思い通りに面白い映像を作りたいと思ったんですけど、それを実現するためにはそれなりの数の見てくれる人やファンが必要になってくる。 

そこで、ファンを増やすために今回クラウドファンディングを実施することにしました。 

クラウドファンディングをすることで、自分のプロジェクトを改めて考え直すいい機会になりました。 
「これ、誰に向けて作ってるんだろう?」 
「何のために作ってるんだろう?」 
って自問自答することができたんです。 


好き勝手に作るのは簡単かもしれないけど、それだけだと自分の思いだけで突き進んでしまいがちで誰にも響かない。 

でも、クラウドファンディングを通じて、「どうやったら周りの人たちをファンにして自分の作品に興味を持ってもらえるか」を考えるとても良い機会になりました。 

自分自身のエゴが理想の社会をつくる第一歩 

家入:永田さん自身がやりたいことがある一方で、若いクリエイターのためや地域貢献など「人のために何かをしたい」という思いもすごく持っていらっしゃいますよね。 

その熱意が伝わるからこそ、今回のクラウドファンディング大成功につながったのではないかと思います。 

こうして永田さんが積極的に様々なことに取り組むことができる原動力は何なのでしょうか。 

永田さん:それは簡単で、“自分が何か面白いことをやりたい”のと“動いてないと死んじゃう”というその二つです。 

家入:確かに、自分自身の心の中から湧き上がる動機やエゴのようなものがないと、なんだか表面的で偽ったものになってしまうような気がしますよね。 

僕自身は、個人的な原体験や過去に感じた憤りなどが動き出す原動力になっています。 

例えばCAMPFIREを作るときもそうですが、自分が思う理想の社会に近づける大事なものであり、自分がどういう社会を望んでいるのか、その深い部分が活動を始める本当の理由になっていると思うんです。 

だから、そんな自分自身のエゴとも言えるかもしれないその原動力が起点となって理想の社会を作っていくんじゃないかなと思います。 

永田さん:まさに、おっしゃる通りだと思います。 

家入:そして今回、永田さんが念願だったという7月5日より全国公開されるそうですね。本当におめでとうございます。 

永田さん:そうなんです。こうして映画館で全国の皆さんに観ていただけるようになったのも、CAMPFIREさんでこれだけ支援が集まり話題にしていただけたおかげです。 

今回クラウドファンディングに挑戦したおかげで、夢が雪だるま式に大きくなっているので、この勢いで更に伝説になるような大ヒットを記録できるように頑張ります。 

ただ、熱海には映画館がないので次はクラウドファンディングで熱海に映画館を作る企画もやりたいですね。 

家入:最後に、これからクラウドファンディングに挑戦しようと思っている皆さんにメッセージをいただけますか。 

永田さん:最近よく「温泉シャークさんが成功した秘訣は何ですか?」と聞かれることもあるんですが「プロジェクトに魂を込めろ」といつも真剣に言ってます。 

魂を込めさえすれば何とかなるような気がします。 

「クラウドファンディングをやるからには成功させるし、最後までやり抜くつもりで魂を込めて頑張る」 

ぜひそのつもりで、皆さんにも頑張っていただきたいなと思います。 

家入:まさに魂のこもったプロジェクトだったからこその今回の成功だなと思います。 素晴らしいお話ありがとうございました。

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